「阪神なんば線シリーズ」実現か
プロ野球セ・リーグは阪神、パ・リーグはオリックスが首位を走っている。例年ならこれから夏場のタフな時期に入るが、今年は東京五輪によって約1カ月の中断があるため、不調の選手は疲労回復やフォームの見直しなど立て直す時間がある。逆に好調の選手はいかに調子を維持するか、難しい調整となるかも知れない。
まだ先は長いが、もし阪神とオリックスがともにリーグ優勝してクライマックスシリーズを突破すれば、在阪球団同士の日本シリーズとなる。
かつては阪神、南海、阪急、近鉄と関西に4球団あったものの、シリーズでの激突は南海と阪神が戦った1964年の一度だけ。ニューヨークを本拠とするヤンキースとメッツの「サブウェイ・シリーズ」のように、甲子園と京セラドーム大阪はともに阪神沿線のため「阪神なんば線シリーズ」と言えそうだ。実現すれば関西は盛り上がるだろう。
阪神は57失策、オリックスは49失策
ただ、両チームとも共通の懸念がある。エラーの多さだ。阪神は57失策、オリックスは49失策でともにリーグワースト。ともに投手陣がいいため、そこまで目立たないが、後半戦の勝負どころではミスが勝敗を分ける可能性も十分にある。
阪神は2018年から3年連続リーグ最多失策を記録しており、守備力強化は近年継続の課題だった。今春キャンプでは巨人、中日で守備の名手として活躍した川相昌弘臨時コーチを招聘し、中野拓夢や山本泰寛、小幡竜平、北條史也、木浪聖也、糸原健斗ら二遊間を守る若手内野手が指導を受けた。
しかし、ここまで中野は13失策、大山悠輔が7失策、木浪と糸原が4失策など数字上は改善されていない。
オリックスは昨季は計60失策でリーグ3位の少なさだったが、今季は19歳の紅林弘太郎が11失策、20歳の太田椋が5失策、25歳の宗佑磨が4失策。中嶋聡監督の積極登用により若手の成長が著しい半面、その代償としてエラーが増えているのだ。
優勝のカギは最多失策をカバーする打力か投手力
楽天が新規参入した2005年以降、リーグ最多失策を記録したチームの優勝はセ・リーグでは1回しかない。2011年の中日はリーグ最多とはいえ83失策と、最多チームが100を超えるシーズンもあることを考えれば少ない方だった。
落合博満監督最後のシーズンで、吉見一起が18勝、岩瀬仁紀が37セーブを挙げ、荒木雅博と井端弘和の「アライバ」コンビも健在。ただ、セカンドが本職の荒木がショートで17失策、ショートが本職の井端がセカンドで5失策と、二遊間を入れ替えたことが最多失策の大きな要因だった。
パ・リーグでは2008年、2018年、2019年の西武がリーグ最多失策を記録しながら優勝している。
2008年の西武はリーグトップの198本塁打、715得点、同2位のチーム打率.270をマーク。中村剛也が46本塁打でタイトル獲得したほか、ブラゼル、ボカチカ、G.G.佐藤らが打ちまくった。
2018、2019年も同様に中村や山川穂高、森友哉、秋山翔吾(現レッズ)らが山賊打線を引っ張った(2018年は現楽天の浅村栄斗も32本塁打)。エラーをカバーするだけの打力があったのだ。
投手陣や打線に比べると守備力の影響は小さいかも知れないが、これだけ数字に表れているということは、やはり無視できない。今年の阪神とオリックスに最多失策をカバーするだけの突出した力があるかどうか。答え合わせは秋まで待とう。
※成績は7月12日現在
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