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丸山茂樹が語る、参加費&プレー代すべて無料のジュニアゴルフ大会を開催する理由

2022 4/3 06:00森伊知郎
右から丸山茂樹代表理事・高校男子の部優勝の小林翔音選手・内藤雄士理事・競技委員長の横尾要,丸山茂樹ジュニアファンデーション提供
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丸山茂樹ジュニアファンデーション提供

2000年に設立「丸山茂樹ジュニアファンデーション」

米PGAツアーで通算3勝、日本ツアーでも10勝のプロゴルファー丸山茂樹が主催するジュニアゴルフ大会が3月28日に千葉・浜野ゴルフクラブで開催された。

国内では日本ゴルフ協会(JGA)、高校ゴルフ連盟(高ゴ連)を筆頭に多くの団体がジュニアゴルフ大会を開催しているが、「丸山茂樹ジュニアファンデーション」では2000年の開始以来、全ての大会やイベントで参加費とプレー代はいずれも無料の方針を貫き通している。その理由と意義について丸山がSPAIAの取材に答えてくれた。

「ジュニアファンデーションを設立したきっかけは1998年の『プレジデンツ・カップ』でした。出場選手に支払われる『ドネーション・フィー』はどこに支払えばいいのか?と聞かれたんです」(丸山)。

2年に一度、米国選抜VS世界選抜の対抗戦として行われる「プレジデンツ・カップ」に、丸山は世界選抜の一員として出場し、5戦全勝の成績でチームの勝利に貢献。大会のMVPに選ばれた。プレーで大活躍した一方でこの時初めて、海外の主要選手は社会貢献やジュニア育成のための基金や財団を設立し、フィーはそこに寄付の形で支払ってもらっていることを知ったという。

「同い年のアーニー・エルスも子供たちを育てる取り組みをしているのに自分は遅れているな、と。ちょうど30歳近くになって自分のゴルフ以外のこともしっかり取り組みたいと思い始めていた時期でもあったので、すぐにジュニア育成のための組織を作る準備を始めたんです」と自身の名を冠したジュニアファンデーションを設立した経緯を明かす。

参加費とプレー代の全てを無料にしている理由については「世の中の人の9割は『ゴルフは高額、高貴なものだと思っているのではないでしょうか。でもやり方次第では『ゴルフはお金がかかる』というイメージを払拭できるのではないかと思ったためです。実際に松山英樹や渋野日向子といった、すごいお金持ちのお坊ちゃん、お嬢さんではない家庭の子供が世界のメジャーを制していますし』と説明した。

西郷真央や中島啓太らも「卒業生」

同ファンデーションでは子供たちにゴルフの楽しさを知ってもらうイベントを2000年に開始。2010年からはジュニアに多くの試合経験を積んでもらうことを目的に大会を開催するようになり、歴代参加者には今季の日本女子ツアーですでに2勝を挙げてメルセデスランキングトップを走る西郷真央、昨年は男子ツアーの「パナソニック・オープン」で優勝し「アジア・アマチュア選手権」を制して来週の「マスターズ」にも出場する中島啓太、さらには注目のルーキー、岩井明愛&千怜の双子姉妹なども名を連ねている。

大会やイベントは当初、丸山がオーナーだった栃木県のファイブエイト・ゴルフクラブで開催されていたため、プレー代を無料にすることは難しくなかった。だが同GCは2016年に閉場。以後は大会開催にあたってはどこかのコースを借り、そこで選手たちがプレーするための費用が発生するようになった。

それでも参加するジュニアたちからはお金を取らないポリシーを貫くためにファンデーションの負担は大きくなったものの「ジュニアの育成、ということになると前向きなスポンサーが増えてきているんです。お陰様でスポンサーさんたちからの援助は増えています」(丸山)。

また今年からアマチュア規定が改訂され、アマチュアゴルファーが費用の援助を受けることが可能になった。これに伴い3月の大会で優勝したことによって得られた男子のABEMAツアーと女子ツアーのマンデー予選会出場のためにかかる費用の一部をサポートする。さらに「例えば地方から大会に出場したいとなった場合に交通費を負担してあげたりできれば、と考えています」(丸山)

国内には数多くのジュニアゴルフ大会を開催する団体が存在する。それぞれに登録して大会に出場するためには数千円~1万円程度の年会費に加え、大会毎に5000円前後の参加料、さらにラウンド毎に土日祝日だと1万円を超えるプレー代が必要になることもある。

これを毎週のように繰り返していたら費用はバカにならない。そうした現状では、例えば参加費とプレー代の合計を2000~3000円程度に設定しても“割安”と感謝されそうなもの。それでも年に3-4回ほど開催される大会やイベントを参加無料にすることにこだわるのは、PGAツアーにも参戦して米国などの恵まれたジュニア育成の環境を見てきている丸山ならではの哲学だ。

サッカー、バスケ、野球に比べて圧倒的に少ないゴルフのジュニア人口

大会を開催してジュニアゴルファーに少しでも多くの実戦の場を提供するとともに、コロナ禍の現在は開催できていない初心者を対象としたイベントを再開することでゴルフ人口を増やしたい、という思いもある。

ジュニア世代の競技人口を比べると、ゴルフは高ゴ連に登録している中高生の人数が約4500人(2019年)。6~18歳が対象のJGAジュニア会員は8335人(2021年)となっている。

これを他の“メジャー種目”ではサッカーが約39万人。バスケットボールは約31万人で陸上競技は約30万人が登録している。部員がほぼ男子だけの高校野球連盟の部員登録数も13万人を超えている。高ゴ連やJGAに登録していないエンジョイ志向のゴルファーもいるとはいえ、差は歴然としている。

だが、この数字にも丸山は「そんなものかな、と思います」と驚かなかった。それだけでなく「中高生で39万人いるサッカーも、成人したら続ける人数は100分の1とかになっているのではないでしょうか。それに対してJGAや高ゴ連に登録しているゴルファーは9割以上が続けていると思う。それをいかに増やしていくかが大事です。松山、渋野、笹生(優花)がメジャーで優勝し、稲見萌寧が東京オリンピックで銀メダルを取った。このいい流れを逃さないために、子供や親御さんの心をいかに取り込むかが大事ですね」。

松山英樹や渋野日向子のようになるために必要なこととは?

4月から新年度になったことで子供や孫の進学を機にゴルフをやらせてみたいと思っている人、あるいは自分で始めてみたいと思っている人もいるだろう。将来は松山や渋野のようになってほしい、なりたいと思う時に心がけるべきことは何なのかを丸山に聞いてみた。

「フェアウェーのターフを取ったり、グリーンにボールマーク(落下の衝撃による凹み)を作った時は自分のものを直すのはもちろんですけど、気がついたら近くのものを2~3個直しておく。バンカーは後続の人のことを考えてならしておく。ショットやパットの時は打つ人が気になる場所に立たない。トイレの洗面所は使った後に濡れた所をひと拭きしておく、といったことですかね。これはジュニアに限らず全てのゴルファーに当てはまることですけど。ゴルフは元々が紳士淑女のスポーツですから」。

周りへのちょっとした気遣いの意識を持つことはゴルフに限らず日常の全ての場面で役に立つ行いだ。ゴルフをやらせて、やって良かったと思える、あるいは思われるようになりたいものだ。

《ライタープロフィール》
森伊知郎(もり・いちろう)横浜市出身。1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社でゴルフ、ボクシング、サッカーやバスケットボールなどを担当。ゴルフではTPI(Titleist Performance Institute)ゴルフ レベル2の資格も持つ。

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