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逆襲期すJ1セレッソ大阪の補強から垣間見えるフロントの思惑

2022 1/19 06:00SPAIA編集部
セレッソ大阪の新入団会見,ⒸSPAIA
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最低限の目標はリーグ3位

J1のセレッソ大阪が14日に始動した。体調不良の日本代表DF瀬古歩夢(その後、代表合宿を辞退)や新型コロナによって入国が認められていないMFジェアン・パトリッキらは不在だったが、約300人のサポーターの前で1時間30分の公開練習を行った。

その後は新入団会見。梶野智チーム統括部長、小菊昭雄監督らも登壇し、今期の目標や補強の狙いを語った。

梶野部長は「各ポジションに同じレベルの選手を揃えた。どの選手が出ても同じレベルの戦いができるようになる。J1の実績がある山中(亮輔←浦和)、鈴木(徳真←徳島)を始め、J2で活躍してセレッソに入ることでより成長できる選手を揃えた。クラブのスタイルに合う選手だと思っています」と口にした。オファーを出した選手は、ほぼ合意に至ったという。

小菊監督は勝ち点60、チーム総得点55、同失点数は34以下に設定。最低限の目標をACL出場圏内の3位とし、カップ戦を含めたタイトルに意気込んだ。そして「ボール保持して前進する。ファイナルゾーンでの崩し、個人でのクオリティーです」と改善点を明かした。

昨季リーグ戦は13勝9分け16敗の12位。チーム総得点は47で、総失点は55だった。天皇杯はベスト4、ルヴァン杯は準優勝。昨年オフにはMF坂元達裕がオースデンテ(ベルギー1部)へ移籍し、FW大久保嘉人は現役引退した。その中で補強ポイントに挙げていたのは両サイドバック、坂元の移籍に備えた後釜、そして軸になるストライカーだった。

そのほぼ満点という補強の中で見えてくるのはサイド攻撃の強化、ゴール前での強さだろう。

サイドアタッカーの強化

DF松田陸は昨季リーグ34試合出場。DF丸橋裕介も同33試合出場している。ともにベテランの域に差し掛かる中、彼らを脅かす存在は必要で、山中亮輔とDF毎熊晟矢(←J2長崎)に白羽の矢が立った。

その山中は昨季J1リーグで107回のクロス本数を数える。これはセレッソ大阪でいえば、松田陸(154回)に次ぐ数字で、丸橋(92回)よりも多い。また右サイドを主戦場とする毎熊もJ2リーグ全体28位となる85本のクロス。さらに毎熊はJ2リーグで2位タイとなる10アシストを記録しているのも見逃せない。

坂元と同じJ2山形から加入したMF中原輝もサイドアタッカーとして非凡な数字を残している。J2リーグ7位タイの7アシストをマークしているが、その中でもクロスの本数は同10位の128本。リーグカテゴリーが違うため一概には表せないが、坂元の68本と比べても2倍近い数のクロスを供給しているのが窺える。

セレッソ大阪も大久保嘉人が「サイド攻撃が多い」と口にしていたように、サイドを軸に攻撃していた。だが、まだ来日できていないパトリッキ(梶野部長によるとサイドアタッカー)を含めて今季はよりサイドアタッカーに重きを置いた編成になっている。

ストライカーの強化

そしてクロスに合わせるターゲットとして2年ぶりの古巣復帰となったFWブルーノ・メンデス(←福岡)が加入した。

ブルーノ・メンデスはわずか19試合、計1223分(90分に換算すると13試合強)の出場に留まっているが、エアバトルではJ1リーグ50位の66回勝利。セレッソ大阪の昨季最多エアバトラーは瀬古の67回で、攻撃陣に至ってはチーム得点王の加藤陸次樹(1メートル78)の45回が最多である。

1メートル84のストライカーには良質のクロスをネットに叩きつける役割が求められているといえよう。

中盤のフィルター役

藤田直之(→鳥栖)が抜けた中盤の位置にはMF鈴木徳真が加わった。ブロック数(相手のシュートやパスなどを身体に当てて受動的に防いだプレー)は全体148位の37回で平凡だが、タックル数(相手選手がコントロールしているボールを、身体あるいはボールへの接触によって足下から離すプレー)は全体56位の59回。セレッソ大阪の他メンバーと比べてもMF奥埜博亮や坂元、MF原川力に次ぐ数値だ。

そして秀逸なのがインタセプト数(相手のパスに対して能動的に動いてそのパスをカットし、自ら保持もしくは味方につなげたプレー)で全体19位タイの10回を計測。奧埜と並んでおり、失点数を減らすためにも奧埜に次ぐ守備力を持っている鈴木には中盤での素速い潰しやボール回収が期待される。

守備陣、特に補強がなかったセンターバックへの懸念は残る。無論、攻撃は最大の防御ともいう。目指すポゼッションサッカーができれば守備陣への負担は軽減されるだけに、満点に近いという攻撃陣が想定通りに機能すれば、おのずと失点数も減っていくだろう。

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