前回優勝者が郷土にちなんだメニューを振る舞う恒例行事
「チャンピオンズディナー」と言えば、男子ゴルフのメジャー第1戦、マスターズ・トーナメント伝統の恒例行事だ。
会場となる米ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGCで開幕前々日の火曜日、歴代王者が栄光のグリーンジャケット姿で一堂に会する夕食会。前回優勝者が郷土にちなんだメニューを考え、振る舞うのが慣例になっている。4月5日、松山英樹はホスト役を務め、食通で知られる世界トップの名手たちをもてなした。
大会公式ツイッターによると、注目されたメニューは「日本」にこだわった和食のコース料理。松山は愛媛県出身で幼少期から魚介類に慣れ親しんできただけに、前菜は新鮮な寿司や刺し身の盛り合わせ。さらに日本らしい焼き鳥が加わった。
メインディッシュは2種類でタラの西京焼きと宮崎牛。宮崎牛はA5ランクの和牛リブアイでキノコや野菜、さんしょうやポン酢などが添えられた。デザートには有名なイチゴ「あまおう」を使用したショートケーキが選ばれたという。一部の食材はオーガスタ・ナショナルGCのシェフらを通じて、日本から取り寄せられた。
宮崎牛は日本のゴルフ界と世界をつなぐ縁があり、日本ツアー「ダンロップフェニックス」に出場する海外の一流選手がこれまでクラブハウスや近隣で舌鼓を打ってきた経緯がある。松山は胸を張って世界に「ミヤザキビーフ」を紹介した形だ。
ベン・ホーガン発案、帝王も「センセーショナル」と絶賛
1952年にベン・ホーガン(米国)の発案で始まったマスターズ伝統のチャンピオンズディナーは前年優勝者が歴代王者や大会創設者を呼び、その選手の好物や母国の名物料理をもてなすことが多い。松山もその伝統を守りつつ、日本人初の王者として、マスターズに新たな風を吹き込んだ。
メジャー通算18勝の帝王ジャック・ニクラス(米国)は自身のSNSで「思い出す限りで最高のディナーだった。素晴らしい仲間たちとの会話があり、そして食事がセンセーショナルだった!」と絶賛。セルヒオ・ガルシア(スペイン)は「記憶に残る、五つ星のチャンピオンズディナーだった」と100点の絵文字とともに投稿した。
アジアがルーツのウッズも寿司や刺し身提供
近年のチャンピオンズディナーを振り返ると、選手や出身国のさまざまな特色が表れている。
過去5回優勝のタイガー・ウッズは1998年のチーズバーガーやフライドポテト、ミルクセーキに始まり、2003年にはアジアにルーツもあることから寿司や刺し身も提供。2006年にはメキシカンライスを提供するなど国際色が豊かだ。
1997年のニック・ファルド(英国)は英国伝統のフィッシュ&チップスを選び、シャール・シュワルツェル(南アフリカ)はアフリカの伝統的なバーベキュー「ブライ」を実演。ベルンハルト・ランガー(ドイツ)が地元で愛されるシュニッツェル、サンディ・ライル(スコットランド)は羊の内臓を羊の胃袋に詰めて茹でたスコットランドの伝統料理ハギスをチョイスするなど各国の名物料理がズラリと並ぶ。
そんな伝統に松山が新たな1ページを加えた。
【関連記事】
・松山英樹と中島啓太、マスターズで日本人選手が2つのトロフィー独占へ挑む
・松山英樹の優勝まで日本人がマスターズに挑んだ85年間の苦闘の歴史
・ゴルフの祭典「マスターズ」で輝いた日本人選手たち