WECでも大活躍のスペインの英雄
スペインの英雄、フェルナンド・アロンソ。弱冠19歳でF1デビューを果たすと、当時の最年少記録を次々と塗り替えていった。2005年には絶対王者であったミハエル・シューマッハを破り、史上最年少王者に。翌2006年にも世界王者となり連覇を果たすも、その後はことごとく所属するチームの力が弱かったため、チャンピオンを獲得することができなかった。
2018年にF1からは退いたアロンソだが、未だ現役最強ドライバーであるという声があがるほど、彼は類稀なる才能の持ち主でもある。2010年から名門フェラーリのエースとして活躍していた際、セバスチャン・ベッテルとレッドブルという最強パッケージの前に屈するも、最後の最後まで諦めずチャンピオン争いを繰り広げていた。アロンソが優れたマシンを手にしていたら、いったい何回チャンピオンを獲得していたのだろうか。
F1を退いてからはWEC(世界耐久選手権)に参戦し、ル・マン24時間レースを連覇、WECの世界チャンピオン獲得、そしてアメリカのデイトナ24時間も制した。F1チャンピオンとはいえ、全く違うカテゴリーにも関わらず、まるでWECのベテランドライバーのような走りを披露し、最短で名誉ある2つの24時間レースを制したアロンソ。改めて彼の才能に驚かされた一年であった。
アロンソF1復帰待望論も…
そんなアロンソに早くもF1復帰待望論が巻き起こっている。実際、今年ホンダと手を組み、優勝2回を含め非常に高い競争力を発揮しているレッドブルにアロンソが乗るのでは?という噂が出たこともあった。
だが、日本の、特にホンダファンの中には、彼の復帰を快く思っていない人もいるだろう。ホンダがF1に復帰した際にパートナーとなったのがマクラーレンだったが、近年のアロンソはそのマクラーレンで苦戦を強いられた。マクラーレン・ホンダといえば、あのセナ・プロが活躍した時代を思い浮かべる人も多いだろう。だが、あの強かったイメージが先行する中、ホンダの新たな船出は険しく苦しいものとなってしまった。
そして、世界最高峰と呼ばれるほどの実力があるアロンソにとって、マシンが頻繁に壊れ、下位を走ることを強いられる状況は耐え難いものであった。「(ホンダのPUは)GP2のエンジンだ」と無線でコメントしたこともあったほど、フラストレーションがたまっていた(GP2は現在のF2にあたるF1直下のカテゴリーのこと)。
このように、アロンソはホンダに対し批判した過去があるため、ホンダPUを搭載するレッドブルから復帰するという話は難しく、F1復帰を快く思っていない人も多い。ただ、アロンソの立場に立ってみれば小言を言いたくなる気持ちもわかる。上位でのバトルや表彰台、優勝を目指すのはどのドライバーも同じこと。下位での戦いを強いられる環境に満足するドライバーは一人もいないはずだからだ。
また、すでにベテランの年齢に差し掛かっていたアロンソにとって、一から始めるプロジェクトに時間を費やすことが我慢ならなかったのだろう。現役で走れる時間が少なくなってきているため、他のドライバー以上に戦闘力のあるマシンやチームを求めた背景には、少なからず焦りがあったのかもしれない。
最大の目標はトリプルクラウン
そんなアロンソだが、F1復帰よりも重要な目標がある。世界三大レースであるインディ500、モナコGP、ル・マン24時間レースを全て制覇するトリプルクラウンだ。長い歴史上唯一、グラハム・ヒルしか達成できていない偉業にアロンソは王手をかけている。
F1ではモナコを連覇、WECでもル・マンを連覇しており、残るはインディ500のみである。2017年にマクラーレンと共に参戦し、リタイアに終わるも一時はトップを走るなど驚異的なパフォーマンスを見せた。
マクラーレンは来年のインディカーシリーズへの参戦を発表した。そしてチームは現在アロンソと交渉を行なっており、アロンソはおそらくインディカーへの挑戦を選択するはずだ。グラハム・ヒルに続く二人目のトリプルクラウン達成の瞬間が近い将来やってくるかもしれない。
《関連記事》
▶今や6秒台では遅い F1はピットも最速!2秒以内に終わる「ピットストップ」
▶女子中学生レーサーJuju&野田英樹氏に聞く① 「世界を狙うためにもっともっと成長を」
▶ドイツの英雄ミハエル・シューマッハを振り返る