攻守で存在感を発揮
ここまで交流戦でわずか3勝(11敗3分け)。リーグでは19勝(31敗8分け)で5位に低迷する広島。投打がかみ合わず苦しい状況が続いている中、セ・リーグでしばらくの間、首位打者をキープしているのが菊池涼介だ。
今季は多くの試合で1番に起用され、開幕からハイペースで安打を量産。現在、打率.313はリーグトップ、65安打はリーグ6位につけている。5月下旬に新型コロナウイルス感染により離脱していたものの、復帰後早々に攻守で存在感を発揮した。
1番二塁で先発出場した6月9日のソフトバンク戦では、二塁ベース右へ弾んだワンバウンドの打球をランニングキャッチすると、そのまま二塁ベースを踏み、難しい体勢からジャンピングスローで一塁へ送球し、一人で併殺を完成させた。どんな体勢でも捕球してからの素早さとスローイングが安定しており、瞬時の判断力も素晴らしい。まさに菊池ならではの美技だった。
広角に打ち分ける打撃
これまでは制約の多い2番に座ることが多かったが、1番に入ることで比較的自由に打てる分、菊池の打撃センスの良さが生きているようだ。大振りが減ったためか、近年散見されていたポップフライが減り、中堅および右方向への安打もよく出ている。
打球方向別の打率を見ると、そのことが顕著に表われている。昨季は右方向の打率が.452とハイアベレージだったものの、中堅方向は.221、左方向は.252と数字が偏っていた。今季は、右方向が.286と昨季よりも低くなったものの、中堅方向が.313、左方向が.344と、どの方向にも満遍なく率を残している。
特筆すべきはゾーン別の打率。フォークの打率が.118と落ちる球を苦手としていることもあってか、真ん中低めは打率.130、内角低めは.154と苦しんでいるものの、それ以外のコースはすべて3割以上をマーク。菊池のバットコントロールの良さを証明しており、特に内角中程は.636と得意としている。低めのさばきや見極めが向上すれば、より一層ハイアベレージをキープできる可能性は高まるだろう。
打撃でも球史に名を残すか
ここまで積み上げた安打は1283本。2017年~2019年の3年間では、シーズン平均で142本の安打を放った(昨年は試合数が少なかったため除外)。これまでと同様にレギュラーとして試合に出続け、近年のペースで安打を打つことができれば、およそ5年で2000本安打の大記録に到達する計算だ。
同じ二塁手の名手として長年活躍した元中日の荒木雅博は、39歳8ヶ月で2000本安打を達成した。広島では2016年に新井貴浩が39歳2ヶ月で2000本安打を達成している。それ以来の達成となるか、年を追うごとに注目度が高まっていくだろう。
首位打者も狙える位置にいる今季。二塁手として同タイトルを獲得すれば、セ・リーグでは.369のハイアベレージで首位打者に輝いた1999年のロバート・ローズ以来となる。守備の名手としては8年連続ゴールデングラブ賞を獲得するなど、確固たる地位を築いている菊池が、打撃でも球史に名を残すことになるのか注目だ。
※数字は2021年6月15日試合終了時点
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