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パ・リーグ存続願い新庄剛志がホームスチール【思い出のオールスター⑦日本ハム編】

2020 5/21 10:50浜田哲男
新庄剛志ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

球宴史上初の単独ホームスチール成功

2020年のプロ野球オールスターの中止が決まった。文字通りスター選手が一堂に会する機会がなくなるのは寂しい限りだ。そこで過去のオールスターを振り返ってみたい。

長い歴史があるオールスターには、印象的な記録や対戦が数多くある。中でも、新庄剛志(日本ハム)によるオールスター史上初の単独ホームスチールは、多くの野球ファンの記憶に残っているだろう。

2004年7月11日、オールスター初開催となった長野オリンピックスタジアム。0-0で迎えた3回、二塁打で出塁した新庄が三進し、打者は小笠原道大(日本ハム)だった。捕手の矢野輝弘(阪神)が投手の福原忍(阪神)に返球する瞬間、新庄は猛然とホームへ突進し、ヘッドスライディング。見事に単独ホームスチールを成功させたのだ。

帰還した新庄は、ホームベース上で腹ばいのままバタバタと手足を動かして無邪気に喜び、セ・パ両軍の選手もファンも大盛り上がり。新庄の野球センス、走力などはもちろん、改めて類い希なスター性を思い知らされた瞬間だった。

この日は、第1打席でも新庄らしいパフォーマンスを披露した。初回に先頭打者で打席に入ると、右手人差し指を左中間方向へ向けてホームラン予告。これにはスタンドも沸き立ったが、その直後にまさかのセーフティバント。失敗に終わったものの、球場全体が爆笑の渦に包まれた。

オールスター前の前半戦最後の試合では、オールスターでのMVP獲得をファンに誓っており、見事その宣言通りにMVPに選出された。全パの王貞治監督(当時ダイエー)は新庄のホームスチールについて、「彼らしいプレー。メジャー仕込みのすごいホームスチールだった」と手放しで称賛。この日はまさに「新庄劇場」だった。

球界再編の流れを意識したパフォーマンス

新庄は自身のホームスチールについて、「盛り上がるためにはあれぐらいはやらないと」「パ・リーグじゃなかったら多分やっていない」と語っている。

オールスター直前の6月に近鉄がオリックスとの合併を発表し、球界再編の流れが加速していた時期。球団経営の黒字化には、まだまだ巨人戦のテレビ放映権料に頼らざるを得なかったため、1リーグ制に向かうのではないかという不安が球界全体やファンの間に渦巻いていた。新庄のパフォーマンスは、そんな球界の危機を明らかに意識したものだった。

阪神時代の指揮官だった野村克也氏は、新庄が引退を決断した際「(新庄の引退は)球界にとっての大損失」と語っている。華やかなプレースタイルはもちろん、派手なパフォーマンスや独特のファッションセンス、時には仰天発言で世間を驚かせた新庄。これほどファンを楽しませることに力を注いだプレーヤーが他にいただろうか。そう考えると、新庄はまぎれもなく真のプロフェッショナルだったと言える。

大谷翔平が球宴史上最速162km

新庄一色に染まったオールスターから10年後。2014年のオールスターで伝説を作ったのが大谷翔平だ。7月19日、甲子園で行われた第2戦で全パの先発としてマウンドに上がると、全セの先頭打者・鳥谷敬に対しての1球目がいきなり161km。2球目にはオールスター史上最速となる162kmをマーク。試合開始早々、球場全体がどよめいた。

大谷はこの試合で23球投じているが、そのうちの12球が160km超え。圧巻のパフォーマンスを見せ、詰めかけたファンを沸かせた。大谷はプロ入り2年目に初の二桁となる11勝をマーク。打者としても10本塁打を放ち、二刀流としてブレイクを果たしている。

スターたちが見せてくれるオールスターならではのスーパープレー。新庄のホームスチールに大谷の160km超連発、どれだけ時が経っても色褪せることはない。時代を越えて語り継がれていくだろう。


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