開幕間近のJリーグ展望
2022年も早1月が終わり、移籍市場もひと段落。各チームがスカッドをまとめ終わり、2021年のJ1王者と天皇杯王者が激突する2月12日のFUJI FILM SUPER CUPでいよいよ2022シーズンのJリーグが開幕する。
昨シーズンのJ1はコロナ禍特例の20チーム編成で4チーム降格という苛烈な一年だった。1/5の確率で降格する苦境を乗り越えたチームがどこも弱いわけはない。今回は今季のJ1で優勝争いを演じたり、台風の目になったりしそうなチームを4つ厳選する。
2022年も早1月が終わり、移籍市場もひと段落。各チームがスカッドをまとめ終わり、2021年のJ1王者と天皇杯王者が激突する2月12日のFUJI FILM SUPER CUPでいよいよ2022シーズンのJリーグが開幕する。
昨シーズンのJ1はコロナ禍特例の20チーム編成で4チーム降格という苛烈な一年だった。1/5の確率で降格する苦境を乗り越えたチームがどこも弱いわけはない。今回は今季のJ1で優勝争いを演じたり、台風の目になったりしそうなチームを4つ厳選する。
王座防衛に挑む川崎フロンターレが今年もJ1をリードしそうだ。昨シーズン夏に田中碧と三笘薫という日本代表級の2人を引き抜かれるも、要所で勝負強さを見せつけ2位横浜F・マリノスに13の勝ち点差をつけて圧巻のリーグ制覇。38試合で2度しか負けなかった。
鮮やかな攻撃スタイルと23ゴールで得点王となったレアンドロ・ダミアンに目が行きがちだが、フロンターレ最大の強みは守備戦術だ。
鬼木監督が仕込んだ誘導して奪いきるプレッシングの強度と練度は非常に高く、昨シーズンは被シュートと被シュート成功率、被チャンス構築率はJ1で2番目に少なく抑え、わずか28失点。ピッチに立つ全員が守備に献身し、サブメンバーがギラギラしていて競争原理が生まれている。弱い理由がないチームだ。
冬の移籍で旗手怜央や長谷川竜也を失ったが、その他の主力の残留に成功し、新たにチャナティップを獲得して前線を強化。今年も彼らの王座を誰が奪うのか、という争いになるだろう。
打倒フロンターレの最有力。昨シーズン、一時はフロンターレにあと1勝で追いつけるという局面までいったが、要所で勝ちきれず引き離されてしまった。
しかし守備がかなり整理されたことで2020シーズンの失速の原因となった無茶なプレッシングが減り、シーズン途中でのポステコグルー監督引き抜きという異例の事態を乗り越える逞しさを見せた。
攻撃回数、チャンス構築率など攻撃のデータは軒並みJ1で1位。ただ懸念としては昨シーズンのチーム得点王1、2位の前田大然とオナイウ阿道が2人ともいなくなってしまったことだ。
ここを埋めるべくベガルタ仙台から獲得した西村拓真らが活躍するのか、それとも既存メンバーで新たなスカッドと戦術を立て直すのか、大きな注目ポイントだ。
J2アルビレックス新潟で魅惑の攻撃サッカーを見せていたアルベル監督を招聘したFC東京の挑戦が面白そうだ。2021年のアルビレックス新潟は中盤以降に失速し、6位でシーズンを終えてしまったが、対策される前だった序盤戦は圧倒的だった。
アルベル監督は基本布陣4-2-3-1で選手の配置と適材適所を重視したポゼッション・スタイルを志向。ポイントはサイドバックとサイドハーフのポジショニングだった。
特にサイドバックは中を走ったり外を周ったり、飛び出したり、残ってビルドアップに参加したりと役割が多様で、現有戦力が戦術に適応できるかどうかが問われる。もしかしたら大胆なコンバートも行われるかもしれない。
アルビレックス新潟では被チャンス構築率4位という相手のチャンスの少なさに似合わない被シュート成功率10.2%で17位(下から6番目)という打たれ弱さがネックになっていた。
しかし、FC東京には日本代表クラスの守備陣がすでに在籍しているし、新たにヤクブ・スウォビィクというビッグセーバーを獲得できた。打たれ弱さをクリアできた場合は一気に躍進する爆発力を秘めたチームになるだろう。
ただし、アルベル監督はポゼッションへのこだわりが非常に高く、選手とのコミュニケーションが非常に大切なタイプ。その点で現在在籍している選手から拒否反応がでるとチームとして成立しなくなる恐れもわずかだがある。むしろアルビレックス新潟の時よりもやりづらくなる可能性もあるため、躍進のカギは戦術よりむしろチームマネジメントだ。
日本屈指のビッグクラブが台風の目というのも失礼かもしれないが、浦和レッズは間違いなく今シーズン大きな爪痕を残す。
優秀なスポーツダイレクターによって進められる「三か年計画」の最終年。ベテランや中心選手が退団する以上に、ことごとく成功する補強。J2から知念哲矢、松崎快、馬渡和彰ら良選手を的確に引き抜く手腕は見事の一言だが、特に徳島ヴォルティスから念願の岩尾憲を獲得したのが大きいだろう。
岩尾憲は4月に34歳となるベテランの司令塔だ。彼とリカルド・ロドリゲス監督は徳島ヴォルティスで長く共に戦い、2020シーズンにはJ2を制覇。リカルド監督が徳島ヴォルティスを変えたのは間違いないが、むしろサポーターの間からは「リカルドに徳島を変えさせたのは岩尾憲だ」という声も絶えない。
昨シーズンJ1でのパスポイントが全選手中3位という圧倒的な視野の広さ、技術の高さとキック精度、戦術理解力。それでいて奪取ポイントでは全選手中8位と、走力とボール奪取能力も備えている。攻撃時と守備時でポジションを変える可変システムを徳島で採用していたリカルド監督の必要とする「ピッチ内の指揮官」という役割を最も理解する存在なのだ。
大きなケガやコンディション不良などなければ多大な影響力を発揮することは確実だ。J1制覇を掲げたクラブがアジアチャンピオンズリーグと並行して戦っていく中でカギとなるだろう。
フロンターレの王座を巡るゲームの中で一番の焦点は、他のどのチームもフロンターレから戦力を削ることに成功していない点だ。
フロンターレを倒すために最も効果的な戦術・戦略は、言うまでもなく彼らの戦力を移籍などで奪うことであり、その点においてはフロンターレのクラブとしての強さを感じざるを得ないし、他チームが今年の夏の移籍期間でどのように動くのか、はたまた再びヨーロッパから引き抜きが起こり、フロンターレが勝手に弱体化するのか。
コロナ禍で国全体が疲弊する中、わたしたちに夢と感動と力を与えてくれるJリーグがもうすぐ開幕。今年も目が離せない。
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