300盗塁をマークした「チコ」バルボン
日本プロ野球界では世界各国の選手がプレーしてきた。その中でキューバ出身のベストプレーヤーは誰だろうか。まずは主な野手を見ていこう。
今でこそキューバ出身選手は珍しくないが、ロベルト・バルボンが阪急に入団した1955年は通訳さえおらず、バルボンは西宮球場のあった阪急電鉄西宮北口駅で駅員と会話しながら日本語を覚えたという逸話が残る。日常生活での苦労は想像に難くないが、野球に関しては来日1年目から実力を発揮した。
当時は最多安打のタイトルはなかったものの、パ・リーグ最多の163安打を放って打率.280、5本塁打、48打点、49盗塁をマーク。1958年から38、38、32盗塁で3年連続盗塁王に輝くなど、俊足巧打の二塁手として活躍した。近鉄に移籍した1965年に引退するまで、通算11年間で1353試合に出場し、1123安打、33本塁打、260打点、308盗塁をマークした。
スペイン語で「坊や」を意味する「チコ」の愛称で親しまれ、引退後も日本に残って通訳を務めるなど、阪急、オリックスで球団職員として活躍している。
西武黄金時代を牽引したデストラーデ
西武黄金期に秋山幸二、清原和博とともに主軸として活躍したのがオレステス・デストラーデ。キューバで生まれたが、5歳の時にアメリカに亡命したという。ヤンキースやパイレーツでプレー後、1989年6月に西武入りすると、シーズン終了までに83試合出場で32本塁打を放った。
1990年は42本、106打点、翌1991年は39本、92打点で2年連続二冠王。さらに1992年も41本塁打で3年連続ホームランキングに輝いた。1993年から2年間はメジャーに復帰し、マーリンズでプレー。1995年に再び西武のユニフォームに袖を通したが、シーズン途中で退団した。NPB計5シーズンで160本塁打、389打点をマーク。西武黄金期を代表するスイッチヒッターだった。
オマール・リナレスは「キューバの至宝」と呼ばれたスラッガー。1992年バルセロナ、1996年アトランタ五輪連覇に貢献するなど、長くキューバ代表の主軸を務めた。中日入団は2002年6月。大きな話題となったが、すでにピークを過ぎていたため、計3シーズンでNPB通算11本塁打、61打点に終わった。
ミチェル・アブレイユは2013年に日本ハム入団。1年目にいきなり31本塁打を放ってタイトルを獲得したが、2年目シーズン中に故障のため退団した。
二冠王・デスパイネに首位打者・ビシエド
2014年の来日から現在まで長く活躍しているのがアルフレド・デスパイネだ。ロッテ時代は12本、18本、24本と順調に本塁打数を伸ばし、2017年にソフトバンク移籍すると、35本塁打、103打点で二冠王に輝いた。2019年までNPB計6シーズンで通算154本塁打、452打点をマークしている。
レスリー・アンダーソンは2014年から巨人でプレーした左打者だ。1年目は規定打席には未達ながら打率.319、15本塁打、50打点をマーク。しかし、3年目の2016年にケガのため、わずか3試合出場に終わり退団した。
ホアン・ミランダは2013年の秋季キャンプでテストに合格し、日本ハム入団。2014年は116試合に出場したが、打率.227、14本塁打、57打点にとどまり、退団となった。
2018年に首位打者に輝いた中日のダヤン・ビシエドもキューバ出身だ。ホワイトソックス時代の2012年には25本塁打、78打点をマークするなどメジャーでの実績を評価され、2016年から中日に加入。1年目は打率.274、22本塁打、2年目は.250、18本だったが、3年目に覚醒し、打率.348で首位打者、178安打で最多安打のタイトルを獲得した。NPB計4年で通算打率.303、543安打、84本塁打、309打点をマークしている。
日本シリーズMVPのグラシアル
アレックス・ゲレーロは2017年に中日入団。6試合連続本塁打をマークするなど、35本塁打でタイトルに輝いた。オフの契約交渉で折り合わず、翌2018年に巨人に移籍。15本塁打、40打点と物足りない成績に終わり、2019年は21本塁打を放ったものの打率.237と好不調の波が激しいこともあって退団した。
ソフトバンクのジュリスベル・グラシアルは、2019年の日本シリーズで3本塁打を放ってMVPに輝いたことをご記憶の方も多いだろう。1年目の2018年は54試合出場で9本塁打、30打点だったが、2019年は打率.319、28本塁打、68打点の好成績をマーク。デスパイネとともにソフトバンク打線の中核を担っている。
レオネス・マーティンは2019年シーズン中にインディアンスをFAとなり、7月にロッテ入団。52試合の出場で14本塁打を放ち、長打力を証明した。
デストラーデは2019年に当てはめてもトップクラス
主な選手の紹介だけでも、そうそうたるメンバーが並び、キューバ野球のレベルの高さがうかがい知れる。では、ベストプレーヤーは誰だろう。NPBでの実績からデストラーデ、アブレイユ、デスパイネ、ビシエド、ゲレーロ、グラシアルの6人に絞って比較したい。
NPB通算打率はグラシアルが.310でトップだが、出塁率と長打率を足したOPS、長打力を示すIsoP、本塁打を打つまでに要する打席数を示すAB/HR、選球眼を示すIsoDの4項目で、いずれもデストラーデがトップに立っている。
仮に2019年の12球団成績に当てはめてみると、デストラーデのOPS.951は6位(2019年1位は鈴木誠也の1.018)、IsoP.308は1位(2019年1位は山田哲人の.288)、AB/HR11.35は1位(2019年1位はソトの12.00)、IsoD.119は4位(2019年1位はブラッシュの.136)と2項目でトップなのだ。
約11打席に1発のホームランを放つパワーだけでなく、選球眼の良さも証明されている。実際、1991年は100四球、1992年は95四球とリーグ最多四球を選んでいる。
以上のデータからキューバ出身のベストプレーヤーにはデストラーデを推す。現役のNPBキューバ戦士や今後来日する選手が、デストラーデ以上の活躍をする日を楽しみに待ちたい。
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