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WEC2019-2020シーズン開幕 「日本」がシリーズをリードする

2019 8/31 11:00河村大志
Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

「勝って当たり前」のプレッシャーの中、達成したル・マン制覇

WECとは、一番速いプロトタイプカーを使用し総合優勝を争うLMP1クラス、LMP1同様プロトタイプカーを使用するもプライベーターチームで行われるLMP2クラス、市販車をベースにしたGTマシンを使用し、プロドライバーによってレースが行われるGTE-Proクラス、GTE-Proと同じGTマシンを使用するも主にアマチュアドライバーで行われるGTE-Amクラスの4つのカテゴリーに分けられ、混走する耐久レースだ。

スピード差がある4つのカテゴリーのマシンが同時に走るWECでは、各クラスでの順位争いに加え、他クラスの処理などイレギュラーな出来事が起こりやすい。トヨタは昨年、そんな厳しい耐久レースで全8戦中7勝を飾り2度のル・マン制覇、ドライバーズ、コンストラクターズチャンピオンを総なめにした。

初めて参戦した昨年のWEC(世界耐久選手権)。2018年春から2019年ル・マンまでという年またぎの変則的なスケジュール(スーパーシーズン)のLMP1クラスには、トヨタ同様メーカー直属のワークスチームの参戦がなかった。トヨタ1強というわけだ。

これまで幾度もル・マンに挑戦しながらも、あと一歩のところで勝てずにいたトヨタ。ル・マン必勝を目標にシリーズに臨んだ昨年は、ライバル不在という圧倒的有利な状況だからこそ「勝たなければいけない」という大きなプレッシャーが襲った。

ル・マン24時間レースは最も過酷なレースの一つで、他車との接触などトラブル、ミスによるアクシデントなど多くの不確定要素がある。だがトヨタはプレッシャーに負けず、今までどうしても勝てなかったル・マンもシリーズも制したのだ。

昨年はトヨタに2度のF1チャンピオンをもたらしたフェルナンド・アロンソが参戦。初めてのカテゴリーに最初は苦戦が予想されたが、まるでWECで何年も走っているベテランのような走りをみせてくれた。

そして最も印象的な走りをみせ、チャンピオンとル・マン制覇にトヨタを導いたのは、日本人ドライバーである小林可夢偉と中嶋一貴だ。F1経験者の2人はトヨタのダブルエースとして活躍し、見事ル・マン制覇、そしてチャンピオンを獲得した。

今年はさらなる接戦が予想されるWEC

今年も唯一LMP1クラスにワークス参戦するトヨタだが、昨シーズンより混戦になることが予想されている。

開幕直前に行われたプロローグテストで、トヨタは昨年同様1-2体制となった。テスト初日と2日目の両日ともトップにたったのはトヨタ7号車で、ベストタイムは1分29秒623。8号車も1分29秒719を出し、順当な滑りだしをみせた。

ところが、レギュレーションによりライバルとの差が確実に縮まっており、3位につけたレベリオン3号車は1分30秒110をマーク。トップのトヨタ7号車とは0.487秒差と僅差。さらにテスト終了後、ハイブリッドであるトヨタとプライベーターであるノンハイブリッドとの性能差をさらに小さくするため、トヨタには14kgの重量課税が課された。

確かに、昨年のトヨタと他チームとの性能差はかなり大きかった。唯一落とした第3戦シルバーストーンでも、トヨタは完璧な1-2フィニッシュを達成。しかし縁石に乗り上げたことがきっかけで車体前方下部にダメージを負い、その結果、車体剛性検査で不適合と判断され失格となった。

昨年はプレッシャーの中、完璧なマシンとドライバーを準備し、完璧なチームワークを見せたトヨタ。今年もシリーズを引っ張っていくことは間違いないだろう。また、何もなければ勝てる状態のはず。だが、昨年のようにはいかないのかもしれない。

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