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賞金2億円超えの稲見萌寧、海外挑戦封印で永久シードも視野?

2021 9/14 06:00田村崇仁
稲見萌寧,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

五輪「銀」の底力、メジャー初優勝で今季8勝目

東京五輪銀メダルの底力を示す圧倒的な強さだった。ゴルフの日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯は9月12日、茨城県静ヒルズCC(6680ヤード、パー72)で最終ラウンドが行われ、22歳の稲見萌寧が1打差の2位から8バーディー、ボギーなしの64で回り、逆転で悲願の国内四大大会初優勝を果たした。

通算19アンダー、269は72ホールの大会史上最少ストローク。新型コロナウイルス禍の影響で昨年と統合された今シーズン8勝目で、ツアー通算9勝とした。シーズン最多勝は2003年に不動裕理がマークした10勝。昨夏からのシーズンで8勝、今年だけで7勝の稲見はシーズン最多10勝も視野に入ってきた。

3600万円を加えた賞金額は2億円を超え、小祝さくらを抜いて自身初めてランキング首位に立った。女子で2億円超えは2015年に2億3049万7057円を稼いだイ・ボミ以来の快挙でツアー歴代2人目となる。

決勝2Rは「完璧主義者」の真骨頂

2位に4打差の快勝。18番で短いウイニングパットを沈めると、ポーカーフェースでラウンドしていた稲見がようやく表情を緩めた。

「完璧主義者なので全部が完璧になるまで突き詰める」という向上心の塊。勝負の決勝ラウンドはその真骨頂を示すような2ラウンドで65、64の好スコアで15も伸ばし、ツアーで最も古い歴史を持つ大会の最少スコアを更新した。

最終日は1度しかフェアウエーを外さず、パット数26は4日間で最少。9番から3連続バーディーで独走態勢を築き、ボギーなしと隙のない内容で圧巻のゴルフだった。

「はざま世代」のダイヤモンドに

稲見の一つ上の1998年度生まれは、世界で活躍する渋野日向子や東京五輪代表の畑岡奈紗ら実力派がそろい「黄金世代」と呼ばれる。

一方、一つ下の2000年度生まれも古江彩佳ら才能あふれる有力選手がそろった「ミレニアム世代」。今季の活躍で女子ゴルフ界の「顔」になりつつある稲見は「はざま世代のダイヤモンドになる」と意気込んできたが、その強さを支えるのが「絶対距離感」と言われる正確無比なショット力だろう。

データで見ても、9月12日現在のパーオン率は75.3782%、平均ストロークも70.0184でともにトップ。パーセーブ率90.3495%、平均バーディー数3.7559もいずれも1位で、圧倒的なゴルフ内容を数字が物語る。

東京五輪後、次の目標に「国内メジャー制覇」と「二桁勝利」を掲げたが、早くも一つはクリアした。子どもの頃から時に「1日10時間」にも及ぶ、言わずと知れた練習の虫。当面は海外挑戦は封印し、国内大会を主戦場にする考えだが、このハイペースで勝ち星を重ねたら、永久シード権を得られる「通算30勝」も早々と見えてきそうだ。

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