「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

落合監督が披露した「ブルペンデー」の先駆け【思い出のオールスター⑧中日編】

2020 5/22 12:20勝田聡
オールスターで「ブルペンデー」を披露した落合監督ⒸYoshihiro KOIKE
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸYoshihiro KOIKE

NPBでも増えつつある戦術

2020年のプロ野球オールスターの中止が決まった。文字通りスター選手が一堂に会する機会がなくなるのは寂しい限りだ。そこで過去のオールスターを振り返ってみたい。

近年、NPBでは「ブルペンデー」と呼ばれる戦術を取るチームが増えた。ブルペンデーとは、従来のように先発投手が長いイニングを投げ、その後の展開によって中継ぎ投手を投入していくのではなく、本来は中継ぎとして起用される投手が先発マウンドに登り、その後、1イニングないし2イニングごとに投手を交代しながら進めていく試合のことだ。MLBでは多く見られていたが、NPBでは見られなかった戦術で、先発の谷間となる試合などで用いられている。

そんなブルペンデーをオールスターゲームで見せてくれたのが、2007年のセ・リーグを率いていた中日の落合博満監督だった。もちろん、当時は「ブルペンデー」という名称が用いられることはなかったことを付け加えておく。

2007年は9人継投で1安打完封勝利

第1戦、先発のマウンドに登ったのは上原浩治(巨人)だった。1999年のルーキーイヤーに20勝をマークし、前年の2006年までに102勝を挙げたリーグを代表する先発投手である。これまでの実績からすれば、先発でもなんらおかしくない。

しかし、この年の上原は開幕から中継ぎへと配置転換されており、オールスターゲームまでの期間で先発登板は「0」。まさに異例の先発抜擢だったのである。

上原は先頭の西岡剛(ロッテ)に内野安打を許したものの、その後を封じ込め無失点投球。オールスターゲームとはいえ、本来であれば3回とは言わなくとも2回は投げきるのが一般的だった。

しかし、落合監督は2回からヤクルトの守護神である高津臣吾を投入。以降、林昌範(巨人)、木塚敦志(横浜)、岩瀬仁紀(中日)、黒田博樹(広島)、久保田智之(阪神)、マーク・クルーン(横浜)、藤川球児(阪神)を1回ずつ小刻みに継投。パ・リーグ打線を完全に封じ込め、完封勝利を収めたのである。

安打を許したのは初回の西岡のみと、まさに圧巻の継投策で勝利をモノにしている。9人の継投はオールスター史上最多でもあった。

黒田を除いて全員が中継ぎを専門職としている投手たちの継投は、まさにブルペンデーそのもの。オールスターゲームということもあり、シーズン中とは意味合いも異なるが、落合監督は紛れもなくブルペンデーを12年前に行っていたのである。

岩瀬で始まり球児が締めた2011年

落合監督がみせたブルペンデーは1度ではない。2007年から4年たった2011年のオールスターゲームでも同様の采配を披露している。

この年の先発は岩瀬仁紀(中日)だった。オープン戦の本拠地開幕戦では、先発を務めることが恒例となっていたがシーズンでは2年目の1試合のみ。そんな岩瀬を先発のマウンドに送り込んだのである。

そこからの継投は2007年を彷彿させた。江尻慎太郎(横浜)、榎田大樹(阪神)、久保裕也(巨人)、山口俊(横浜)、サファテ(広島)、林昌勇(ヤクルト)、浅尾拓也(中日)、藤川球児(阪神)と各チームの勝ちパターンを惜しげもなくつぎ込んだのである。

4年前のように完封リレーとはいかなかったものの、試合は9対4でしっかりとモノにした。岩瀬で始まり藤川で終わる。まさにオールスターゲームならではだろう。

2度に渡りオールスターゲームの大舞台でブルペンデーをやってのけた落合監督。これは、シーズン中のように先発の谷間を埋める目的ではなく、オールスターゲーム直前の試合に先発登板していることも考慮し、負担を軽減するための策でもあった。自軍の選手だけではなく、他球団の選手も預かることを念頭に置いた配慮とも言えるだろう。

理由はどうあれ、現役時代から「オレ流」と呼ばれていた落合監督が、オールスターゲームとは言え、当時は一般的でなかったブルペンデーをやってのけた事実は変わらない。

落合監督が現場を退いた2011年からすでに8年の時が経過した。当時から比べると、フライボール革命や極端な守備シフト、そしてオープナーにブルペンデーと毎年のように新たな理論や戦術が取り入れられ、プロ野球を取り巻く環境は大きく変わっている。

もし、今の時代に落合監督が指揮を執っていたら、どのような采配を振るっていただろうか。今のトレンドではなく、10数年後に流行る未知の「戦術」を取り入れていたのではないだろうか。解説者たちには批判を浴びながらもそんなことは気にせずに。そう思わせてくれるオールスターゲームでの采配だった。

落合氏がもう一度ユニフォームを着ることはあるだろうか。「最後の『オレ流』を見たい」と多くの野球ファンが待ち望んでいる。


《思い出のオールスターシリーズ》
柳田悠岐「伝説の幕開け」初出場でMVP【思い出のオールスター①ソフトバンク編】
期待した山本由伸がまさかの痛打【思い出のオールスター②オリックス編】
遅刻してもMVPをかっさらった松井秀喜【思い出のオールスター③巨人編】
スタンドどよめいたクルーンの160キロ【思い出のオールスター④横浜DeNA編】
栗山巧、万感の思い込もったいぶし銀の一閃【思い出のオールスター⑤西武編】
震災から4カ月…夢と希望の豪華8投手リレー【思い出のオールスター⑥楽天編】
パ・リーグ存続願い新庄剛志がホームスチール【思い出のオールスター⑦日本ハム編】
ZOZOマリンで感動の「WE ARE パ・リーグ」【思い出のオールスター⑨ロッテ編】
実は江夏豊は9連続ではなく15連続奪三振【思い出のオールスター⑩阪神編】
肩で魅せ、バットで魅せた古田敦也【思い出のオールスター⑪ヤクルト編】
カープ暗黒期を支えた二人の「前田」に共通点【思い出のオールスター⑫広島編】