東京オリンピック女子ゴルフ競技で銀メダル
8月4日~7日に開催された東京オリンピック女子ゴルフ競技で、日本代表の稲見萌寧が銀メダルを獲得した。アメリカ代表ネリー・コルダ(世界ランキング1位)が金メダルを獲得。正規の72ホールで稲見とともに2位タイとなり、稲見とプレーオフを戦ったニュージーランド代表リディア・コ(リオオリンピック銀メダリスト、オリンピック前の時点で世界ランキング11位)が銅メダルを獲得した。
世界トップレベルの選手と優勝争いを繰り広げ、銀メダリストとなった稲見の武器はショットの精度。日本ツアーでそのショット力を発揮して今年すでに5勝を挙げている。東京オリンピックでは、フェアウェイキープ率が2位を10%以上も上回る85.71%で参加選手中1位になるなど、世界トップレベルの精度であることを証明した。
その精度を獲得できたのは、完璧主義である点が大きい。稲見自身、自分のことを完璧主義者と評しているが、練習風景や、プレー中のショットに入る前のルーティーンを見ていると、それを感じ取ることができる。
アドレスやテークバックのクラブポジション、フェース向きをチェック
稲見はドライビングレンジでも、アドレスを丁寧に決める。すべてのショットで、寸分の狂いもないアドレスをしようとしていることが伝わってくる。もちろん、他の選手もアドレスは例外なく大事にしているだろう。しかし、稲見ほど丁寧にアドレスをセットする選手は多くない。
細かくチェックしているのはアドレスだけではない。テークバックでも、クラブヘッドがインサイドに入りすぎていないか、クラブフェースの向きはスクエアか、といった点などを丁寧にチェックしているのだ。
ドライビングレンジでは、棒を使ってヘッド軌道などのイメージを作ったりする選手もいるものの、海外選手の多くは基本的に球数をこなしながら、実戦に向けての調整をしている。対して、稲見は1球1球丁寧にアドレスして、打ち終わってから1球ごとにかみしめるようにフィードバックをしていることが見て取れる。
注意点が明確なプリショットルーティーン
プレー中も持つべきスイングイメージを徹底的に確認している。アドレスする時は、左手1本でクラブをセットし、右手をあとからグリップする。肩や腰のポジションや向きが狂わないように注意を払っていることが見て取れる。
ボールを打つ前は、バックスイングで一度クラブを止めて、クラブを収めるポジションを確認している。そして、胴体、腕、クラブを同調させてフェースが返り過ぎないようにフォロースルーをとる素振りをする。
ドライビングレンジでの練習だけでなく、プレー中でもスイングの局面ごとに、細かくチェックポイントを設けているのは、稲見ならではと言えるだろう。
豊富な練習量
通常、チェックポイントの数を多く抱えてショットに臨むとスイングがかたくなる。
しかし、稲見は練習の虫。昔も今も長時間の練習を苦にせずこなす。そして、練習時間は長いものの、ショット練習の球数は多くないようだ。スイング映像を撮ったりしながら動きをチェックすることに時間を割いており、チェックポイントを抱えながらも、リズムやテンポを一定に保つコツを、豊富な練習時間と練習方法によって習得したのだろう。
モネという名前は世界に出たときに覚えてもらいやすいように、と付けられたようだ。これからもっと多くの世界中のゴルフファンにこの名前が届くような活躍を期待したい。
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