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【桜花賞】アルマヴェローチェ、エリカエクスプレス、エンブロイダリーの3頭をデータで比較 阪神の騎手成績に明暗

2025 4/8 17:00高橋楓
桜花賞 有力馬3頭比較,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

三つ巴の争いとなった2007年の桜花賞

2007年の桜花賞は三強対決に沸いていた。前年の阪神JFの勝ち馬ウオッカにアストンマーチャンとダイワスカーレットが挑む構図となり、4番人気以下は単勝オッズ30倍以上と完全に三つ巴の様相。結果はダイワスカーレットがウオッカを退け見事に1着に輝いた。力と速さのぶつかり合いは実に見応えがあり、今でも忘れられない思い出の一戦となっている。

さて、今週は桜花賞。昨年の阪神JFを制し最優秀2歳牝馬に選ばれたアルマヴェローチェ、デビュー2連勝でフェアリーSを制したエリカエクスプレス、クイーンCの1着馬エンブロイダリーが上位人気となりそうだ。そこで今回はこの3頭を比較し、どの馬が今回の舞台に向いているかを調べていく。

エピファネイア産駒は3頭がGⅠ制覇を達成

まずは2020年2月29日から2025年3月30日までに阪神競馬場の芝のレースで行われた種牡馬別成績をみていく。

阪神芝コース 3頭の種牡馬成績,ⒸSPAIA


<阪神芝コース 3頭の種牡馬別成績>
ハービンジャー産駒(アルマヴェローチェ)
【28-24-50-368】勝率6.0%/連対率11.1%/複勝率21.7%
エピファネイア産駒(エリカエクスプレス)
【53-66-60-461】勝率8.3%/連対率18.6%/複勝率28.0%
アドマイヤマーズ産駒(エンブロイダリー)
【1-0-0-3】勝率25.0%/連対率25.0%/複勝率25.0%
集計期間:2020年2月29日~2025年3月30日

ハービンジャー産駒は28勝をあげているが勝率は6.0%と振るってはいない。これは自身の成績において、中央競馬全10場の中でブービーの数値となっている(ワーストは福島競馬場の勝率4.0%)。

とはいえ、勝ち星の半数以上は1勝クラスより上の舞台でマークしており、ナミュールが2022年のチューリップ賞、サマーセントが2020年のマーメイドSを制するなど重賞制覇も成し遂げているので、まるっきり苦手とは言い難い結果となっている。

エピファネイア産駒は53勝をマークしており、全体ランキング6位の成績となっている。GⅠではステレンボッシュとデアリングタクトが桜花賞、サークルオブライフが阪神JFを制しており大舞台の成績も十分だ。

アドマイヤマーズ産駒は昨年デビューしたばかり。まだまだ、これから傾向が分かってくるかと思うが、現状の距離別成績を紐解いてみたい。

アドマイヤマーズ産駒は今のところ距離の壁を感じさせない

アドマイヤマーズ産駒がデビューしたのは2024年6月2日。以降、芝のレースでは1200mから2400mまでの距離に出走し、距離別成績は下記のようになっている。

アドマイヤマーズ 芝の距離別成績,ⒸSPAIA


<アドマイヤマーズ産駒 芝の距離別成績>
1200m【2-0-1-10】勝率15.4%/連対率15.4%/複勝率23.1%
1400m【7-3-1-15】勝率26.9%/連対率38.5%/複勝率42.3%
1500m【0-0-0-3】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
1600m【6-6-1-34】勝率12.8%/連対率25.5%/複勝率27.7%
1800m【4-1-2-12】勝率21.1%/連対率26.3%/複勝率36.8%
2000m以上【1-1-2-20】勝率4.2%/連対率8.3%/複勝率16.7%
集計期間:2024年6月2日~2025年3月30日

初年度から勝ち星を量産しており上々のデビューといえよう。アドマイヤマーズ自身はダイワメジャー産駒で、2018年の朝日杯FS、2019年のNHKマイルC、香港マイルと国内外のマイルGⅠを3勝しているが、2000mの皐月賞で4着、1800mの共同通信杯で2着など決して距離に限界を感じさせるタイプではなかった。

これは産駒にも伝わっているようで、20勝中5勝を1800m以上の距離でマークしている。1600m戦での勝率が少々物足りないのは気がかりではあるが、距離の壁を感じさせないことはスピードだけでは乗り切れない桜花賞の舞台を考えれば好材料なのではないだろうか。

ちなみに、牡・セン馬の成績が【6-4-6-40】勝率10.7%に対し、牝馬は【14-7-1-54】勝率18.4%と差があることも特徴的だ。

ハービンジャー産駒は大舞台で苦戦中

次に、阪神競馬場での1600m戦のみに絞って掘り下げてみていく。

阪神芝1600m 3頭の種牡馬成績,ⒸSPAIA


<阪神芝1600m 3頭の種牡馬別成績>
ハービンジャー産駒(アルマヴェローチェ)
【6-5-9-74】勝率6.4%/連対率11.7%/複勝率21.3%
エピファネイア産駒(エリカエクスプレス)
【17-18-19-138】勝率8.9%/連対率18.2%/複勝率28.1%
アドマイヤマーズ産駒(エンブロイダリー)
【0-0-0-2】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
集計期間:2020年2月29日~2025年3月30日

ハービンジャー産駒の勝率6.4%は一見すると低いように思えるかもしれないが、距離別でみると3番目に高い数字となっている(1位は2200mの勝率13.3%、2位は1400mの10.9%)。

気になるのは2020年以降、阪神のマイルGⅠにおいて人気を背負ったナミュールやチェルヴィニア、プレサージュリフトなど含め、8回挑戦して最高着順はナミュールが2021年の阪神JFで記録した4着だったことだ。

2014年まで遡っても、阪神のマイルGⅠでの最高着順は4着。1頭も馬券に絡めていないということはマイナス評価となってくる。

エピファネイア産駒は勝率こそ8.9%と高くはないが、阪神競馬場で一番勝ち星を量産している距離がマイル戦。GⅠの舞台での活躍は先に紹介済みの通りで、近年だけでも3勝をマークしている。

アドマイヤマーズ産駒はまだまだサンプルが足りない状況。とはいえ、父は2018年にこの舞台で朝日杯FSを制し2020年のマイルCSで3着に好走しているだけに、産駒にも期待して良いのではないだろうか。

岩田望来騎手は阪神競馬場で良績を残している

次に3名の騎乗予定騎手が阪神競馬場でどのような成績を残しているのかみていく。

阪神芝コース 3頭の騎乗予定騎手成績,ⒸSPAIA


<阪神芝コース 3頭の騎乗予定騎手成績>
岩田望来騎手(アルマヴェローチェ)
【72-68-76-416】勝率11.4%/連対率22.2%/複勝率34.2%
戸崎圭太騎手(エリカエクスプレス)
【5-6-8-42】勝率8.2%/連対率18.0%/複勝率31.1%
J.モレイラ騎手(エンブロイダリー)
【3-5-0-12】勝率15.0%/連対率40.0%/複勝率40.0%
集計期間:2020年2月29日~2025年3月30日

アルマヴェローチェに騎乗予定の岩田望来騎手は全体ランキングで3位の好成績をマーク。勝率は100走以上している競馬場のなかでは3位で良い数字を残している(1位は中京競馬場の勝率14.7%、2位は京都競馬場の勝率12.0%)。思い返せば重賞初勝利もここ阪神競馬場だった。

エリカエクスプレスに騎乗予定の戸崎圭太騎手は5勝をマーク。うち1勝は2021年の秋華賞で、アカイトリノムスメとのGⅠ勝利となっている。とはいえ東京、中山、新潟、福島などの芝のレースでは勝率が14.6%以上になっていることや、現在のリーディング順位を考えるとやや物足りない数字ということは否めない。

エンブロイダリーに騎乗予定なのはJ.モレイラ騎手。3勝はステレンボッシュ(桜花賞)、マスクトディーヴァ(阪神牝馬S)、ディスペランツァ(アーリントンC)と、すべて昨年の重賞にてテン乗りでマークしているのだから驚くばかりだ。エンブロイダリーはデビュー戦ですでに手綱をとった経験もあり、より期待が高まる。

J.モレイラ騎手の重賞での勝負強さが光る

もう少し掘り下げて、芝1600mに絞って成績をみていく。

阪神芝1600m 3頭の騎乗予定騎手成績,ⒸSPAIA


<阪神芝1600m 3頭の騎乗予定騎手成績>
岩田望来騎手(アルマヴェローチェ)
【16-17-16-112】勝率9.9%/連対率20.5%/複勝率30.4%
戸崎圭太騎手(エリカエクスプレス)
【2-0-1-13】勝率12.5%/連対率12.5%/複勝率18.8%
J.モレイラ騎手(エンブロイダリー)
【3-0-0-3】勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%
集計期間:2020年2月29日~2025年3月30日

岩田望来騎手は騎乗回数が多いということもあるのだが、阪神コースで一番多くの勝ち星を積み上げているのが1600m戦と1800m戦だ。課題として16勝のうちオープン以上はリステッド競走の2勝だけで、他14勝はすべて3勝クラス以下という点が挙げられる。重賞では【0-2-0-25】と不振。大舞台での成績がまだ伴っていない点が気がかりである。

戸崎圭太騎手の2勝は未勝利戦。重賞では8戦し6着が最高となっている。気になって最後に阪神のマイル重賞を制したのはいつか調べてみたところ、2013年にレッドリヴェールと制した阪神JFまで遡ることとなり、この1勝だけなのは意外だった。このことを考えると不安が高まるのが本音である。

J.モレイラ騎手の3勝は先に紹介した重賞であげたもの。馬券圏外になった3走はいずれも条件戦だった。重賞に騎乗した際の勝率が3走とはいえ100%なのだから、ここ一番の勝負強さには舌を巻くばかりだ。

エンブロイダリーが一歩リード

アルマヴェローチェは昨年の最優秀2歳牝馬、エリカエクスプレスはフェアリーSで従来のレコードを0秒9も短縮するパフォーマンス、エンブロイダリーもクイーンCをレースレコード勝ちと、どの馬も素晴らしい走りを見せて桜花賞へ挑んできた。

種牡馬実績と騎手成績とで比較すると、桜花賞の舞台に一番適しているのはエンブロイダリーといえるのではないだろうか。アドマイヤマーズ産駒の適性は未知数のところはあるが、距離の幅もありそうで何よりJ.モレイラ騎手が2度目の騎乗ということが心強い。

エリカエクスプレスはエピファネイア産駒の阪神実績は申し分ないのだが、戸崎圭太騎手の阪神マイル重賞での不振がどうしても強く推せない要因になっている。

アルマヴェローチェは岩田望来騎手の当舞台での重賞成績が芳しくなく、そしてハービンジャー産駒が阪神のマイルGⅠで苦戦していることが気がかりとなる。その点を考慮すると減点の少ないエンブロイダリーが一歩リードと考えたい。

桜花賞有力馬3頭の成績,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
高橋楓
秋田県出身。サクラローレルの馬体の美しさに魅せられて競馬の世界に惹きこまれる。他に好きな馬はホクトベガ、サイレンススズカ。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

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