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オリックスの2021「年男」 打では大下誠一郎、投では吉田凌 経験を糧に飛躍を期待

2021 1/12 06:00浜田哲男
2021年オリックス・バファローズの主な年男ⒸSPAIA,インフォグラフィック
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ⒸSPAIA

三塁からもベンチからもチームを鼓舞

2020年シーズンは45勝(68敗)で最下位。不本意な結果に終わったオリックスだが、頓宮裕真、紅林弘太郎、宜保翔、太田椋、佐野皓大ら若手が貴重な経験を積み、近い将来への期待感も生まれてきた。そんな中で注目したいのが、2021年に年男となる元気印のイメージが定着した大下誠一郎だ。

2019年の育成ドラフト6位で入団。2020年は2軍で結果を残し、9月14日に支配下選手に登録されると、翌15日の楽天戦のプロ初打席で本塁打。育成ドラフト出身では史上初となるド派手なデビューを飾った。

常に全力でプレーする姿勢とベンチからの声出しでチームの士気を高め、もはや貴重なムードメーカー。32試合に出場して打率.216、2本塁打、9打点、出塁率.314と数字はこれからだが、確かな第一歩を刻んだ。

登録では外野手だが、一塁に加え三塁も守れる。三塁特有の速い打球の処理は比較的安定し、強肩で送球も逸れない。グラブさばきに課題があるが、1年目の三塁守備としては及第点と言えるだろう。打撃に関しては脆さもあるが、思い切りのいい力強いスイングには怖さもある。今後球の見極めと確実性が向上してくれば楽しみだ。

ゾーン別のデータを見ると、内角高め及び内角低めの打率が.000、内角中程が.143と特に内角を苦手としている。また、打球方向のデータを見ると、左翼が29%、左中間が26%と高く、右翼は11%、右中間は16%、中堅は18%と引っ張る傾向が顕著。現状は左翼スタンドに意識が向きすぎているように見られるが、呼び込んで逆方向へ運ぶ意識と技術を身につければ率も向上し、空振りも減らせるだろう。

ひたむきに取り組む姿勢は見ていて気持ちが良い。三塁の守備位置やベンチからチームを鼓舞する姿に期待したいのはもちろん、経験を糧に攻守両面でどんな進化を見せてくれるのか注目だ。

魔球スライダーを柱に大きく飛躍

投手で期待したいのが、同じく2021年に年男の吉田凌。プロ入り後、1軍で登板したのは通算5試合だったが、2020年は自己最多となる35試合に登板し、プロ初勝利を含む2勝(2敗)7ホールド、防御率2.17と及第点の成績を残して頭角を現した。特にシーズン終盤は走者をためた場面などの火消し役として安定感のある投球を見せ、首脳陣からの信頼を掴んだ。

投球の柱は縦に鋭く落ちるスライダーで、実に投球の57.8%を占める。一般的に直球を主体とする投手が多い中で、スライダーでこの投球割合はかなり多い。それだけ自信を持っている球種なのだろう。実際にカウント球としても決め球としても機能している。スライダーによる奪空振率は19.8%と高く、これだけ多く投げているにもかかわらず被打率は驚異の.143だ。

セットアッパーとして短いイニングでの勝負であれば、先発と比べてスライダーを多投でき、吉田の良さが生かされる。ピンチでの場面ではポーカーフェイスで動じないところもセットアッパー向きと言え、奪三振数が投球回を上回っている(29イニング、33奪三振)ことも魅力だ。

ただ、右打者に対しては外角低めのスライダーで打ち取るシーンが多かった一方、左打者には打たれるケースが散見された。スライダーのほかにシュート(投球割合11.6%)も持っているが、左打者の内角に食い込むカットボールなどを今後織り交ぜていければ投球の幅は広がるだろう。吉田に安心して7回あたりを任せられるようになれば、チームとして大きい。2021年シーズンはさらなる飛躍に期待したい。

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