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【カペラS】ポイントは最後の200m12秒6にあり 今後の短距離戦線で信頼できる馬は?

2020 12/14 11:20勝木淳
2020年カペラステークスのレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA

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前後半3秒4差、ハイペースではあったが…

中山ダート1200mで行われる重賞はカペラSのみ。全体のレース数は多いものの重賞がひとつなので、コースに詳しく触れる機会は少ない。2020年カペラSの前後半600mは33秒2-36秒6。前半が3秒4速い前傾ラップ。ハイペースは事実だが、驚くようなペースではない。前日の3勝クラス・アクアラインSは前後半600m33秒2-37秒4で、前半のペースはカペラSと同じ。後半を36秒台にまとめるあたりはさすが重賞だが、コース形態からこのぐらいのペースは普通といってもいい。

芝でダッシュを効かせて、ダートコースへ入り、そこから残り200mの急坂まですべて下り勾配が続く。道中下り続けるので自然と速いラップが形成、その分最後の急坂が堪え、残り200mで必ず失速する。この失速区間次第でゴール前は様相が変わる。

アクアラインSは最後の200m13秒0で後方勢が一気に押し寄せたが、カペラSは後ろから来る馬にも厳しい急坂部分を12秒6で乗り切った。コパノキッキングが勝った昨年は前後半600m32秒9-36秒4、最後の200m12秒8。道中でひと呼吸おいた勝ち馬は残せたが、逃げ馬と番手にいた馬は最後に見事に止まり、2、3着は差し追い込み勢だった。

昨年のコパノキッキングほどではないにしろ、最後の200m12秒6で踏ん張った1着ジャスティンと3着ダンシングプリンスは合格レベルだった。先行勢にこのラップを刻まれては展開待ちの追い込みは厳しい。

控える競馬を強いられたダンシングプリンス

1着ジャスティンはこれで今年1200m重賞3勝目。1200m戦では先行できなかったJBCスプリントや2月大和Sで崩れたが、この距離で先行さえすれば好走できる、坂井瑠星騎手もそれを確信した騎乗だった。先手をとりに行くダンシングプリンスの外を目指し、そこに収まると追走に余裕さえ感じられた。以前は行く一手だったため目標になりやすかったが、好位に収まるようになり、その心配は消失、成績の安定につながった。戸崎圭太騎手が騎乗した10月の東京盃がきっかけになったかもしれない。

坂井瑠星騎手はまるで趣味であるかのように時間があればひたすらレース動画を観る研究熱心な人物。ダンシングプリンスの脚を計算に入れ、4角で間合いを測りつつ、同時に追い出せば捕らえられるように組み立てていた。同時であれば、相手も抵抗するので先に抜け出して目標になることはない。逃げ馬を利用した計算し尽くされた競馬だった。

目標になった3着ダンシングプリンスは発馬を決めながら、インコースから絶対にハナを奪うという強い意志を主張したヒロシゲゴールドをやり過ごすのに苦労した。ハナを渡すまいと強引に行けばオーバーペース必至。引くという判断は無理もない。だが地方転出後6連勝はすべて逃げ切り勝ち。控える経験のなさがアダとなった。

それでもヒロシゲゴールドが来ると、三浦皇成騎手はあえて馬を離し、馬場の真ん中あたりで懸命になだめた。かつてジャスティンがそうだったように、逃げ馬にとって先頭と2番手はたった1頭の違いであっても大きく、ヒロシゲゴールドを交わしてから突き放すだけの脚はなかった。中央再転入後初黒星を喫したが、これも経験だと前向きにとらえたい。

2着レッドルゼルは前走室町Sが前後半600m34秒1-35秒3、自身は後半600m34秒4。これよりさらに厳しい流れになるも道中は同じ10番手追走、先行集団と後方馬群の切れ目でストレスをかけずに追走できた。最後の直線での伸びは際立つものだったが、先行勢に最後の200m12秒6で乗り切られては2着も致し方なしといったところか。差し脚質ながら1200mは【2-2-0-0】と安定感がある。流れに左右されず毎回確実に脚を使える証拠でありこれからも信頼できそうだ。

JBCスプリントで中央馬を制したサブノジュニアは見せ場を作れず8着。そのJBCスプリントは前後半600m33秒4-37秒3で後半かなり時計がかかった。先行勢に36秒6で踏ん張られては厳しく、初めての中央挑戦で59キロも堪えたようだ。

カペラSのレース展開



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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