小川はセ・リーグトップの与四球率1.30
プロである以上、ファンに「魅せる」という意味においても投手の投げる球のスピードは重要なファクターだ。ただ、より実戦で役立つのはコントロールではないだろうか。極論すれば、160キロを投げるノーコン投手より、130キロでもきっちりコーナーに投げ分けられる投手の方がベンチも使いやすいだろう。
今季前半戦のセ・リーグで9イニングあたり四球をいくつ与えたかを示すBB/9(与四球率)が、規定投球回以上の投手で1位だったのは1.30のヤクルト・小川泰弘。与四球もリーグ最少の12個、対戦打者に占める与四球の割合を示すBB%も3.6%でいずれもトップだ。
プロ1年目の2013年に16勝を挙げて最多勝、最高勝率、新人王に輝いた右腕。近年はやや低迷していたが、昨季はノーヒットノーランを達成するなど5年ぶりの2桁となる10勝を挙げた。
今季も前半戦だけで7勝(3敗)をマーク。足を高く上げるオーバースローのフォームから「和製ライアン」と呼ばれるため剛腕のイメージもあるが、ストレートの平均は143.7キロと飛び抜けて速い訳ではない。むしろ正確なコントロールが小川の真骨頂だ。
奪三振と与四球の割合を示すK/BBも5.17でリーグ1位。三振を奪えて四球は出さないという投手として理想の姿を具現化しているのだ。前半戦3位で折り返したヤクルトが後半戦でさらに上昇するには小川の活躍が欠かせないだろう。
2位から大野雄大、福谷浩司、柳裕也の中日勢が並ぶ
2位は1.49の中日・大野雄大。前半戦は3勝7敗、防御率3.59と沢村賞に輝いた昨季と比較すると不本意だろうが、与四球15、BB%は4.2%と残している数字は優秀だ。ストライクゾーンを9分割したSPAIAのゾーン別データでは、右打者の20.4%を外角低めに投じており被打率.091とほぼ完璧に封じ込んでいる。左打者も外角低めは被打率.154だ。後半戦でチームが浮上するためにも完全復活が待たれる。
3位は同じく中日の福谷浩司で1.71。今季は初の開幕投手を務めたものの、前半戦は4勝9敗、防御率4.80と成績を伸ばせていない。ただ、BB%は4.5%と優秀で制球力の良さは実証されている。チームの後半戦のカギを握る一人と言えるだろう。
4位も中日の柳裕也で1.84。リーグ1位のチーム防御率3.25と投手力の高いチームらしく、2~4位に中日勢が並んだ。中でも柳は前半戦7勝5敗、防御率2.42の好成績。BB%も5.3%とコントロールが良いだけでなく、奪三振率はリーグトップの9.36をマークしている。K/BBは小川に次ぐ5.09で、小川と同じく三振を奪えて四球は少ない投手の一人だ。
5位は阪神の青柳晃洋で2.36。サイドスローからシュートとスライダーを左右に投げ分け、前半戦は8勝2敗、リーグ1位の防御率1.79の好成績を残して侍ジャパンにも選出された。BB%は6.5%を記録している。ただ、K/BBは2.64と低く、まさに打たせて取る投手の典型だ。