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渋野日向子、涙の復活優勝の裏にある「スタイル変更」の苦悩

2021 10/12 06:00田村崇仁
涙をこぼす渋野日向子,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

4人のプレーオフ制して1年11か月ぶり5勝目

人知れず苦しんだ分、歓喜の涙があふれ出た。女子ゴルフの国内ツアー、スタンレー・レディースは10月10日、静岡県東名CCで最終ラウンドが行われ、2打差の5位でスタートした22歳の渋野日向子が6バーディー、2ボギーの68で回り、通算10アンダー、206で4人が並んだプレーオフを制した。

2019年11月の大王製紙エリエール・レディース以来、約1年11か月ぶりの復活優勝となり、日本ツアー5勝目。賞金1800万円を獲得した。

ここ2年は海外メジャーの全英女子オープン覇者として海外志向を強め、スイング改造にも取り組んで欧米を転戦。たが思うような成績に結び付かず、勢いも失速して苦悩してきた。多くのファンが待ち望んだトレードマークの笑顔が泣き笑いとはいえ、久々に戻った瞬間でもあった。

今大会に限れば、復活の要因はドライバーの復調と100ヤード以内のショートゲームの精度向上が大きいだろう。今季のドライバー平均飛距離は247.04ヤード。大会を終えた渋野はインスタグラムを更新し、雄大な富士山を見つめる自身の背中姿とともに「たくさんの応援ありがとうございます。久しぶりの優勝はやっぱり嬉しいものです。まだまだ長い人生の途中。ちょっとずつちょっとずつ、進んでまいります」と記した。世界の頂点を見据え、長かった苦闘を乗り越えて再スタートを切った。

プレーオフで取り戻した勝負強さ

18番(パー5)でのプレーオフで持ち前の勝負強さを取り戻した。渋野は今季からウエッジ4本(46度、52度、54度、58度)を駆使し、コースマネジメント重視でスイングもコンパクトに変更。ドライバーの飛距離が出るようになった分、パー4でも1ヤード刻みでウエッジを使い分ける高度なコース戦略がある。

渋野のプレーオフ1ホール目は残り88ヤードから第3打を54度のウエッジで放ち、あと一歩でチップインイーグルというスーパーショットで10センチにピタリと寄せて楽々バーディー。2ホール目も残り108ヤードの3打目を46度のウエッジで1メートルにつけてバーディーを奪った。

正規の18番でも残り95ヤードの3打を52度のウエッジでピン手前1メートルにつけており、この日は18番で驚異的な「3連続バーディー」のおまけ付き。いずれも異なるウエッジを握り、勝負どころで「スイング改造の集大成」の一打が光った。

プレーオフは1ホール目で木村彩子、2ホール目で18歳の佐藤心結(茨城・明秀学園日立高)とペ・ソンウ(韓国)がバーディーを奪えず脱落。渋野はプレーオフを制した瞬間、思わず感極まって手で顔を覆った。

攻めるゴルフからマネジメント重視へ、スイング改造に賛否も

渋野は2019年に20歳で全英女子オープンを制し「黄金世代」の顔として一躍時の人となり、国内でも4勝。だが近年は「2019年の自分」と比較してもがいてきた。

積極的に飛ばして攻めるスタイルから、コンパクトなスイングでマネジメント重視のゴルフに変更。低くフラットなトップから入射角を浅くし、安定したスピン量と再現性を求めた新スイングは賛否の声も耳に届いた。若手も台頭し、世代交代のスピードに焦りも隠さなかった。

それでも世界を見据えて新たなスタイルに挑んだゴルフだからこそ、渋野は自分を信じるほかない。米ツアーへの本格参戦を表明した2020年は飛距離の違い、グリーン周りなどのアプローチの技術の違いを痛感。長年師事してきた青木翔コーチからも離れ、試行錯誤を繰り返してきた。雑音を封じるためにも欲しかったのが優勝という結果だ。

最近は復調の兆しもあった。前週の日本女子オープンまで3週続けてトップ10に入り好調を維持。スイングに迷いがなく、ドライバーの飛距離に安定感が戻っていた。そしてスタンレー・レディースの最終18番のバーディーで4人のプレーオフに残り、2ホール連続バーディーを決めて涙の復活V。ウエッジ4本のコース戦略も奏功し、渋野の新たなゴルフスタイルが固まりつつある。

11月末には米女子ツアー予選会に挑戦する。国内の復活Vもまさに道半ば。まさに「長い人生の途中」という決意で「スマイリング・シンデレラ」の第2章が幕を開ける。

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