6月打率.348!月間打率は右肩上がり
開幕から話題を呼んでいる阪神のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明がますます調子を上げてきた。22日の中日戦では昨年の沢村賞左腕・大野雄大から二塁打を放つなど4打数2安打。23日には福谷浩司から19号を放ち、6月23日現在、月間打率.348、直近10試合で39打数16安打の打率.411、4本塁打と絶好調だ。
初めてのプロ野球のシーズンで緊張状態が続き、時が経つにつれて他球団からも研究される。暑くなってくると疲労も蓄積して成績を落とす新人は多いが、佐藤にはそんな常識は通用しないのか。3月の打率.158から、4月は.264、5月は.301、そして6月は.348と上昇曲線を描いており、成績を落とすどころか、プロの投手に順応していることが分かる。
今季の打率.290はリーグ11位、19本塁打は巨人・岡本和真と並ぶ2位タイ、47打点はヤクルト・山田哲人と並ぶ3位タイと、「新人」という但し書きを取っ払っても、セ・リーグを代表する強打者と言える成績だ。
三振のペースは春先より良化
佐藤の豪快なスイングのデメリットとして課題に挙げられてきたのが三振の多さ。65三振で2位のヤクルト・塩見泰隆を大きく引き離す90三振は、もちろんリーグ最多だ。パ・リーグを見てもソフトバンク・甲斐拓也の79三振が最多のため、佐藤が飛び抜けて三振が多いことは否定のしようがない。
しかし、そのペースは少しずつだが、落ち着きつつある。三振をひとつ喫するまでにかかる打席数を示すPA/Kは、3月が1.91と2打席に1回は三振していた計算だった。そこから4月は2.91、5月は3.16と良化。6月もここまで70打席で22三振、PA/Kは3.18と、春先より減らしているのだ。
本塁打は3月1本、4月6本、5月6本、6月6本と順調に量産している。本塁打のペースは落とさず、三振を減らしているのは成長の証明と言えるだろう。
2019年の村上宗隆は三振ペースが徐々に悪化
参考にしたいのがヤクルト・村上宗隆。同じ左打ちのスラッガーで三振が多いことでも有名だ。今季はリーグワースト3位の59三振、PA/Kは4.75だが、村上が36本塁打を放ってブレイクしたプロ2年目の2019年の成績が下の表だ。
3、4月のPA/Kは4だったが、5月は3.42、6月は2.54と悪化している。村上は1年目は6試合しか出場していないため、事実上、この年が初めてのシーズン。慣れない長丁場による疲労やプレッシャー、相手投手からの研究によって成績が下降したことは容易に想像がつく。
6月終了時点での本塁打は19本で、奇しくも現在の佐藤と同じ。1本塁打だった7月に三振を減らしたものの、8月は11本塁打と爆発した分、三振も月間最多の43個を喫した。やはり本塁打が増えると三振も増えるのが、野球界では一般的なのだ。本塁打を量産しながら三振を減らしつつある佐藤の右肩上がりの成績が、いかに凄いかよく分かるだろう。
球団新人記録の22本塁打、プロ野球記録の31本塁打も視界
村上は2019年、歴代ワースト4位の184三振を喫したものの、36本塁打を放って新人王に輝いた。その後、昨季は28本塁打、今季はすでに21本塁打を放つなど、不動の4番として君臨している。2019年に使い続けた首脳陣の我慢が結実した格好だ。
高卒と大卒の違いはあるが、佐藤の成長曲線は2019年の村上を凌駕している。一体この先、どれほどの大打者になるのか。すでに1980年に6球団競合のドラフト1位ルーキー・岡田彰布が記録した18本塁打を上回っており、田淵幸一が1969年に放った球団新人記録の22本塁打に迫っている。
さらにその先、1959年の桑田武(大洋)と1986年の清原和博(西武)がマークした31本塁打のプロ野球記録も今のペースなら十分視界に入る。阪神では新人に限らず、生え抜き選手で30本塁打をマークしたのは1985年の掛布雅之(40本)と岡田彰布(35本)が最後。もしかしたら、我々はとんでもない大打者を目の当たりにしているのかも知れない。
※成績は6月23日現在
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