2014年、初出場の柳田悠岐が走攻守で躍動
2020年のプロ野球オールスターの中止が決まった。文字通りスター選手が一堂に会する機会がなくなるのは寂しい限りだ。そこで過去のオールスターを振り返ってみたい。
今や日本球界を代表する打者としてソフトバンクに君臨する柳田悠岐。初出場となった2014年のオールスターでのセンセーショナルな活躍は、今でも多くのファンの記憶に残っていることだろう。
2013年は打率.295をマークしブレイクの兆しをちらつかせたものの、規定打席未到達だった。だが、打率.317、15本塁打、70打点、33盗塁をマークした2014年、ベストナインに選出され、ゴールデングラブ賞も獲得。甲子園で開催されたオールスター第2戦では、全パの1番中堅でスターティングメンバーに名を連ね、バックスクリーンへ挨拶代わりとなる特大の一発。6打数4安打2打点と打棒を発揮した上、盗塁で快足もアピール。さらには、本塁へ矢のような好返球も披露。走攻守で躍動し、第2戦のMVPに輝いた。
この活躍で強烈に全国の野球ファンへその名をアピールした柳田。彼にとって飛躍の年とも言える2014年、一気にスターダムにのし上がった。そして、2015年にはトリプルスリーも達成している。ちなみに、この年のオールスターには、柳田とほぼ同じタイミングでブレイクした山田哲人(ヤクルト)のほか、大谷翔平(当時日本ハム)や藤浪晋太郎(阪神)らも出場しており、新時代の到来を存分に感じさせてくれた。
2018年の日本シリーズと日米野球ではサヨナラ本塁打を放ち、注目される大舞台で無類の強さを見せてきた。舞台が大きければ大きいほど、何かをやってくれるのではないかという期待を抱かせてくれる希有な打者だ。
今思えば、2014年のオールスターが柳田伝説の始まりだったのかもしれない。再び大きな舞台で活躍する柳田の姿を多くのファンが待っている。
杉内俊哉がオール変化球を予告するも……
今ではすっかり球界随一の常勝軍団となったソフトバンク。その歴史をたどると数々の名選手の名前が挙げられる。中でも、2005年に18勝を挙げて最多勝に輝き、以降も順調に白星を重ね、数多くの三振を奪った杉内俊哉の貢献度は計り知れない。常勝ソフトバンクの礎を築いた選手の1人ともいえる。
そんな杉内がオールスターで見せた印象的なシーンが2009年の第2戦だ。2番手としてマウンドに上がる前、ブルペンで「(投げるのは)全部変化球です。真っ直ぐなんか投げないです」ときっぱり。その言葉通り、最初の打者には全て変化球を投じた。しかし、2人目の打者・宮本慎也(当時ヤクルト)への2球目で直球を投げると、これをジャストミートされ見事にレフトスタンドへ運ばれた。
「(投げないと言っていた)ストレートを投げたでしょ?」という登板後の指摘に対し、「(口約通りに変化球を続けていたので)宮本さんも変化球を狙っているんじゃないかと思って、真っ直ぐでいきました」と飄々と語っていた杉内。マウンド上でのとっさの判断に、彼の勝負師としての顔を垣間見た気がした。
同年、第2回ワールド・ベースボール・クラシックの日本代表にも選ばれ、5試合にリリーフとして登板。6回1/3を無安打無失点に抑える安定感抜群の投球を見せ、日本の連覇に貢献。また、交流戦のMVPに選出されたほか、左腕では史上初の5試合連続2桁奪三振を達成。シーズンを通じて15勝5敗、2年連続で最多奪三振をマークするなど、パ・リーグのみならず、日本球界を代表する投手として大活躍した。
この頃の杉内は、投げていて打たれるイメージが全くないと言っていいほどの凄みと安定感があっただけに、オールスターで見せたお茶目な一面は貴重な姿だった。
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