平沢大河は手術からの再起を図る
2020年はシーズン途中までソフトバンクと熾烈な首位争いを繰り広げたロッテ。最終的にソフトバンクには14ゲームの大差をつけられたものの、その戦いぶりは昨季のプロ野球を大きく盛り上げた。ロッテで2021年に年男となる選手の中から、2人に着目したい。
まずは、2021年に24歳となる平沢大河。プロ5年目で正念場と目された2020年は、結局1軍には一度も上がることなく終わった。2軍では56試合に出場し、打率.142、1本塁打、10打点、出塁率.287、OPS.489と低迷し、10月にはそれまで痛みを我慢していた右肘の骨棘切除・遊離軟骨除去術を行った。今後は右肘の完治を念頭に再起を図ることになる。
遊撃のレギュラーは白紙
平沢が1軍で最も多くの試合に出場したのが2018年。112試合に出場し、打率は.213ながら353打席で48個の四球を選ぶなど選球眼の良さを見せ、出塁率は.328。主に右翼を守り、時に攻守で光るものを見せた。しかし、2019年以降は右足首や前述した右肘の故障も影響してか、攻守で振るわず悔しいシーズンが続いている。
ただ、平沢が目指す遊撃はレギュラーが確定しているとは言えない。直近3年間で遊撃手として最も多く試合に出ている藤岡裕大は通算打率.237、通算出塁率.301と、ここまで首脳陣やファンの期待に応えているとは言い難い。
井口資仁監督は遊撃のレギュラーについて白紙と考えており、平沢のほか、ルーキーの小川龍成(国学院大)や福田光輝、茶谷健太、西巻賢二らによる競争になることを示唆している。
遊撃は守備が特に重視されるポジションのひとつであり、守備の安定度を増すことは試合に出るための喫緊の課題だが、ライバルを出し抜いていくためには、打撃でのインパクトを与えたいところ。2020年シーズン後半、少ないチャンスを打撃でものにした藤原恭大が良い例だ。
高橋周平や堂林翔太の事例
他球団に目を向けると、期待されながらも長年くすぶっていた高卒野手の高橋周平(中日)は、7年目の2018年に128試合に出場し、打率.254、初の二桁となる11本塁打をマーク。2019年は117試合に出場し、打率.293。2020年は108試合に出場し、リーグ6位の打率.305をマークした。
同じく高卒野手の堂林翔太(広島)は、プロ入り3年目の2012年に144試合に出場し、打率.242、14本塁打をマーク。以降、飛躍が期待されたが、泣かず飛ばずの成績が続いた。しかし11年目の昨年は111試合に出場し、打率.279、14本塁打、58打点、17盗塁と及第点の成績を残した。
今の平沢は遊撃のレギュラー争いにも加われていない状況ではあるが、まだ若い。1軍での活躍を心待ちにするファンの期待に応えるためにも、怪我を治して心機一転、再びレギュラー争いに加わってもらいたい。
プロの壁にぶち当たった福田光輝
もう一人の注目は、平沢と遊撃を争うライバルでもある同学年の福田光輝。2020年シーズン前の練習試合ではコンスタントに安打を放つなど存在感を発揮した。オープン戦では3月14日の中日戦で広いナゴヤドームの左翼席へ先頭打者弾。続く打席では右翼席に豪快にたたき込む2打席連続弾を放つなどアピールに成功し、開幕1軍入りを果たした。
しかし、プロはそう甘くはなかった。7月1日の楽天戦でプロ初安打を放つも、15試合に出場して23打数2安打の打率.087、出塁率.192と低迷。シーズンのほとんどを2軍で過ごし、1軍定着はかなわなかった。
オープン戦ではとらえていた直球も、シーズンに入ると球威に押され、バットがボールの下をくぐる。簡単に追い込まれると、最後は完全なボール球に手を出してあっさりと三振するケースが散見された。「光輝はやらなければいけないことがたくさんある」と2軍行きが決まった直後に井口資仁監督は話していたが、それだけプロの壁は厚かったということだろう。
2軍では61試合に出場し、打率.211、2本塁打、17打点、出塁率.313。試行錯誤の日々が続いたが、そのすべての経験が糧になる。豪快なスイングから放たれる広角への強烈な打球は魅力で、二塁、遊撃、三塁と守れるユーティリティー性も持ちあわせている。
ルーキーの小川龍成に加え、内野はどこでも守れる新外国人のアデイニー・エチェバリアの入団も決まるなどライバルはさらに増えたが、まずは競争に勝って開幕1軍を手繰り寄せたい。
チーム力向上のためには各ポジションでの競争が欠かせない。2021年は平沢と福田の同学年組が奮起し、内野のレギュラー争いをヒートアップさせてほしい。
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