大きなスイング改造
渋野日向子は今年スイング改造を行い、現在も改造を続けながらトーナメントを戦っている。昨年のオフもスイング改造に着手していたようだが、今年の開幕戦で見せた変化は昨年の変化以上のものだった。
今季の成績は、日本ツアー開幕から13位、57位、11位、15位。米ツアー初戦のANAインスピレーション(メジャー)では予選落ちと、まだ結果が出ていないことから、「スイング改造はするべきではなかった」と否定的な意見が聞かれる。
しかし、渋野のスイング改造は必要なことだと筆者は考えている。スイングの変わった点と、改造を肯定する理由について解説したい。
ニュースイングで狙える効果
今年の渋野は、アドレスからバックスイングでのスイングプレーンがこれまでよりもフラット(横ぶり気味)になった。また、トップオブスイングは低くコンパクトな位置に収まっている。この時のフェースの向きはシャット(閉じている)だ。
渋野は元々、ダウンスイングからインパクトにかけて、お尻が前に突き出て上半身が右に傾く癖があった。こうなるとインパクトで手元が浮きやすい。手元が浮くと、フェースコントロールが難しくなり、球が左右に散らばりやすくなってしまう。
スイングプレーンをフラットにすることで、ダウンスイング以降、上半身が右に傾くことなく体をターンさせやすくなる効果が期待できる。すると、インパクトで手元が浮きにくくなるため、フェースの向きを安定させやすくなるのだ。
バックスイングからトップオブスイング、そしてダウンスイングへとフェースをシャットに使うことで、フェースの開閉を抑えることができる。そして、フラットなスイングプレーンとの相乗効果で、インパクト前後のクラブの挙動が安定しやすくなる。
弱点が共通している石川遼からの助言
渋野はプロテスト前から指導を受けていた青木翔コーチから卒業し、石川遼から助言を仰ぐようになった。その石川からのアドバイスがニュースイングへ繋がったようだ。
スイングにおいて渋野と同じような弱点がある石川は、これまであらゆるスイング理論を取り入れ、消化してきた。20歳前後のスイングと現在のスイングを比べると、大きく変わっている。
そんな石川の助言だからこそ、渋野は納得し取り入れることにしたのではないだろうか。同じツアー選手ならではの感覚的な部分でも、共感できるところがあったのかもしれない。
全米女子オープン最終日の悔しさを胸に
スイングが良くなったからと言って、成績が良くなるとは言えないのがゴルフの難しいところ。客観的な見た目の形(動き)は良くなったとしても、感覚的な部分が失われてしまうリスクもある。しかし、渋野は「変化することを恐れない1年にしたい」といっていることからも、覚悟を持って今回のスイング改造に臨んでいるようだ。
記憶に新しい、優勝争いを繰り広げた昨年12月の全米女子オープン。3日目終了時点では首位だったが、最終日は終盤まで優勝争いに加わっていたものの、明らかにショットが思うようにいっていなかった。成長したショートゲームでピンチをしのいで何とか喰らいついていた、という展開だった。
再びメジャーの舞台で同じ展開になったとき勝ち切るために必要なことを考えてみても、昨年の米ツアー転戦中「以前は、まずは飛距離と考えていたけれど、正確性の方が重要だと感じた」と言っていたことを踏まえてみても、スイング改造は必要と言えるのではないだろうか。仮に、今後スイングを元に戻すことになったとしても、今回のスイング改造の経験は無駄にはならないはずだ。
まだ今年の戦いは始まったばかり。渋野の取り組みが結果に表れる日を気長に待ってみたい。
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