今季はキャリアハイのOPSをマーク
6月2日、新型コロナウイルス陽性判定を受けて療養していた広島の菊池涼介が一軍に復帰、即スタメンで2安打を放った。セ・リーグ首位打者を快走してきた打撃に、ブランクの影響はなかったようだ。
今シーズンは、開幕から好調をキープ。5月17日に離脱するまで39試合に出場し、リーグトップの打率.342、5本塁打、14打点の好成績で、OPS.873はキャリアハイを大きく上回る数字だ。
4月には通算100本塁打を達成した菊池だが、もう一つ、目前としている大記録がある。通算300犠打だ。昨シーズンまで6年連続リーグ最多犠打を記録しており、大台まであと6。今シーズンはまだ犠打を記録していないが、順調に行けば今シーズン中にも達成するだろう。
史上2人目の300犠打&100本塁打達成は目前
過去に通算300犠打を達成した選手は7人。世界記録の533犠打を記録した川相昌弘を筆頭に、宮本慎也、伊東勤ら錚々たる顔ぶれが並ぶ。2000安打を達成した選手も複数おり、決して犠打だけの選手たちではない。
菊池と言えば犠打が多い一方、積極的な打撃も持ち味の選手だ。偉大な先輩たちと肩を並べたとき、純粋な打力ではどれくらいの位置にいるのだろうか。現時点での成績を比較してみよう。
安打数では宮本慎也の2133本がトップで、今宮健太(ソフトバンク)が962本で最少。しかし今宮はまだ現役バリバリの29歳であり、これからも数字を伸ばしていくだろう。菊池の1280安打はこの中で5番目に位置するが、安打数が試合数を上回っているのは菊池のみ。この中では優れた打撃力を有していることが分かる。
では、レギュラークラスの選手と比較してみるとどうだろうか。長打率で見てみると、2018~2020年に規定打席をクリアした選手(≒レギュラー)延べ173人の平均長打率は.447だった。上記7人の平均長打率はこれを大きく下回っている。菊池も上表の中ではトップの.397をマークしているが、レギュラークラスの平均には及ばない。
犠打のサインが出る選手は長打力がないという印象があるが、そのイメージ通りの結果となった。出塁率も173人の平均(.356)を下回っており、レギュラークラスの選手としてはやや打力が劣る部類に入ってしまうようだ。
また、長打の最たるものと言えば本塁打だが、7人の平均は72本。出場数と比べるとやはり少なく感じる数字だ。ただし、トップの伊東勤は156本塁打を放っており、一定の長打力は兼ね備えていた。
100本塁打を達成しているのはこの伊東のみ。今季100本塁打を達成した菊池が300犠打も達成すれば、史上2人目の300犠打&100本塁打を達成することになる。
現時点ではOPS2位の菊池涼介
近年では打力の指標としてOPSが一般的になってきたが、7人のうちでトップは新井宏昌の.737だ。また、打率、長打率、出塁率ともに7人中トップで、2000安打もクリアしている。この中では最も優れた打力を持っていたと言える。
現在通算OPSが.715の菊池は2位にランクイン。今季はキャリアハイが期待できる活躍を見せており、来季以降もこのまま打ち続けることができれば、新井を上回ることも充分可能だろう。
今年で31歳の菊池。年齢的にも守備力の衰えを指摘されることが増えてきたが、2020年には守備率10割を記録し8年連続ゴールデングラブ賞に輝くなど、まだまだ健在といえる。ここにきて向上した打撃がフロックでなければ、選手寿命も延びることだろう。
300犠打&100本塁打達成かつ通算OPS.800。今季の躍動ぶりを見ていると、歴史に名を残す選手となることを期待せずにはいられない。
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