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槙野智章はJ1神戸に「化学反応」を起こすか?データから分析

2022 1/22 11:00SPAIA編集部
ヴィッセル神戸に加入した槙野智章(中央),ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

浦和から移籍、フェルマーレンの後釜に

初のアジア制覇を目指すヴィッセル神戸は16日に新体制会見を行った。

昨季からの新戦力はDF槙野智章(34=浦和レッズ)、MF扇原貴宏(30=横浜Fマリノス)、MF汰木康也(26=浦和レッズ)、GK坪井湧也(22=中央大)、MF尾崎優成(18=ヴィッセル神戸U-18)の5人。

最も注目を集めるのは槙野だろう。19年夏から2年半在籍した元ベルギー代表DFトーマス・フェルマーレン(36)が昨季限りで退団。日本代表として18年ロシアW杯出場など国際Aマッチ通算38試合出場、クラブレベルでは浦和時代の17年にアジア・チャンピオンズリーグ制覇した槙野にはフェルマーレンに代わる活躍が求められる。

自身も「アジアでの戦いはクラブでも代表でもやってきた。培ってきたものを還元したい」と口にしたように、自覚は十分だ。

そんな中、果たしてベルギー代表の“後釜”として適性はあるのか。昨季のスタッツから様々な角度で検証したい。

攻撃力を検証

DFを検証するのに攻撃からというのは違和感があるかもしれない。だが槙野は「得点も取れるDFだということを証明したい」と豪語。現役DFとしては最多45得点を挙げているが、DF選手の得点パターンとして最も多いのがセットプレーから。キッカーの質にもよるため一概にどちらが優れているとは言えないが、昨季ヴィッセル神戸に在籍したセンターバック陣と比較する。

まず基本データからおさらいしてみる。

試合出場数と時間、得点&アシスト数比較


この中では菊池の得点数が突出しているが、では得点数に対する決定率はどうだろうか。

シュート本数と決定率比較


ここでも菊池の決定率が高くなっている。ただ槙野とフェルマーレンを比べれば槙野が高い。槙野は天皇杯決勝・大分戦でも劇的な決勝弾を決めており、ここ一番の得点力は期待できるかもしれない。

次に攻撃の起点の指針を示すボールゲイン(相手チームの攻撃から自チームの攻撃に切り替わった最初のプレー。タックルなど意図的なプレーもあれば相手のパス失敗を拾う偶然のプレーもある)とリゲイン(自チームボールロスト後の相手の攻撃を奪い返した攻撃。相手の攻撃中にシュートに至った場合は含まない)を比較してみる。

ボールゲインとリゲイン回数比較


菊池は攻撃の起点でも貢献度が断トツだが、槙野とフェルマーレンは同数値。フェルマーレンは攻撃の起点としても機能していたが、槙野も決して負けていない。

ただ一方で槙野はボールロスト数が「69」を計測。フェルマーレンの「49」に比べると若干多く、特に自陣では28回失っている(フェルマーレンは14回)。積極性は槙野の持ち味だが、安定感という意味では若干の不安が残るかもしれない。

守備力を検証

本職の守備力はどうだろうか。ヴィッセル神戸は昨季リーグ5位の36失点。今季は「平均1失点以下」(三浦淳宏監督)を目標に掲げており、18チーム編成に戻る今季は34失点以下がノルマだ。

ここではタックル数、CBI(クリア、ブロック、インターセプトの合計数)、空中戦(自陣での勝率)の勝利にスポットを当てていく。

タックル数とボール奪取率、CBI比較


フェルマーレンが特筆されるべきはタックルでの奪取率だ。小林と同確率で、回数は少ないながらタックルを敢行した際は高い確率でボール奪取に成功している。一方、槙野の奪取率は半分を超えたほどとなっている。

空中戦と自陣での勝率比較


また空中戦でもチャレンジの回数は多いが、勝率ではフェルマーレンよりも低い。フィジカルの強いFWや長身選手が揃うアジアの戦いでは、この点は気がかりで、より危険な位置で相手にスペースやFKを与えないことが昨季以上に必要になってくるかもしれない(菊池の数値が飛び抜けているとはいえ)。

積極性の槙野、安定感のフェルマーレン

槙野とフェルマーレンの昨季データにおいて、どちらがズバ抜けて能力が高いわけではない(身長も1センチ差で体重差も5キロと体格的にも似ている)。それぞれに良さがあり、その中で浮かび上がるのは『より積極性の槙野』『より安定感のフェルマーレン』という構図だ。

確かに守備面での不安は残るかもしれないが、今までになかった持ち味がチームに良い化学反応を起こす可能性も十分ある。フェルマーレンとは違う槙野の長所をどうチームに落とし込んでいくか。そこは三浦淳宏監督の手腕にかかっている。

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