刺殺、補殺、失策、併殺、守備率、RF、捕逸を比較
プロ野球は「記録のスポーツ」と言えるが、「守備」は最も評価が難しく、わかりにくい分野だ。
NPBの公式サイトには守備記録として、試合数、刺殺、補殺、失策、併殺、守備率、捕逸という項目が並んでいる。
試合はその守備位置での出場試合数、刺殺はノーバウンドの飛球を捕ったり、タッチしたり、フォースアウトにするなど打者、走者を直接アウトにすること、補殺は送球によって間接的にアウトにすること、守備率は(刺殺+補殺)÷(刺殺+補殺+失策)で求められる守備の確かさ。捕逸は捕手のパスボール。またRF(Range Factor)という指標は、(刺殺+補殺)÷試合数で求められ、守備範囲の広さを表す指標。ただRFは正選手の方が途中交代の選手よりも高くなる傾向にある。
また守備成績の評価は、ポジションによって異なる。こうした指標を使って、6月21日時点のセ・リーグの野手の守備成績を見ていこう。各球団のポジション別で最も出場試合数が多い選手+規定試合数(チーム試合数の二分の一以上)の比較。
一塁手はビシエドが優秀
一塁手は、守備機会のほとんどが他の野手からの送球を受ける「刺殺」になる。一番重要なのはこれを確実に捕球する「守備率」だ。セの正一塁手は全員外国人だが、守備率ではビシエド、マルテ、ソトがほぼ横並び。
一塁手で次に重視すべきはゴロを他の塁に送球してアウトにする補殺だ。1試合当たりの補殺数はビシエドがやや抜けている。
昨年、ダイヤモンドグラブを受賞したビシエドだが、一、二塁間に抜ける打球にダイビングするなど、野手としても積極的だ。今季もビシエドが一歩抜け出していると言えよう。
二塁手は牧秀悟がRFで菊池涼介を上回る
広島の菊池涼介は正二塁手になった2014年に6.21という驚異的なRFを記録したが、失策もリーグダントツの18で守備率は.980だった。無理めの打球に飛びついて失策になることも多かったのだ。しかし経験を積むうちにRFは少しずつ小さくなり失策も減少、昨年はRFは4.88だが守備率はNPB新の1.000を記録した。
このように二塁手(遊撃手も同様)は若手のうちはRFが大きく守備率が低く、ベテランになるとRFが小さくなり守備率が高くなる。守備の評価はRFと守備率のバランスで見るべきなのだ。
今季、RFはDeNAの新鋭・牧秀悟が1位で菊池が2位。守備率は中日の阿部寿樹が無失策、菊池が2位。
やはり総合的には菊池に1日の長があるか。毎年、菊池とそん色のないRF を記録する山田は早くも失策3とやや元気がない。
三塁手は大山悠輔が深刻
三塁手は二塁手や遊撃手に比べれば守備機会は半分以下になる。しかし失策が失点に結び付く可能性は高い。そういう意味では守備率が重視され、RFがこれに次ぐ。
巨人の岡本和真は派手な動きはしないが、安定感のある守備でも貢献している。
深刻なのは阪神の大山悠輔。現代のプロ野球ではどのポジションであれ守備率が.950を割り込むのはあまりない。甲子園の内野は土であり、人工芝の球場に比べ不利だとされるが、それにしても確実性を高めないと厳しいだろう。
遊撃手は京田陽太が精彩欠く
遊撃手は二塁手と同様の評価に加えて、併殺参加数にも注目すべきだ。
阪神のルーキー中野拓夢は、いかにも新人らしい数字。張り切って難しい打球に飛びついているのだ。ただ阪神は中野だけでなく失策が非常に多い。これは問題だ。
セでは中日の京田陽太が毎年、RF4.5以上に加え.980以上の守備率を誇っていたが、今季は打撃ともども精彩がない。
巨人の坂本勇人はRFは小さく守備率が高いというベテランらしい数字になっている。
DeNAの大和はユーティリティの印象が強いがRFは4.0を超え、併殺参加数はリーグ1位、貢献度は高いとみるべきだろう。
左翼手は西川龍馬がRF1位
NPBでは左翼、右翼、中堅の別なく守備成績を一括しているが、本来は別のポジションだ。外野手は、最も多い守備位置別に3つに分けた。ただし、各選手の成績には他の守備位置での守備成績も入っている。
左翼手はあまり守備が得意でない選手が守ることが多いとされる。まず見るべきは守備範囲を示すRFだが、広島の西川龍馬が1位。さらに補殺数にも注目すべきだ。ヤクルトの青木宣親は今季早くも4補殺。この貢献は大きい。巨人のウィーラーは無難に守っているが、簡単な飛球を飛びついて捕球することも多く、本職内野手を感じさせる。
中堅手は近本光司が守備範囲の広さ証明
中堅はまず守備範囲の広さが求められる。阪神の近本光司のRFは2を超えて、広い守備範囲をカバーしていることが分かる。巨人・丸佳浩はゴールデングラブ7回の外野守備の名手。今季の出場試合数は少ないがRFは優秀だ。
右翼手は鈴木誠也が圧倒的
右翼には中堅に次ぐ守備範囲の広さと二塁で走者を刺す肩の強さが求められる。セでは広島・鈴木誠也が圧倒的だ。中堅に近い広い守備範囲とショットガンのような肩で外野守備の要となっている。阪神の佐藤輝明は外野手としては数字的には平凡だ。
捕手は木下拓哉が高い数字
捕手は守備記録では優劣はなかなかわからない。捕手の刺殺数の大部分は、三振によるものだ。また失策や捕逸もめったにない。野手としての俊敏性を表す補殺で、中日の木下拓哉がやや抜けているか。盗塁阻止率では、巨人の大城卓三が.448、中日の木下が.389、ヤクルトの中村悠平が.273、阪神・梅野隆太郎が.231となっている。
守備成績から見ると、選手の評価は少し違って見えるのが興味深いところだ。
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