直球とフォークだけで打ち取る宇田川優希
日本シリーズでオリックスの2人が剛腕が存在感を放っている。宇田川優希と山﨑颯一郎だ。
ともに1998年生まれの同学年。10月26日の第4戦では先発・山岡泰輔の後を受けて登板した宇田川が1.2回で4三振を奪い、3番手の山﨑は2回をパーフェクトに抑えてチームの今シリーズ初勝利に貢献した。
宇田川は八潮南高から仙台大を経て2020年育成3位でオリックスに入団。身長184センチ、体重92キロの恵まれた体格で、ストレートの球速は平均で150キロを超えている。スライダーも投げるが、投球割合の90%以上はストレートとフォークのみ。類まれなストレートの球威とフォークの落差で、相手打者は分かっていても打てないのだ。
ストライクゾーンを9分割したゾーン別の被打率は以下の通りとなっている(左は対左打者、右は対右打者)。
対右打者、対左打者ともに投球割合15%以上を示す赤色は2つ、投球割合7%未満を示す青色も2つしかない。コントロールの良い投手なら外角低めや四隅が赤色に染まることが多いのだが、宇田川は良くも悪くもバラけているのだ。
例えば右打者の場合、最も多い外角低めでも15.1%(被打率.200)で、外角高めの10.1%、真ん中高めの13.7%、内角高めの12.9%とそれほど変わらない。高めの場合、捕手のサイン通りに狙って投げた場合と指にかからなかった場合があるが、宇田川はいわゆる「荒れ球」で打者の狙いを絞らせていないのだろう。高めは3コースとも被打率.000と全く打たれていない。
左打者に対しても、18.5%で最も高い外角低め(被打率.167)に次いで多いのが、真ん中高め(被打率.200)。横に曲がる変化球をほとんど投げないこともあって、「高低」で攻めるのが定石となっている。
来季以降もセットアッパーを継続するか、あるいはクローザーも務まりそうだが、いずれにしてもカーブのような緩い変化球をひとつ覚えれば投球の幅が広がるだろう。
しなやかなフォームの長身右腕・山﨑颯一郎
山﨑は敦賀気比高から2016年ドラフト6位で入団した6年目右腕だ。190センチの長身から投げ下ろすストレートは平均150.8キロ。フォーク、カーブ、スライダーと球種は多くないが、力みのない、しなやかなフォームから力強いボールを投げる。
高校時代は1学年上のエース平沼翔太(現西武)を擁して優勝した2015年センバツで背番号18をつけてベンチ入り。エースとなった翌年、3年春のセンバツでも初戦突破したが、夏は福井大会で敗退し、甲子園には出場していない。「北陸のダルビッシュ」と高評価されてプロ入りしたものの、2019年に右肘をトミー・ジョン手術。一時は育成契約となっていた。
その後、支配下登録に戻り、一軍初登板はプロ5年目の2021年5月。9月29日のロッテではプロ初勝利もマークした。さらに2022年は15試合に登板して0勝2敗1セーブ6ホールド。6年目とはいえ、まだまだ伸びしろの大きい24歳だ。
山﨑のストライクゾーンを9分割したゾーン別の被打率は以下の通りとなっている
対右打者は外角低めが26.3%で最多(被打率.273)。宇田川に比べると投球の基本である外角低めにコントロールできている。
ただ、宇田川と似ているのは山﨑も高めの割合が高いことだ。外角高めは17.9%、真ん中高めは11.3%、内角高めは7.5%で、いずれも被打率.000。やはり「荒れ球」が武器のひとつとなっている。
左打者に対しては、外角高めが19.4%で最多(被打率.083)。次いで多いのが外角低めの17.2%(被打率.083)となっている。「高低」で攻めるのは宇田川と同じだ。
捕手のリードもあるだろうが、打者の左右を問わず、外角にやや偏っているため、狙い打ちされるリスクはある。CSファイナルステージ第4戦で、ソフトバンクのデスパイネに浴びた同点2ランは、157キロの外角ストレートだった。いくら速くても同じボールを続けると通用しないのがプロの世界。新しい球種を覚えたり、変化球に磨きをかけることは今後の課題だろう。
とはいえ、宇田川、山﨑ともにポテンシャルの高さは折り紙付きだ。今シリーズはもちろんだが、来年以降も2人がオリックスのブルペンを支えていくだろう。長年クローザーを務めてきた日米通算221セーブの平野佳寿も38歳。新旧交代の時期が迫っている。
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