日本ゴルフ協会ナショナルチームヘッドコーチ
豪ナショナルチームを立て直したガレス・ジョーンズ氏は、2015年に日本ゴルフ協会ナショナルチームのヘッドコーチとして招聘された。
期待通りナショナルチームの活動でガレス氏が指導した選手たちが活躍。黄金世代の畑岡奈紗はアマチュアで2016年の日本女子オープンを制した。
金谷拓実は2019年の三井住友VISA太平洋マスターズでアマチュア優勝し、その後世界アマチュアランキング1位になった。中島啓太も世界アマチュアランキング1位になり、今年9月のパナソニックオープンでアマチュア優勝を果たした。
日本女子ツアーで活躍している黄金世代やミレニアム世代も、これから男子ツアーで活躍がが期待される若い世代も、ナショナルチームでガレス氏と多くの時間を過ごしてきた選手は多い。ちなみに、金谷は女子黄金世代と同学年、中島は女子ミレニアム世代と同学年だ。
ガレス氏はいったいどのようにして選手たちの力を引き出してきたのだろうか。
畑岡奈紗の米ツアー予選会にキャディーとして帯同
書籍「世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス」によると、ガレス氏は「プロフェッショナルと成長志向、二つのマインドセット(心構え)が日本のゴルフを進化させる」と述べている。
2016年に日本女子オープンでアマチュアで優勝した畑岡は同年12月、2017年の米ツアー出場権をかけた予選会に挑戦し、見事突破。米ツアー出場権を獲得した。
この時、キャディーとして帯同していたのがガレス氏だった。ガレス氏は畑岡のことを「世界で活躍できる選手になりたいというモチベーションが、他の選手よりもずっと高かった」と述べている。
予選会で畑岡が思うようなゴルフができていない時は、意見が食い違い言い合いになることもあったようだ。しかし常々、自分の意見や考えを表明することを選手に求めてきたガレス氏だからこそ、畑岡は自分の意見を主張したのだろう。
ガレス氏はこの時のことを振り返り、「重要なのは、学び続ける姿勢を持つこと。悪いファクターも受け入れる心をつくること。ナサはすぐにそれを理解してくれた」と述べている。
金谷拓実、中島啓太の師
金谷巧実と中島啓太のJGTO(日本ゴルフツアー機構)サイトの選手プロフィールの師弟関係の欄には「Gareth JONES」とある。
金谷はアマチュア時代、プロツアーの練習ラウンドで、グリーンでパッティング練習せずに傾斜計を使って細かく傾斜をチェックすることにほとんどの時間を使っていた。これは「ヤーデージブック(※1)には、グリーン上で想定されるピンの位置や、傾斜の状態や、ゼロライン(※2)を書き込んでいく。ボールを打つ練習を減らしてもだ」というガレス氏の指導を受けてのものだ。
中島はパナソニックオープン前、「パー3以外のすべてのホールのティーショットでドライバーを使う」とガレス氏とともに決めた。これは、来年のマスターズ出場権をかけた今年11月のアジアアマや、将来の目標に掲げている米ツアー参戦のため。「プロは準備と計画がすべてだ」というガレスの教えを、金谷同様、アマチュア時代からプロの舞台で実践しているのだ。
※1:コースレイアウトなどの情報記載メモ
※2:ピンの位置へと伸びる真っ直ぐな上りのライン
プロフェッショナルと成長志向
教え子たちに「自立」を説くガレスは「プロフェッショナル」と「成長志向」の2つの心構えが重要だと話す。
「あなたはどうしますか?」と常に選手に意見を求めるガレス氏。「自分の意見を言って。意見でなくて質問でもいい。それは違う気がすると反対意見もどんどん受け付ける」というスタンスで選手と接しているようだ。
「もっと早くガレスに会いたかったよ」多くの選手がそう言うように、ゴルフ界に大きな影響を与えているガレス氏の指導。これからもガレス氏の教え子達が、プロゴルフ界で旋風を巻き起こしそうだ。
【関連記事】
・渋野日向子、米ツアー本格参戦へ視界良好 スイングと肉体「改造」の結実
・中島啓太アマチュア優勝 松山英樹と共通する試合への臨み方
・賞金女王レース終盤戦、稲見萌寧を追いかける小祝さくらと西村優菜 今年も三つ巴の争いへ