巨人のエースとの合同自主トレで復活の兆し
その手応えはホンモノか。阪神タイガースの藤浪晋太郎が節目となる10年目へ動き出した。
「体の状態も良いですし、今日もブルペンで良い感じに投げられたので良いと思います」。1月26日、鳴尾浜球場で2日連続でブルペン入りした右腕は力強くうなずいた。
やりたいこと、課題への取り組みがボールで体現できている確かな感触。離島での“出稽古”の収穫がうかがえた。
年明け早々から空路で向かったのは沖縄・伊良部島。約2週間、ジィアンツのエース・菅野智之と合同自主トレをともにした。
目的は明確。「(学びたいのは)やっぱり再現性。日本で一番と言っていいほど再現性の高い投球スタイル、安定感のある投球スタイル。自分に一番欠けているところ」と弟子入りの意図を明かした。
限られた時間の中で菅野からは軸となる右足の安定性を指摘され、改善に着手。宮古島を離れてからは、東京を拠点に継続してフォーム固めに励んできた。
「エゴ」を貫き挑む厳しい戦い
「投げている映像を自分では見ていないので分からないですけど、受けてもらってるキャッチャーには“変わったな”と言われますし。変わっているんじゃないですかね」。成果を確認するブルペンでは、ノーワインドアップで腕を振り、上々の途中経過を口にした。
ただ、勝負はこれからで、何も始まってはいない。「自分のエゴ」と言い切って挑む先発ローテ争いは熾烈を極める。いや、藤浪にとっては相当に厳しいものになる。
昨年、2桁勝利をマークした投手が3人、西勇輝、ジョー・ガンケルも控える陣容で“空席”は残り1つ。春季キャンプでも早い段階での実戦登板、アピールが求められる。
「実戦あるとなった時は行けるように仕上げている。そんな(キャンプの)後半まで投げないような立場ではないですし」
求められる結果「2軍に落ちてしまう」
沖縄で苦闘するようなら…その先に待つ現実も直視する。
「(結果を出すのは)当然、そうじゃないと2軍に落ちてしまうので」。4月で28歳になり、チーム内でも若手のカテゴリーではなくなった。優先的にチャンスが与えられる立場ではなく、後ろには虎視眈々と狙う後輩たちもいる。
先発、中継ぎの両睨みではなく、慣れ親しんできたまっさらなマウンドだけを見据える勝負のシーズン。思い描くのは、かつて光り輝いていた先発投手としての藤浪晋太郎だ。
「先発で1年通してとなると、2桁(勝利)とイニングはしっかり投げたい。自分の売りはタフネス、スタミナ。160回、170回と投げられるようにしたい」。背番号19の逆襲が、リーグ優勝を狙うチームの上昇、聖地・甲子園の活況を呼び込む。それだけの存在なのだと今一度、示してみせる。
《ライタープロフィール》
チャリコ遠藤 1985年4月9日生まれの36歳。本名は遠藤礼。関西大学から2008年にスポーツニッポン新聞社入社。2010年から阪神タイガース担当で2018年から「チャリコ遠藤」のアカウント名でTwitterで積極的に情報を発信中。フォロワーは2万7000人。趣味は海釣り。
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