通算300盗塁の糸井
阪神の糸井嘉男外野手(41)が今季限りの引退を表明した。近畿大から投手としてドラフト1位でプロ入りし、野手転向してから素質開花。類まれな身体能力で「超人」と呼ばれ、通算1754安打、171本塁打、300盗塁をマークした。
オリックス時代の2016年、53盗塁でタイトルを獲得。35歳2カ月という史上最年長盗塁王の誕生だった(2021年にロッテ荻野貴司が36歳で記録更新)。それまでは1982年の阪急・福本豊、1993年の近鉄・大石大二郎が持つ34歳11カ月が最年長だった。
今季の公式プロフィールでは身長188センチ、体重99キロ。大柄の糸井が30代半ばで、それまでの自己最高だった33盗塁をはるかに超える53盗塁を決めたのは驚異的だ。ゴールデングラブも7度受賞するなど、走攻守3拍子揃った、紛れもないプロアスリートだった。
30代で減っていく盗塁数
パワーでカバーできる本塁打数や技術で補える安打数などに比べると、一般的に盗塁数は加齢とともに減少する。「3S」と言われるスピード、スタート、スライディングの中でも、スピードは特に若い選手の武器であり、歴代の盗塁王も20代がほとんどだ。30代に入ると盗塁数が減り始め、30代半ばから激減していく選手は多い。
34歳11カ月にして31盗塁でタイトルを獲得した大石大二郎が、翌年には11盗塁。34歳で34盗塁を決めて盗塁王になった柴田勲も35歳シーズンでは10盗塁と激減した。
トリプルスリーを3度達成したヤクルト・山田哲人は現在30歳だが、ここ3年は盗塁数が大幅に減少。故障や勤続疲労などもあるとはいえ、盗塁王のタイトルホルダーでも年齢の壁を超えることは難しいのだ。
38歳シーズンに40盗塁を記録したイチロー
日米で盗塁王のタイトルを獲得したイチローは、日本で199盗塁をマークしており、成功率は85.78%だった。メジャー移籍後、35歳のシーズンだった2008年に43盗塁をマーク。翌2009年は26盗塁と減少したが、37歳となる2010年に42盗塁、38歳となる2011年に40盗塁を決めた。
事もなげに成功するため、当時は安打数に比べると盗塁数が話題になることは少なかったが、今考えると凄まじい数字だ。
40代になってからはさすがに減少したが、42歳のシーズンには過去37人しかいないメジャー通算500盗塁を達成。日米通算では700盗塁に到達し、年齢の壁を大きく打ち破る活躍を続けた。
最年少盗塁王は西岡剛と吉田義男
20代が多い盗塁王の中でも、2リーグ制になってから最も若くしてタイトルを獲得したのは、ともに21歳で最年少タイ記録となっている当時ロッテの西岡剛と当時阪神の吉田義男だ。
西岡は高卒3年目の2005年に41盗塁、吉田は立命館大を中退して入団2年目の1954年に51盗塁を決め、タイトルを獲得。その後も西岡は2006年、吉田は1956年に2度目の盗塁王に輝いている。
ただ走るだけではなく、投手の動きを見て瞬時の判断でスタートを切り、スライディング技術も求められる。盗塁には高い身体能力と技術、研究熱心さなど全てが必要とされるのだ。
30代半ばでタイトルを獲得するには、自らを律して節制し、肉体と精神を鍛え続けないと不可能だ。あっけらかんとした糸井は自らの実績について語ることは少ないが、その凄さを忘れてはならない。
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