鈴木は先発でもリリーバーでも面白い存在
2年連続リーグ2位に終わったロッテは、即戦力投手として期待されたドラフト1位の鈴木昭汰(法政大学)と4位の河村説人(星槎道都大)、即戦力野手として期待された3位の小川龍成(國學院大學)の大卒ルーキー3人を評価対象とした。
投手は「球威」「制球力」「奪三振」「総合」の4項目を5段階で評価。球威はリーグの平均球速、制球力は同BB%(対戦打者に占める与四球の割合)、奪三振は同K%(対戦打者に占める奪三振の割合)、総合は同FIP(投手の責任である被本塁打、与四死球数、奪三振数のみで投手の能力を評価した指標)から算出している。
鈴木は23試合に登板して1勝4敗1ホールド、防御率4.08。シーズン序盤は好投しながらも勝ち星に恵まれないことも多く寂しい数字に終わったが、力のある直球を軸に、キレのあるスライダーで次々に打者を打ち取るという頼もしいシーンも度々見られた。
直球は平均145.1kmで球威は「3」、BB%が8.2で制球力が「3」と平均的だが、K%が22.3%(パ・リーグ平均は19.9%)と高く「4」となっている。ここぞという場面で三振がとれることは魅力のひとつだが、球威や制球の面でまだまだ改善の余地がある。最重要課題はシーズンを投げ抜く体力だろう。
今季シーズン序盤は先発を任され、途中からリリーバーとしての登板が多くなるなど役割を模索されていた感じだが、どちらを任されるにしてもチームに左腕が少ないので貴重な存在であることは確か。体力がつけば先発も十分に任せられるだろう。奪三振能力が優れていることを考えれば、リリーバーとしてポジションを競わせても面白い。
抜群の安定感で信頼を得た河村
シーズン序盤はリリーバーとして登板を重ねていたものの、途中から先発に抜擢されて見事な活躍を見せたのが河村説人。リーグ優勝を争い、ひとつも落とせないプレッシャーのかかる試合で先発マウンドに度々上がり、安定感抜群の投球を続けて首脳陣の信頼をつかんだ。
192cmの長身から投げ下ろす直球は平均142.7kmと速くはないが、角度があるため相手打者がとらえきれず、詰まらせるシーンが多く見られた。K%は15.7%で三振を奪っていくタイプではないが、フォークとカットボールを多投しながら時折カーブをはさみ、緩急をつけて打者のタイミングを外した。
飛びぬけて球が速かったり、高い奪三振率を誇る決め球があったりするわけではないが、マウンド度胸とピンチの際の落ち着きぶりが際立つ投手。純粋に投手の能力を評価する指標のFIPは3.67(リーグ平均は3.49)をマークしているが、このことからも総合力に優れているタイプと言える。
ルーキーイヤーの経験を来季へ活かせるか
オープン戦で5盗塁をマークするなど、シーズン前は走塁と守備でアピールしていた小川龍成。オープン戦で足を故障して離脱したことで出遅れ、後半に1軍に帯同するも打席にたったのはわずか6度と1年目は不本意なシーズンに終わった。
野手については、リーグの平均ISO(長打力を示す指標)から算定した「パワー」、同BB%(打席数に占める四球の割合)から算定した「選球眼」、同spd(走力を示す指標)から算定した「走力」、同wRC(特定の打者が生み出した得点を示す指標)から算定した「貢献度」の4項目をそれぞれ5段階評価しているが、そもそも小川は打席数が少なすぎるため、まともな評価ができない。
ただ、守備と走力に非凡なものがあり、ケースバイケースで首脳陣にとって使いやすい選手であることは間違いない。同じ遊撃のレギュラー候補にはアデイニー・エチェバリアや藤岡裕大らがいるが、少ないチャンスを活かして打撃面も含めたアピールが必要だろう。足を活かせる打撃の習得が鍵を握りそうだ。
鈴木と河村は先発とリリーバーの両方を経験し、小川は出場試合こそ少ないものの、シーズン終盤に優勝争いを繰り広げるチームの一員としてその雰囲気を体感した。それぞれがルーキーイヤーで経験したことを踏み台にした成長が、チームの底上げにつながる。
ロッテは左腕が手薄で、先発投手陣や内野陣の層も薄い。鈴木、河村、小川は、そうしたチーム事情をポジション的にフォローアップしていける存在なのだから、来季はぜひ一皮むけた姿を見せてほしい。
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