自ら本塁打も放ちMVPになった江夏
2020年のプロ野球オールスターの中止が決まった。文字通りスター選手が一堂に会する機会がなくなるのは寂しい限りだ。そこで過去のオールスターを振り返ってみたい。
長いオールスターゲームの歴史上で、多くのファンに記憶され、ひときわ輝く記録。それは、江夏豊(阪神)が達成した9連続奪三振だ。
オールスターゲームは1951年のスタート以来、投手は3イニングを超えて登板することができないことになっている(延長は例外)。つまり、1試合に9を超える三振は奪えないし、連続した奪三振も9が限度ということになる。これまで、その記録を達成した投手は江夏以外いない。
そんな大記録の舞台は71年の第1戦、28,160人の観客が詰めかけた西宮球場だった。69年に新人王を獲得し、後にミスター・ロッテと呼ばれることになる有藤通世(ロッテ)を三振に仕留めた江夏は、続く強打者たちも次々と三振に斬ってとった。
9人目の打者だった加藤秀司(阪急)がバックネット方向にフライを打ち上げた時、それに反応した捕手の田淵幸一(阪神)に向かって「追うな!」と叫んだエピソードは今も語り草になっている。結果、加藤も三振に倒れ、江夏は記録を達成。更に阪急のエース・米田哲也からはホームランを打ち、文句なしのMVPとなった。そして、実はこの時すでにすごい記録を積み重ねていた。
前年の70年、第2戦に先発した江夏は、2回裏の一死から代打で登場した有藤を三振に打ち取ると、3回の野村克也(南海)まで5連続三振を奪っている。つまり、71年の9連続奪三振を達成した時には既に、オールスター戦での連続記録は14となっていた。さらに、この年の第3戦も6回から登板し、代打で打席に立った江藤慎一(ロッテ)からも三振を奪った。次打者・野村克也にセカンドゴロを“打たれて”ストップしたが、都合15連続奪三振という驚異的な記録を残していたのだ。
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