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ボクシング世界ウェルター級王座に挑んだ日本人選手たち、未踏の頂を狙う佐々木尽

2023 4/29 06:00SPAIA編集部
佐々木尽,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

「日本ウェルター級最強」証明した佐々木尽

プロボクシングではミニマム級からヘビー級まで17階級(WBCのみ18階級)あり、日本では事実上、最重量級のミドル級までの13階級のうち12階級で世界王者が誕生している。

唯一、世界の頂に届いていないのがウェルター級だ。リミット147ポンド(66.68キロ)のこのクラスは、スピードとパワーを兼ね備えた外国人選手の層が厚く、これまでも今もスーパースターやビッグファイトが数多い。

3階級制覇してウェルター級では19度防衛したヘンリー・アームストロング、全階級を通じて史上最高のボクサーとも言われるシュガー・レイ・ロビンソン、ともに5階級制覇を果たしたシュガー・レイ・レナードとトーマス・ハーンズ、オスカー・デラホーヤ対フェリックス・トリニダードや、マニー・パッキャオ対フロイド・メイウェザー・ジュニアのスーパーファイトもウェルター級だった。

そして今、日本ボクシング界の期待を一身に受けているのがWBOアジアパシフィックウェルター級王者・佐々木尽(21=八王子中屋)だ。

何と言っても最大の武器と魅力は破格のパンチ力。ここまで15勝(14KO)1敗1分けと高いKO率を誇り、4月8日には「日本ウェルター級の頂上決戦」と言われた小原佳太(36=三迫)戦で見事な3回TKO勝利を収め、ウェルター級最強を証明した。

世界ランキングもWBA10位、WBC20位、IBF9位、WBO11位まで上昇。まだ21歳と若く粗削りな部分も多いため、世界挑戦にはもう少し時間がかかるが、いずれは世界ウェルター級王座に挑むだけでなく、日本で初めての世界ウェルター級王者となることが期待されている。

辻本章次、龍反町がKO負け

日本では重量級に分類されるウェルター級では、世界タイトルに挑戦したボクサーすら少ない。初めて挑んだのは辻本章次(ヨネクラ)だった。

近畿大学で100戦以上のアマチュアキャリアを持ち、ヨネクラジムからプロ転向。1974年に元世界スーパーライト級王者エディ・パーキンス(アメリカ)に判定勝ちして世界ランク入りすると、1976年10月にWBAウェルター級王者ホセ・クエバス(メキシコ)に挑んだものの6回KO負けを喫した。

クエバスはその後、11度まで防衛回数を伸ばし、うち10度はKO勝ちという強打の名王者。そのクエバスから王座を奪ったのがトーマス・ハーンズだった。

1978年2月には龍反町(野口)がカルロス・パロミノ(メキシコ)に挑戦。反町は日本ウェルター級王座、東洋ウェルター級王座を奪った後、1階級上のスーパーウェルター級世界王者だった輪島功一(三迫)とオスカー・アルバラード(アメリカ)に挑んで敗れていた。

迎えた3度目の世界挑戦。当時30歳の反町は日本人として初めてアメリカ・ラスベガスのリングに立ったが、パロミノに7回KO負け。翌1979年に東洋王座の防衛戦で敗れて引退した。

世界ウェルター級王座に最も近付いた尾崎富士雄

1980年代後半、世界ウェルター級王座に近付いたのが尾崎富士雄(帝拳)だった。全日本新人王決定戦では現在、俳優として活躍している赤井英和に敗れたものの、1985年に13度防衛していた串木野純也(進光)を判定で下し、日本ウェルター級王座を奪取。1988年2月、アメリカでWBAウェルター級王者マーロン・スターリング(アメリカ)に挑戦した。

果敢に攻め込んだ尾崎は最終12回にパンチをクリーンヒットして王者のマウスピースを吹き飛ばすなど大善戦。惜しくも判定で敗れたが、日本人が最も世界ウェルター級王座に近付いた試合だったかも知れない。

尾崎は1988年に東洋太平洋王座を獲得し、1989年には東京・後楽園ホールでマーク・ブリーランド(アメリカ)が持つWBAウェルター級王座に挑戦。リーチの長い王者に中に入らせてもらえず、4回TKO負けを喫してグローブを吊るした。

佐々木基樹はウクライナで判定負け

その後長らく世界ウェルター級は縁遠いタイトルだったが、2009年に挑んだのが佐々木基樹(帝拳)だった。日本スーパーライト級王座、東洋太平洋ウェルター級王座を獲得し、2009年10月にウクライナでWBAウェルター級王者ビチェスラフ・センチェンコ(ウクライナ)に挑戦。大差の判定で敗れた。

その後、佐々木は東洋太平洋スーパーライト級王座を奪い、2011年6月にはメキシコでWBCライト級王者ウンベルト・ソトに挑んだものの負傷判定負け。プロで55戦の激闘を繰り広げたが、世界王座には届かなかった。

現在の世界ウェルター級王座はWBA・WBC・IBFの3団体統一王者エロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)とWBO王者テレンス・クロフォード(アメリカ)とともに無敗の強い王者が君臨している。日本のホープ、佐々木尽の世界王座への道のりは険しいだろう。

それでも一発強打で試合をひっくり返す力を秘める佐々木なら、ひょっとして…という期待を抱かせる。近い将来、日本人初の世界ウェルター級王者が誕生するか注目だ。

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