畑岡奈紗とのプレーオフ制し、日本勢3人目のメジャー制覇
日本人の父とフィリピン人の母を持つ女子プロゴルフ界の大器で「女性版タイガー・ウッズ」とも呼ばれる19歳の笹生優花が6月6日、偉業を達成した。76回の歴史を誇る女子最高峰の大会、全米女子オープン選手権で通算4アンダーの280で並んだ22歳の畑岡奈紗とのプレーオフを制し、2008年大会の朴仁妃(韓国)と並ぶ19歳11カ月17日の大会史上最年少で初優勝。日本勢として初めて歴史に名を刻んだ。
女子のメジャーは歴史や格があるとして米女子ツアーが5大会を指定。日本女子では1977年全米女子プロ選手権の樋口久子、2019年全英女子オープンの渋野日向子に続き3人目のメジャー制覇となった。
男子では4月に松山英樹がマスターズ・トーナメントで日本男子初のメジャー制覇を果たしたばかりで、ゴルフ界に日本のビッグニュースが続いている。
賞金1億円超、東京五輪はフィリピン代表で出場へ
2番、3番で痛恨の連続ダブルボギーをたたきながら、笹生は最後まで諦めなかった。7番でバーディーを奪い、16、17番のロングホールでも連続バーディーと巻き返した。
プレーオフは規定の2ホールではともにパー。サドンデスで行われた3ホール目でバーディーを奪って決着すると、両手を挙げてガッツポーズ。「全ての人にありがとうと言いたい」と涙ながらに感謝し、賞金100万ドル(約1億1000万円)を獲得した。
遠征に同行する父・正和さんも最終ラウンドを見守る中、フィリピン国籍を持つ選手としてだけでなく、男女を通じて21世紀生まれで初めてのメジャーチャンピオン。米ツアーで5年の出場資格もつかみ、公式サイトによると「私の夢は世界一、そしてこの大会に勝つことだった。本当に、実現するとは思わなかった」と喜びを語った。
東京五輪はフィリピン代表で出場し、その後は父の母国である日本の国籍を選ぶ意思を示している。
魅力は国内トップの飛距離、小技も巧み
身長166センチ、体重63キロの恵まれた体格で強さとしなやかさを併せ持つ。最大の魅力はドライバーの飛距離だろう。ティーショットの平均飛距離は262ヤードで国内トップ。さらに距離を出したいときはドローで打ち、止めるときは持ち球のフェードで打つ器用さもある。
国内ツアーでは赤のポロシャツと黒のパンツというタイガー・ウッズの勝負服といえるコーディネートで優勝し、世間をあっと驚かせた。圧倒的な飛距離を武器にバーディーを重ね、小技も巧みなプレースタイルはまさに「女性版ウッズ」そのものである。
8歳で「世界一」の夢
8歳で「世界一になりたい」と夢を描いてゴルフを始め、母の出身地フィリピンを拠点に各国のジュニア大会で活躍。子どもの頃から重りをつけたスクワット、ボクシングのミット打ち、野球の守備など父との創意工夫にあふれた厳しい二人三脚で鍛え、2018年ジャカルタ・アジア大会はフィリピン代表として個人と団体の2冠に輝いた。
2019年11月に日本ツアーのプロテスト合格。尾崎将司の指導も受けて腕を磨き、2020年はツアー2勝。日本語だけでなく、タガログ語や英語も流ちょうに話す。
好きな選手はウッズとマキロイ
好きな選手はタイガー・ウッズとロリー・マキロイ(英国)と公言する。LPGAは今大会、笹生のドライバーショットがロリー・マキロイ(英国)に似ていると注目し、比較映像も公開した。
笹生がスイングを参考にし、憧れてもいるマキロイは自身のツイッターで、笹生の優勝に「これでみんながユーチューブで笹生優花のスイングを見るようになるよ。おめでとう」と粋なコメントで祝福。笹生が幼いころから憧れてゴルフを始めるきっかけになった宮里藍さんもインスタグラムに「おめでとう。本当すごい快挙!」と投稿した。
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