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フィギュアスケート女子歴代五輪金メダリスト、北京は15歳ワリエワ最有力

2022 1/2 06:00田村崇仁
トリノ五輪で金メダルに輝いた荒川静香,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ワリエワは「最高傑作」、ロシア勢が表彰台独占の可能性も

空前の4回転時代に突入したフィギュアスケート女子は近年、ロシア勢が世界を席巻する。ジャンプの進化が加速し、2022年2月の北京冬季五輪で金メダルの最有力候補とされるのが今季シニアデビューした大国ロシアの「最高傑作」と称されるカミラ・ワリエワだ。

サルコーとトーループの4回転やトリプルアクセル(3回転半)を自在に操り、長い手足を生かした表現力も卓越。空中で両手を挙げる「タノジャンプ」と呼ばれるスタイルで世界最高得点を連発し、同じ15歳で前回の2018年平昌冬季五輪を制したアリーナ・ザギトワ(ロシア)以上の勢いと実力がある。

前回の平昌五輪まで4回転やトリプルアクセルがなくとも頂点に立てたが、ロシア勢は複数種類の4回転を駆使する世界選手権女王のアンナ・シェルバコワやアレクサンドラ・トルソワら有力選手も続々と輩出。日本勢は4回転サルコーや3回転半を武器にするエースの紀平梨花(トヨタ自動車)が右足首負傷で北京への道を断念した。

坂本花織(シスメックス)らが持ち前の豪快なジャンプと表現力、完成度で勝負に挑むが、北京五輪はロシア勢が表彰台を独占する可能性もある。

五輪初代女王は英国のマッジ・サイアーズ

フィギュア女子の歴史をさかのぼると、競技としてデビューした1908年ロンドン五輪で初代女王に輝いたのは地元英国のマッジ・サイアーズだった。男子のみの大会だった常識を覆し、1902年世界選手権の「男子シングル」に女子で初めて出場した「女性アスリートの先駆者」としても知られている。

当時の五輪は混合ペア、男子シングル、女子シングル、男子スペシャルフィギュアの4種目が行われ、場所はナイツブリッジ・クラブ。開拓者のサイアーズは夫と組んだ混合ペアで銅メダル、女子シングルでも金メダルに輝き、後世に女性スポーツの道を切り開く功績を残した。

フィギュアスケート女子シングル歴代五輪金メダリスト

五輪3連覇のレジェンド、ソニア・へニー

女子で冬季五輪3連覇したレジェンドといえば、ソニア・へニー(ノルウェー)だろう。1928年サンモリッツ大会を15歳10カ月の若さで初制覇し、1932年レークプラシッド大会、1936年ガルミッシュ・パルテンキルヘン大会と3大会連続金メダル。世界選手権でも10連覇の偉業を達成した。

引退後は米ハリウッドに移住し、女優としても活躍した。日本のエース羽生結弦(ANA)が北京五輪で3連覇を達成すれば男子のギリス・グラフストレーム(スウェーデン)、女子のへニーという伝説の選手に並ぶ快挙となる。

2連覇した「氷の妖精」カタリナ・ビット

旧東ドイツ代表で1984年サラエボ、1988年カルガリー両冬季五輪を2連覇したのが「氷の妖精」と呼ばれたカタリナ・ビット。女優のブルック・シールズにたとえられた美しさと、銀盤で独特の世界観をつくり上げる優美な演技で観客を引き込んだ。

今も語り継がれるのがプロのアマチュア競技会復帰が認められた1994年リレハンメル冬季五輪。フリーで反戦歌「花はどこへ行った」を選び、紛争で破壊された思い出の地、サラエボへ平和のメッセージを込めて演じきった。

7位に終わったが、兵士の流した血をイメージした赤いコスチュームでの演技は深い感銘を残した。

長野五輪で最年少Vのタラ・リピンスキー

1998年長野冬季五輪を15歳8カ月で制し、最年少優勝記録を塗り替えたのは「天才少女」と呼ばれたタラ・リピンスキー(米国)だった。身長147センチ、体重35キロの華奢な体で連続ジャンプを次々と成功し、同じ米国のライバル、2歳年上のミシェル・クワンとの注目の「10代対決」を制した。

スピード感あふれるはつらつとした演技の間、終始笑顔が絶えない。表彰式を終えたリピンスキーは「表彰台に一晩中、立っていたい」と喜びを表現。大会後は五輪連覇の夢を捨て、プロ転向を表明して新たな生活を歩んだ決断も話題を呼んだ。

トリノ五輪は荒川静香が日本勢初の金メダル

2006年トリノ冬季五輪で不振が続いた日本選手団の救世主となったのが当時24歳の荒川静香だった。

ショートプログラム(SP)3位から逆転を期した勝負のフリーは地元イタリアの歌劇「トゥーランドット」。長い手足を生かした美しく、エレガントな滑りで観客を虜にし、上体を反らせて銀盤を横断する代名詞「イナバウアー」からの3回転―2回転―3回転の鮮やかな3連続ジャンプを決めると、逆転の金メダルに輝いた。

五輪のフィギュアでアジア選手の優勝は史上初の快挙で、日本選手団の大会第1号メダルともなった。

SP1位のサーシャ・コーエン(米国)が2位、イリーナ・スルツカヤ(ロシア)は転倒が響いて3位。全米女王も世界女王も打ち破り、欧米が独占してきた五輪フィギュアスケートの歴史を塗り替える金字塔だった。

バンクーバー五輪は金姸児と浅田真央の対決

2010年バンクーバー冬季五輪は歴史に残る日韓対決だった。

金姸児が映画「007」シリーズの音楽でボンドガールを演じきり、SPを首位発進。ガーシュインのピアノ協奏曲で滑ったフリーでも切れ味鋭い滑りに乱れはなく、連続3回転をはじめ流れるようなジャンプを次々に決め、驚異的な合計228.56点で自身の世界最高を更新した。

ジュニア時代からのライバル、浅田真央は代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を2度決めて自己ベストを更新したが、悔し涙の2位と明暗が分かれた。

平昌五輪金メダルはロシアの新星ザギトワ

2014年ソチ冬季五輪はアデリナ・ソトニコワが金メダルで金姸児を抑え、2018年平昌大会は国ぐるみのドーピング問題のため個人資格の「ロシアからの五輪選手(OAR)」として出場したザギトワが制した。

トゥトベリゼ・コーチの下で急成長したザギトワはバレエを思わせる華麗な表現力と2連続3回転で最高難度のルッツ―ループなど高難度のジャンプを次々と成功させ、同国の先輩でライバルのエフゲニア・メドベージェワを振り切った。

世界ジュニア選手権女王としてシニアにデビューしたロシアの新星が4回転の大技はなくても、技術と表現力の高さで五輪史にその名を刻んだ。

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