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【スポーツ×お金】第4回 スポーツファイナンスの第1人者に聞くスポーツとお金について②

2018 3/9 18:00藤本倫史
インタビュー,永田靖,SPAIA
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―私もこのCRM(データで顧客を分析するシステム)に関して大学院時代から研究していますが、現状、積極的に活用する球団は少ないと思っているのですが、いかがでしょうか。

そうですね。プロ野球はパリーグの球団が積極的に活用している球団がありますが、全球団に浸透していません。JリーグやBリーグには、システムは導入されていますが、上手く稼働しているかと言えば、懐疑的な部分があります。

アメリカでは、このCRMを全球団導入して、顧客情報を集め、分析し、顧客満足度を高めています。

ただ、ここにも人材の問題が出てきます。せっかくCRMを導入しても、使わなければ宝の持ち腐れです。ここでもやはり、わかる人=専門家を雇わなければなりません。私があるMLS(メジャーリーグサッカー)の球団でインタビューした時に、CRMの担当部署に6人配置していると仰っていました。しかも、どの方もCRMに関しての研究を行い、修士の学位を取っています。アメリカでは、そのような優秀な人材をインターンとして、採用し、力を見極めた上で採用を行っています。だからこそ、若くて優秀な人材を育てることができます。

ただ、日本ではこの余裕がありません。では、全くやらないとなるとサービス向上ができません。私はこの問題に対して、コンビニ方式を導入したらどうかと考えます。コンビニは1つの地域に各店舗を回るスーパーバイザーがいます。彼らは売り上げや顧客情報のデータを分析して、各店舗の経営アドバイスを行います。リーグもしくは球団も各地域で、このような専門家を雇い複数の球団を回ってもらえば、コストを下げることができますし、データを有効活用できます。

―日本では、工夫しながら人材育成や顧客分析などを行わなければなりません。クラブも非常に厳しい状況ですね。

やはりJリーグやBリーグは現状のクラブライセンス制度のままだと短期的な経営しかできず苦しい状況が続くと思います。例えば、単年度だけでライセンスをみると、その年は平日開催や天候の問題で観客動員数が減少したなどの要因が考えられます。それで経営が悪いかと言えば必ずしもそうとは言えない。もう少し経営を見るスパンを長くしていくことも必要だと思います。

また、資金を地元の銀行などから借り入れするならばOKだが、リーグから借り入れるのはNGになります。同じお金を借りることですが、リーグの意向としては一般的な金融機関から審査を受けることで、事業計画をしっかりと計画することなどを期待しているのだと思います。

ただ、やろうと思えばリーグがお金を回すこともできますし、クラブ経営を安定させるためには、どのような基準でどのような方向性に向かわせるのかを一緒に考えないといけないと思います。だからこそ、単年度で区切るのではなく、短期、中期、長期の戦略を見ることがいいのではないでしょうか。

―日本独自の経営を創造しないといけないのでしょうか?

全くそうだと思います。海外にも色々な成功事例があります。ただ、それを全くそのまま入れても日本には馴染まないところがあると思います。特に地方へ行けば行くほど、独自のビジネス文化があります。だからこそ、革新的なアイディアも持ちながら、日本の文化も分かるような、日本の経営者が新しいスポーツビジネスの形を創造してほしいと思います。

ただ、そのような経営者たちがスポーツに参入しようというような土台作りができていません。今、現場で働いている方々には酷な話ですが、次の試合日だけのことを考えるのではなく、もう少し長いスパンで考える。これは各クラブではできないので、リーグ機構が主導的に行っていく、特にJリーグやBリーグは行えるはずだと思います。

インタビュー,永田靖,SPAIA

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―プロ野球はリーグビジネスではないので、球団単体で経営しなければなりません。そのような現状から見ると、福岡ソフトバンクホークスはビッククラブとして独自の経営を行っています。永田先生のゼミ生でもあった柳田選手も大型契約を結びましたね。

柳田君は想像を超えるスター選手になりましたね。笑

でも、そのような子どもたちが憧れる選手にふさわしい年俸と環境を整えているのが、ホークスだと思います。収入規模などを総合して、MLBの20位くらいの球団と同等ではないでしょうか。これはしっかりと自主自立して経営を行える能力が球団にあるからです。スタジアムを事例に見ても、赤字の原因であった福岡ドームを870億円で買い取り、しっかりとスタジアムビジネスを行っています。これは親会社のお金でもあったわけですが、使うところには使い、絞るところは絞るという経営の基本をしっかりと行っています。

スポーツビジネスの観点からも競技力を高め、スタジアムを非日常空間として演出をし、黒字を出し、好循環を描いています。また、ホークスの経営スタンスもしっかりとしています。福岡だけでなく、九州、そしてグローバルにどう展開をしていこうかという点を明確に打ち出しています。選手の年俸もそうですよね。指標がしっかりとしているから、選手のモチベーションが下がりません。

子どもたちにも憧れの対象であり続けるのならば、マネジメントをしっかりとしなければなりません。

―現在、日本のスポーツ庁では2025年までに産業市場規模を5.5兆円から15兆円増やそうとしています。私もマネジメントの視点がより重要になってくると思いますが、これは達成できるのでしょうか?

国として本腰を入れるかですね。スポーツ庁は文部科学省の傘下にあります。これが経済産業省であれば、産業化は非常に本腰を入れることがわかりますが、そうではありません。教育分野のままです。

これに加えて、スポーツ団体は地域資源の認定を受けていくことも新たな形として必要だと思います。例えば、地元企業がスポーツ球団に対して、スポンサーをする場合に税制を優遇するなどの施策があれば、よりスポーツが産業化する後押しになります。税制特区などを作り、法人税の控除などを行えば、それこそスポーツ産業地域ができると思います。また、ファンや市民もふるさと納税みたいな形で、個人スポンサーをし、所得控除が受けられるような仕組みを国や地方自治体も考えていかないといけないと思います。

もちろん、球団も私企業ですから、自助努力をしないといけないのは当たり前ですが、行政が後押しできるような形で支援をしていくことも必要ではないでしょうか。そうすれば、スポーツに対してお金が回り、産業市場の拡大を後押しできると思います。

最初にもお話ししましたが、まだまだスポーツビジネスの構造は確立されていません。しかし、伸び白はあると思います。それを伸ばすためには、私としては、人材育成、情報の透明化、付加価値の提供、CRMがキーワードになってくると考えています。

《インタビュイープロフィール》 永田 靖(ながた・やすし) 広島経済大学 経済学部スポーツ経営学科 教授。広島市生まれ。大学卒業後,現:(株)ソフトバンクテレコムにて経理システムの開発、国際収支決済に従事。退社後大学院へ進学し、修士(経済学)、修士(国際経営学・MBA)取得後、(株)富士通総研にて自治体等の業務改革を担当。広島に戻り、税理士登録。さらに、大学院へ戻り、博士(マネジメント)を取得。専門は経営戦略、財務および会計、スポーツファイナンス。

《インタビュアープロフィール》 藤本 倫史(ふじもと・のりふみ) 福山大学 経済学部 経済学科 助教。広島国際学院大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了。大学院修了後、スポーツマネジメント会社を経て、プランナーとして独立。2013年にNPO法人スポーツコミュニティ広島を設立。現在はプロスポーツクラブの経営やスポーツとまちづくりについて研究を行う。著書として『我らがカープは優勝できる!?』(南々社)など。

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