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【阪神JF】シラユキヒメ一族にGⅠをもたらしたソダシ 白毛の軌跡はまるでゲームの世界

2020 12/14 11:04勝木淳
2020年阪神ジュベナイルフィリーズのレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA
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シラユキヒメ誕生から24年

1996年、青鹿毛のサンデーサイレンスと鹿毛のウェイブウインドから生まれたシラユキヒメ。その名の通り真っ白な馬体は芦毛ではなく白毛。遺伝子の突然変異による誕生だった。白毛は隔世遺伝せず、白毛馬からのみ生まれるといわれる。

デビューが遅れ、9戦0勝で繁殖入りしたシラユキヒメはシロクン(5戦0勝)、ホワイトベッセル(17戦3勝)と白毛馬を産み、3番仔のユキチャンが関東オークスを勝ち、白毛初の重賞タイトルを獲得。繁殖入りしたユキチャンがはじめて産んだ白毛はシロインジャー(父ハービンジャー)。その初仔が父ミッキーアイルの鹿毛を受け継いだ3番人気メイケイエール。

一方シラユキヒメとキングカメハメハとの間に生まれたブチコは馬名由来の通り白毛ながら鹿毛とのブチ柄。通算4勝をあげたブチコの初仔が祖母に似た純白の白毛ソダシ(1番人気)。シラユキヒメ一族の2頭がGⅠで上位人気に押され、そして白毛のソダシが勝ち、白毛馬初のGⅠタイトルを獲得。シラユキヒメの誕生から24年、馬主・金子真人氏がまたひとつ夢を叶えた。

自信みなぎる吉田隼人騎手

札幌2歳Sで洋芝のハイペースを経験、アルテミスSでスローペースの瞬発力勝負を制したソダシに乗る吉田隼人騎手はかなり自信をもってレースに臨んだようだ。ルクシオンとともに九州産馬初のGⅠ制覇を目指すヨカヨカが逃げ、前半800m46秒8の平均ペース。ラップを落とすことなく、11秒台後半のラップが並ぶなか、ソダシは好位のインコース。ゲート入りを嫌がるなど周囲を不安にさせながらもスタートを決め、いつどこからでも動ける位置をとった。

4角手前の残り600m標識から坂下までヨカヨカが仕掛けて11秒2。それを目標に動いたポールネイロン、エイシンヒテン、インフィナイト、外を動いたメイケイエールはそこで末脚を使い切った。ソダシはこの攻防には一切参加せず、一旦下がるような形になりながらもインコースで進路を確保しつつ待った。いつどこからでも動ける位置をキープしつつ、周囲が動いても自分のタイミングを待てるあたり、鞍上のソダシへの自信を感じた。

スタートからソダシの動きすべてをマークしたのが2着サトノレイナス。ソダシが抜けてできた進路を突く、ルメール騎手は全部お見通しといった感じだった。坂できっちり脚を使った2頭の差はハナ差。ヨカヨカが作る流れがもう少し厳しければ、ソダシの動くタイミングがわずかでも早ければ逆転した可能性は十分ある。はじめての重賞がGⅠだったサトノレイナスもまたソダシと同等に評価したい。

まさにリアルダビスタ

3着ユーバーレーベンは後方待機。前後半800m46秒8-46秒3の流れを考えると展開に逆らう形だったが、14キロ絞れたことで大外をジリジリとバテることなく脚を使い続けた。このバテない走りはまさに父ゴールドシップ譲り。直線が長いコースで馬場が悪化したときや、思わぬハイペースなど乱戦になればあるいは来春、大仕事をする可能性はある。

4着メイケイエールは発馬から折り合い重視で控える形。ファンタジーSのように途中で暴走になることはなかったが、終始武豊騎手らしくない立ち上がり気味の騎乗で折り合いを欠いていた。それでも一旦は外から先頭をうかがうが、残り200mで脚色が鈍った。速いラップが刻まれた地点を外から動いた分もあっただろうが、距離不安は依然として残る。一族特有の気難しさも解消したい。

5着ヨカヨカはマイペースを刻めたとはいえ、自ら早めにスパートして見せ場十分。こちらもマイルはやや距離が長い印象。九州産の星。短い距離であれば、まだまだ勝てる。3勝馬でもあるので、無理せずじっくり行ってほしいところだ。

かつて白毛馬はシラユキヒメのデビューが遅れたように体質の弱さが欠点だった。加えてシラユキヒメの子孫は同日中山出走のダノンハーロックやメイケイエールのように気性難も同時に抱える。志半ばで力を出し切れずに現役を退いた馬も多い。そんな一族を所有し続け、様々な種牡馬を交配して体質や気性の改善を図り、ついにGⅠ馬を誕生させた。シラユキヒメ牝系を日本の名牝系に育てつつある金子真人氏こそ、いま流行の「ダビスタ」をリアルで行く。

阪神JFのレース展開



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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