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新型コロナでメディアの在り方も変わる?プロ野球広報の工夫と苦悩

佐々木朗希と梶原紀章広報室長Ⓒ千葉ロッテマリーンズ
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Ⓒ千葉ロッテマリーンズ

厳重な感染防止策を敷くロッテ

本来なら交流戦が近付き、ますます盛り上がっていく時期だが、新型コロナウイルスの影響でいまだ開幕すらしていないプロ野球。試合があれば、打った、投げたと目の前で起こった事象がニュースになるが、現在の報道はコロナ関連のニュースがほとんどだ。そもそも選手とメディアの接触が制限されている以上、取材すらままならない。チームとメディアの橋渡し役でもあるプロ野球球団の広報も何かと苦労している。

厳重な感染防止策を敷いているロッテは、グラウンドで同時に練習する人数を2人、ロッカーの同時使用も2人、ウエートルームの使用は1人に限定。マリンスタジアムと浦和の2軍施設を併用し、1組2時間交代で、2日に一度、全選手が練習できるシフトを組んでいる。

さらに全選手に毎朝、体温や体調の報告を義務付け、球場と球団事務所にはサーモグラフィーを設置して検温する徹底ぶりだ。

元記者・梶原広報室長の発想と工夫

当然ながらメディアの取材も規制しており、他球団で見られるようなZoomを使った会見も行っていない。必然的にメディアは広報を通じてしか選手のコメントを取れない状況になっている。

梶原紀章広報室室長は「どんなものを提供できるか腕の見せどころでもあります。記者の方々とミーティングをして希望を聞いたり、スポーツ紙だと競馬のG1レースがある日は野球記事の扱いが小さくなるので、情報を出す日をずらしたり、いろいろ工夫しています」と打ち明ける。

番記者の希望も鑑みながら、梶原室長が自ら企画したり、選手に電話取材することも少なくない。最近では佐々木朗希から母親・陽子さんへの感謝の言葉を聞き出し、「母の日」の5月10日に球団公式YouTube動画で公開した。

また、井上晴哉が反射神経を養うために自宅で家族と「かるたトレ」をしているというネタも梶原室長が取材したものだった。

実は梶原室長は元サンケイスポーツ記者。かつては阪神担当やオリックス担当として、取材する側だった。

「記者時代の経験は活きていますね。電話で取材している時も、記事になりそうなポイントがあると掘り下げて聞きます」

ネタの少ないシーズンオフは、プロ野球番記者にとって取材力が試されると同時にアイデア勝負でもある。記者時代に培った発想力が、新型コロナで苦しむメディアを助けているようだ。

相いれないソーシャルディスタンスと囲み取材

プロ野球は最短で6月19日開幕という報道もあり、「遅い球春」の到来が徐々に迫ってきている雰囲気が漂う。ただ、無観客試合となるのか、メディア対応はどうするのか、不透明な部分も多い。

通常なら試合終了後、ヒーローインタビューや囲み取材が行われるが、ソーシャルディスタンスを保持したまま選手を囲むことなど不可能だろう。仮にプロ野球が始まっても、当然ながら全てが元通りになる訳ではない。

「これからはメディアが取材しにくい時代になるでしょうね」と梶原室長は予測する。ただでさえ、SNSの発達で自ら発信する選手が増えている現状だ。新型コロナで記者の活動範囲が狭くなると、その分、広報の役割は増える。

「今後はオンラインでファンと交流したり、情報発信の方法が変わっていくでしょう。ただ、僕は元々マスコミの人間だし、まだまだマスコミの力を借りたいと思っています」

メディアの在り方とともに、広報の仕事も変わっていく。プロ野球が開幕しても、梶原室長が広報として、時には記者として活躍する日は続きそうだ。

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