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松山英樹の優勝まで日本人がマスターズに挑んだ85年間の苦闘の歴史

2021 4/13 06:00田村崇仁
グリーンジャケットを着てガッツポーズする松山英樹Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

10度目の出場で栄光のグリーンジャケット

日本選手の初挑戦から85年。戦前からの長い苦闘の歴史を経て、29歳の松山英樹が栄光の「グリーンジャケット」を着る日がついにやってきた。

男子ゴルフのメジャー、マスターズ・トーナメントは4月11日、米ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGC(パー72)で最終ラウンドが行われ、松山が日本男子初のメジャー制覇の偉業を達成。4打リードの単独トップで迎えた最終日を4バーディー、5ボギーの73で逃げ切り、通算10アンダーの278として第85回を数える「ゴルフの祭典」の歴史に10度目の出場でその名を刻んだ。

2021年マスターズ最終成績

優勝賞金2億円「もっと勝てるように」

優勝パットを決めると感極まって目を潤ませ、キャディーと抱擁。大会の公式インタビューでは「最後まで緊張しっぱなしだった。これまで日本選手はメジャーで勝てなかったが、これで日本人が勝てるように変わっていくんじゃないか。もっともっと勝てるように頑張りたい」と静かに喜びをかみしめた。

マスターズ制覇はアジア勢でも初の快挙となり、優勝賞金207万ドル(約2億2700万円)と終身の大会出場権を獲得した。ウィル・ザラトリス(米国)が1打差の2位。日本女子では1977年の樋口久子、2019年の渋野日向子がメジャー大会を制している。

コーチ迎え、データ駆使で難コース攻略

アマチュアの名選手として知られたボビー・ジョーンズ(米国)らによって1934年に創設されたマスターズは、男子ゴルフのメジャー4大会の一つ。数々の名場面を生んできた風光明媚なコースとして世界中のゴルファーが憧れ、毎年同じコースで開催される唯一のメジャー大会でもある。

松山は19歳だった東北福祉大時代、東日本大震災直後の2011年のマスターズでベストアマチュア(27位)に輝き、今回が33度目のメジャー挑戦。これまで2017年の全米オープン選手権の2位が最高で、マスターズでは2015年の5位が最高だった。

10年前から体格は筋力トレーニングで上半身や下半身が一回り大きくなり、代名詞のアイアンショットの切れ味を武器に心技体が充実。今年から目沢秀憲コーチを迎え、データを駆使した分析も難コース攻略を後押しした。

幼少の頃から憧れ続けたオーガスタの地。攻めのゴルフと傷口を最小限に抑えるリスクマネジメントが奏功し、最終日は後半15番で池に入れるなど苦しんだが、今大会はパットも好調で貯金を生かして栄冠をつかんだ。

初出場は1936年の陳清水と戸田藤一郎

日本勢で初めてマスターズの舞台を踏んだのは、1936年の第3回大会に出場した陳清水と戸田藤一郎だった。それから幾多の名手、レジェンドが挑みながら、高すぎる壁にはね返され続けてきた。

22年の空白を挟み、戦後初の出場となったのは1958年の中村寅吉と小野光一。この大会で中村は41位に入った。

尾崎将司は8位、青木功は16位が最高

日本のゴルフ界で一時代を築いた「AON」の初舞台は、尾崎将司が1972年、青木功が1974年、中嶋常幸が1978年。尾崎将は2度目の出場となった1973年に自己最高の8位。14度出場の青木は1985年の16位が最高だった。中嶋は1986年に8位、1991年に10位と健闘した。

これまで歴代最高は伊沢と片山の4位

7000ヤード前後だったオーガスタは2000年代になって距離を増し、日本勢は苦戦を強いられてきた。2001年に伊沢利光が史上最高を更新する4位に入ったが、2006年まで9年連続出場した丸山茂樹も厚い壁にはね返された。

2009年に片山晋呉が8度目の出場で4位と奮闘したが、マスターズ制覇は日本ゴルフ界の悲願でもあった。

憧れのウッズも「日本の誇り」と祝福

4歳でゴルフを始めた松山の憧れは幼少期からタイガー・ウッズ(米国)。マスターズ史上最年少優勝を遂げた1997年大会の衝撃的な記憶が残っているという。

今大会で歴史的な快挙達成後、そのウッズが公式ツイッターを更新し「日本の誇りだ。君と母国にとっての素晴らしい偉業達成おめでとう。このマスターズでの歴史的勝利は、ゴルフ界全体にインパクトを与えるものだ」などと祝福のメッセージを投稿。表彰式でグリーンジャケットに袖を通し、笑顔で両腕を突き上げた松山にとっても20代最後の挑戦で憧れのゴルファーからのコメントは何より心強く、さらなる飛躍を後押ししてくれるだろう。

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