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羽生結弦、前人未到の4回転半初挑戦で示した北京五輪3連覇への決意

2021 12/27 17:00田村崇仁
羽生結弦,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

今季初戦の全日本で2年連続6度目V

前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)への初挑戦は惜しくも成功とはならなかったが、94年ぶりの3連覇が懸かる北京冬季五輪への強い決意が表れた。

フィギュアスケートの北京冬季五輪代表最終選考会を兼ねた全日本選手権は12月26日、さいたまスーパーアリーナで行われ、今季初戦となった27歳の絶対王者、羽生結弦(ANA)がショートプログラム(SP)に続いてフリーも211.05点の1位となり、合計322.36点で2年連続6度目の優勝を果たした。

世界中が注目した夢の4回転半ジャンプは高々と舞い上がり、軸も作ったが、両足着氷となって判定はダウングレード。回転がやや足りず、出来栄え点(GOE)は3.89点の減点だった。それでもその後は2種類の4回転を計3度成功させるなどジャンプを全て決める圧巻の演技を披露。フィニッシュを決めると、観客のスタンディングオベーションを浴びて五輪代表に決まった。

SP2位の宇野昌磨(トヨタ自動車)がフリー3位の合計295.82点で2位。SP3位の18歳、鍵山優真(オリエンタルバイオ・星槎)がフリー2位の合計292.41点で3位に入った。

自らの「使命」、夢へ近づく大きな一歩

アクセルジャンプとはそもそも唯一、前向きに跳ぶ分、ほかのジャンプより半回転多く、6種類のジャンプの中で最も難易度が高い。羽生は「アクセルは王様のジャンプ」との言葉を胸に秘め、世界初の成功を目指すクワッドアクセルを自らの「使命」とも表現する。

ジャンプの基礎点は採点規則で最高点の「12.5」の超大技。2季連続のフリー「天と地と」の冒頭1本目のジャンプに投入した4回転半は国際スケート連盟(ISU)公認大会での初成功こそお預けとなったものの、公式戦で初めて試せたことは夢へ近づく大きな1歩となったのは間違いない。ジャンプの浮き上がりと軸には羽生らしい美しさがあり、成功への可能性も感じさせた。

心身ともに消耗を伴う超大技はダメージが残ってもおかしくないところだが、そこは五輪王者の貫禄だ。その後も琵琶や三味線などの音色に悠々と乗って崩れることなく立て直し、サルコーとトーループの3本の4回転などを美しく決めた。

スピンやステップも全て最高評価のレベル4。優勝インタビューでは「本当にホッとしています。とにかくアクセルは難しいですけど『天と地と』のプログラムをリスペクトしてできたので良かったです」と振り返った。

SPは表現力を示す音楽の解釈「10点満点」

全日本の羽生はSPでもISU非公認ながら今季世界最高得点を上回る111.31点をマークし、別次元の存在感を見せつけた。初めて演じた「序奏とロンド・カプリチオーソ」。冒頭の4回転サルコーで出来栄え(GOE)で4.57点もの加点を引き出し、3度のスピンとステップは全てレベル4でそろえた。

圧倒的な技術の高さだけでなく、表現力を示す5項目の演技構成点でも異次元の数字を連発。特に「音楽の解釈」は10点満点で、審判9人中8人が10点満点をつけたのは周囲を驚かせた。

5項目合計では49.03点をマーク。世界的ピアニストの清塚信也氏が編曲を手掛けたSP曲の音色と一体化した演技は満員の観客を魅了した。

始まった羽生物語、北京へ続く挑戦

羽生は4回転半ジャンプの挑戦を「僕だけのジャンプじゃない」と国民の期待を背負い、時にはけがにも見舞われながら、習得に挑んできた。

3連覇が懸かる五輪で夢の4回転半成功へ―。そんな夢の実現こそが、羽生の最大のモチベーションだ。ハードルが高いことは覚悟の上。そして戦国の「最強武将」上杉謙信を演じる「天と地と」への思いは誰よりも強い。

「腹をくくった」と出場への意志を固めた北京五輪開幕まで1カ月余り。羽生の「物語」は既に始まっている。前人未到のジャンプへの夢の挑戦は北京へと続いていく。

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