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中日と西武のトレード史 田尾安志、平野謙ら1980~90年代は活発も近年は低調

2022 1/31 06:00勝田聡
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トレード相手の小野和幸と平野謙ともに優勝に貢献

昨シーズン5位に終わった中日は新監督に立浪和義氏を迎え、今季巻き返しを図ろうとしている。立浪新監督は1987年ドラフト1位で中日に入団すると、1年目から遊撃手のレギュラーを奪い新人王を受賞。優勝に大きく貢献した。

そんな立浪監督のルーキーイヤーである1988年には、大きな補強があったことでも知られている。中日は平野謙を交換相手とし、西武から小野和幸を獲得したのだ。平野は前年こそ90試合の出場にとどまるも、1985年には打率3割も達成し、1986年には盗塁王にも輝いたバリバリの主力だった。

一方の小野は、2年連続で先発ローテーションに入り100回以上を投げていたものの、2桁勝利の経験はなく、実績では平野に大きく劣っていたと言わざるを得ない。だが33歳の平野に対し小野は26歳と7つ若かった。

その小野が移籍初年度にキャリアハイを大きく更新する18勝(4敗)を挙げ、最多勝、勝率.818で最高勝率のタイトルを獲得した。14個の貯金を作った小野は、ベストナインと最優秀投手も受賞している。しかし日本シリーズでは古巣の西武に打ち込まれ、翌年はわずか1勝。以降も故障に苦しみ目立った成績を残すことはできなかった。中日には6年間の在籍で23勝にとどまったが、優勝に大きく貢献したことは間違いない。

一方の平野は、移籍1年目から全130試合に出場して打率.303と結果を残し、西武でもレギュラーを獲得。小野同様、優勝に貢献している。その後もチームを支え、在籍6年で5度のリーグ優勝、4度の日本一を経験。西武の黄金時代を支えたメンバーのひとりだ。

ちなみに、両選手とも1993年に自由契約となり、1994年からロッテでチームメートとなっていた。

このトレードは両チームにとって実りがあったわけだが、その他に西武と中日の間では、どのような交換トレードが行われてきたのだろうか。振り返ってみたい。

4年連続打率3割の田尾安志をトレードに

中日と西武の主な交換トレード,ⒸSPAIA


1985年にも中日は主力選手を交換要員とし、西武とのトレードを成立させていた。チームの主力・田尾安志を放出し、杉本正と大石友好を獲得したのである。

田尾は4年連続打率3割、3年連続最多安打(当時表彰なし)を記録しており、球団だけではなく球界を代表する選手だった。しかし西武に移籍後は、2年連続で打率2割6分台と田尾にしては物足りない成績に終わり、1987年には阪神へと移籍している。

1983年に12勝を挙げるなど4年連続7勝以上を挙げていた杉本は、移籍初年度こそ5勝にとどまった。しかしそこから2年連続2桁勝利を達成。在籍5年すべてで23試合以上に登板し、合計39勝を挙げた。大石は控え捕手として7年間中日でプレー。現役引退後も複数の球団でコーチを務めている。

中日はチームの主軸である人気選手を放出したが、先発ローテーションと控え捕手を獲得し、戦力として機能させた。結果としては中日に実のあるトレードだったと言えるだろう。この成功例が、前述した平野らのトレードにつながったのかもしれない。

直近の交換トレードは2005年と17年前

両球団間における直近の交換トレードは2005年のことだ。中日から西武へ正津英志と宮越徹が、西武から中日へは玉野宏昌と大友進がそれぞれ移籍した。

このトレードでは西武へ移籍したふたりが結果を残した。移籍前年は一軍登板のなかった正津だが、移籍から4年連続で23試合以上に登板。2007年には26試合で防御率1.59、2008年には32試合で防御率2.35と復活を果たしている。

中日での9年で20試合の登板にとどまっていた宮越も、移籍初年度から21試合に登板。プロ初勝利を含む4勝をマークし、ようやく花が開いた。一方で中日に移籍した大友と玉野は、結果を残すことができなかった。

中日と西武は田尾や平野のトレードを含め、1985年から1997年までの13年間で8件の交換トレードを成立させていた。ただ、それ以降は2005年のこのトレード1件だけしかない。近年は2018年途中に小川龍也が中日から西武へ、2014年途中には武山真吾が西武から中日へそれぞれ金銭トレードで移籍しているが交換トレードはない。

再び中日と西武の両球団間で交換トレードが活発に行われる時代は来るのだろうか。

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