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ヤクルトと近鉄のトレード史 マニエル、吉井理人、西村龍次ら実績のある選手が多数

2022 3/14 11:00勝田聡
フィリーズ監督時代のマニエルとメッツ時代の吉井理人,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

マニエルと永尾はヤクルトと近鉄で3連覇を達成

2021年にヤクルトはオリックスを破り、日本一を達成した。前回の日本一は2001年となるわけだが、そのときの相手は近鉄だった。その近鉄とはかつて実績者が絡む交換トレードを複数行っていた。

ヤクルトと近鉄の主なトレード,ⒸSPAIA


1977年、ヤクルトは益川満育を交換相手とし、近鉄から”伊勢大明神”と称されていた伊勢孝夫を獲得した。伊勢は移籍前年に66試合で打率.204と苦しんでいたが、移籍後は復調。移籍2年目の1978年にはその異名通り、代打打率.283(46打数13安打)、2本塁打、15打点と代打の切り札として優勝に貢献している。

一方の益川は、移籍初年度に16試合に出場した。だが、翌年は出場がなく、自由契約を経て西武に移籍。西武でもわずか5試合の出場にとどまり、現役を引退した。

1979年には外国人選手を含めた大型トレードが成立した。ヤクルトから近鉄へマニエルと永尾泰憲の2人が移籍。このトレードは近鉄が大きな利を得た。

ヤクルト初優勝の立役者だったマニエルは、移籍初年度からいきなり本塁打王を獲得しMVPを受賞。ヤクルトだけでなく近鉄の初優勝にも貢献した。翌1980年も勢いは衰えず本塁打王と打点王に輝いた。しかし同年オフに自由契約となり、1981年にヤクルトに復帰している。

永尾も移籍初年度から120試合に出場し、規定打席未到達ながら打率.310と優勝に貢献した。翌年は打率.233と低迷するも104試合に出場。マニエルとともにトレード移籍によって3年連続で優勝を味わった。

一方、ヤクルトには神部年男、佐藤竹秀、寺田吉孝の3人が加わった。左の先発として期待された神部は移籍初年度こそ6勝するも、以降は3勝、1勝と成績が下降。ヤクルトに所属した3年間で10勝にとどまっている。野手の寺田と佐藤はともに目立った成績を残すことはできなかった。

ドラ1・西村龍次や再生した田畑一也が交換相手に

1983年には、3度の2桁勝利を記録していた井本隆が近鉄からヤクルトへと加わった。交換相手は鈴木康二朗と柳原隆弘のふたり。井本はヤクルトに在籍した2年間で7勝を挙げるも18敗を喫し現役を引退した。

鈴木は王貞治に756号本塁打を浴びたことで有名だが、近鉄に移籍後は抑えとして3年連続2桁セーブを挙げている。1984年、1985年はリーグ最多セーブだった。柳原は主に控えとして活躍している。

1995年には西村龍次(ヤクルト→近鉄)と吉井理人(近鉄→ヤクルト)の交換トレードが成立した。近鉄時代は起用法の定まっていなかった吉井だが、ヤクルトでは先発に定着。3年連続で2桁勝利を挙げ1995年、1997年と2度の優勝に貢献している。

西村は移籍前年こそ6勝にとどまるも、それまでドラフト1位での入団から4年連続で2桁勝利を達成。近鉄での復活が期待されていたが、移籍初年度は5勝9敗と振るわず、以降2年間は未勝利に終わり退団。その後、1998年にダイエーで10勝を挙げ、カムバック賞を受賞している。近鉄時代だけ結果を残せなかった。

1996年には、1987年の新人王である荒井幸雄と小坂勝仁がヤクルトから近鉄へと移籍し、木下文信を獲得。2000年には野村再生工場で復活した田畑一也(ヤクルト→近鉄)と、衣川幸夫、代田建紀(ともに近鉄→ヤクルト)のトレードが行われた。これが両球団における最後のトレードとなった。

主なトレードを振り返ってみると、1970年代から1990年代まで時代を問わず実績のある選手が多く交換相手となっていたことがわかる。全員が移籍後も活躍できたわけではないが、ヤクルトでは伊勢と吉井、近鉄ではマニエルと永尾がともに優勝に貢献。およそ半世紀に渡ってのトレード全体で考えれば、どちらの球団にとっても有意義なものとなったのではないだろうか。

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