2000年代以降だけで10件以上のトレードを敢行
球界の盟主として常に優勝を義務付けられる巨人は、FA補強が多いイメージがあるが、トレードにも積極的な球団だ。一方、球団設立以来リーグ優勝7回、日本一3回を誇る日本ハムも、FAによる流出が多い分を、育成や積極的なトレードでまかなってきた。
両球団によるトレードは、実はかなり多い。日本ハムの前身である東映フライヤーズ時代なども含めると、20件以上行われている。そのうち9件は3人以上が絡むトレードで、両球団間の交流は活発だ。巨人と日本ハムにおける主なトレードを振り返ってみよう。
未完の大器・大田泰示とMVP左腕・吉川光夫の衝撃トレード
近年最も話題となったのは、2016年の大田泰示・公文克彦(巨人→日本ハム)と吉川光夫・石川慎吾(日本ハム→巨人)のトレードだろう。
原辰徳監督(当時2期目)の母校・東海大相模からドラフト1位で入団した大田と、2012年に最優秀防御率、MVP、ベストナインに輝いた吉川のトレードには多くのファンが衝撃を受けた。
巨人では苦しんでいた大田だが、移籍後にその才能が開花。レギュラーに定着し、2019年にはキャリアハイとなる打率.289、20本塁打、77打点をマーク。2020年にはゴールデングラブ賞にも輝いた。
大田とともに日本ハムに移籍した公文も、2018年には57試合で防御率2.17と好投。貴重な中継ぎ左腕としてブルペンを支えている。
一方、巨人へ移籍した石川は、1年目にキャリアハイの99試合に出場。現在も右の代打としてチームの戦力となっている。復活を期した吉川だったが、移籍後も目立った活躍はできなかった。
大きな話題を呼ぶ大型トレードを連発
直近のトレードは、2019年6月の吉川・宇佐見真吾(巨人→日本ハム)と鍵谷陽平・藤岡貴裕(日本ハム→巨人)だ。
出戻りとなった吉川は2年間日本ハムでプレーし、昨オフに西武へ金銭トレードで移籍。巨人では出場機会に恵まれなかった宇佐見真吾だが、2020年には自身最多の80試合に出場した。
鍵谷は2017年に60試合で防御率2.53を記録したが、その後は低迷。しかし2019年シーズン途中に巨人へ移籍すると、見事に復活を果たし、中継ぎ右腕としてチームのリーグ2連覇に大きく貢献した。2度目のトレードとなった藤岡は巨人でも目立った活躍はできず、移籍後2年目のオフに現役を引退した。
2008年に大きな話題となったのが、二岡智宏・林昌範(巨人→日本ハム)とマイケル中村・工藤隆人(日本ハム→巨人)による主力級選手同士のトレードだ。
二岡は2002年に日本シリーズMVP、2003年にはベストナインに輝くなど、巨人の遊撃手として不動の地位を築いていた。しかし、2008年の開幕戦で右ふくらはぎを肉離れして戦線を離脱している間に、高卒2年目の坂本勇人が台頭。出場機会が激減し、このオフに日本ハムへと移籍することに。移籍後もレギュラー定着とはならなかったが、随所で勝負強い打撃を見せ、5年間で328試合に出場した。
中村はNPBよりも先にMLBデビューを飾った、いわゆる「逆輸入」右腕。3年連続28セーブ以上を挙げていたが、同じ年に横浜からクルーンが移籍してきたこともあり、中継ぎでの登板がメインとなった。
林、工藤は主力とはいかずとも、中継ぎ左腕、代走・守備のスペシャリストとして、移籍後もコンスタントに出場。林はその後DeNAへ、工藤はロッテ、中日と渡り歩き、ともに10年以上プロの世界に身を置いた。このトレードでは、4人全員がそれなりの結果を残したと言えるだろう。