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井岡一翔がフランコとの再戦で負けられない2つの理由「挑戦者」と「PPV」

2023 4/28 06:00SPAIA編集部
井岡一翔,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

6月24日に大田区総合体育館でWBA王座挑戦

プロボクシングの前WBO世界スーパーフライ級王者で現WBA6位の井岡一翔(34=志成)が6月24日に東京・大田区総合体育館でWBA同級王者ジョシュア・フランコ(27=アメリカ)に挑戦する。

両者は2022年大晦日に統一戦を行いドロー。WBOは同級1位だった中谷潤人(25=M.T)との指名試合を指令したが、井岡はフランコとのダイレクトリマッチにこだわってWBO王座を返上し、今回は挑戦者としてリングに立つ。

中谷は元WBOフライ級王者で、24戦全勝(18KO)の戦績を誇る長身サウスポー。井岡がベルトを返上した際には「中谷から逃げた」などと批判の声も挙がったが、4月24日に行われた会見で井岡はこう説明した。

「ダイレクトリマッチじゃないと意味がない。一戦挟むことによって展開が変わってくる。リマッチする意味が薄れるし、見てる方も見方が変わる。お互いの結果次第で実現しないかも知れないので、大晦日の続きを次戦でやることに意味を感じている」

つまり、井岡が中谷と指名試合に勝ってからフランコとの再戦を望んだとしても、フランコが次の試合で他の相手に負けてしまう可能性があるということだ。もちろん、井岡自身は認めないだろうが、井岡が中谷に負けるリスクも当然ある。決着をつけたいという熱い炎が燃え盛るうちにリマッチを実現したかったという気持ちに嘘はないだろう。

敗れれば世界戦線から転落のリスク

ただ、井岡自身が話しているように、王座返上には大きなリスクがつきまとう。当然ながら、前回のようにドロー決着だと王者の防衛となる。

さらに、もし敗れた場合、世界ランキング10位以内から陥落する可能性も高く、再び挑戦する機会が巡ってくるか分からない。井岡は現在、WBA6位にランクされており、勝つ以外に世界戦線で生き残る方法はないと言っても過言ではないのだ。

「返上するリスクはあったけど、またチャンピオンになる姿をお見せしたいと思った。自分の立場を理解しながら覚悟を持って挑まないといけない。負けたら引退というより、続けられないかも知れないという恐怖、不安の中で戦う。自分自身に打ち勝って必ずチャンピオンになりたい」

ゆっくりと丁寧に言葉を選びながら話す姿には相当な覚悟がにじむ。「自分自身の気持ちは特に変わらない」とベルトの有無で心境の変化はないことを明かしたが、負けられないという意味では前回よりプレッシャーがかかったとしても不思議ではない。

ペイパービューで明らかになる「商品価値」

試合展開は、両者が戦い方を変えない限り前回同様、競った内容になるだろう。18勝(8KO)1敗3分け1無効試合のフランコは手数が多いものの、パワーはない。前進する王者を29勝(15KO)2敗1分の井岡がどうさばくか。カウンターを決めてノックアウトできれば最高だが、判定まで持ち込まれる可能性も十分にある。

今回の試合でもうひとつのトピックがABEMAでペイパービュー配信される点だ。近年のボクシング中継は動画配信が主流になっているが、井岡の試合だけは地上波のTBS系列で生中継されてきた。

それが今回は動画配信の上、ペイパービューという有料視聴方式。ABEMAは「ボクシングチャンネル」を新設するなどボクシング中継に力を入れているが、重岡優大と銀次朗兄弟が世界ミニマム級王座を奪った4月16日は無料配信だった。

2011年にWBCミニマム級王座を奪ってから12年間も世界トップクラスで戦ってきた井岡の知名度があれば、有料でも商売になるとソロバンを弾いたのだろう。いわば、今回は井岡の「商品価値」が問われる一戦でもあるのだ。

今後はアメリカ・ラスベガスでトレーニングを積むという井岡。自身がトップ戦線に残るためにも、お金を払ってでも観たいというファンの期待に応えるためにも、無様な姿を見せるわけにはいかない。プロ32戦目はボクサー人生を懸けた大一番となる。

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