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佐々木朗希にとって、ロッテが好環境である理由

2019 10/22 06:00浜田哲男
ロッテが1位で獲得した大船渡高・佐々木朗希ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

世界も注目する逸材中の逸材

今年のドラフト会議で最大の注目を集めた佐々木朗希(大船渡高)は、ロッテがドラフト1位で交渉権を獲得した。逸材中の逸材と言われる佐々木が今後どのような成長を遂げていくのか、日本国内のみならず世界の野球関係者が注目している。

左足を高々と上げ、ダイナミックでありながらも力感のないしなやかなフォームから繰り出される最速163kmの直球をはじめ、スライダーやフォークなどの変化球も一級品。さらに、制球力もある。何よりU18日本代表候補合宿で163kmの球を受けた藤田健斗(中京学院大中京)の「球を受けていて初めて恐怖を感じた」という言葉が、佐々木の球の凄まじさを物語っている。

今回は、そんな佐々木がロッテに入団することで得られるメリットを挙げてみたい。

逸材を見てきた吉井投手コーチの存在

現在ロッテには、ダルビッシュ有や大谷翔平といった逸材を、投手コーチという立場で見てきた吉井理人投手コーチが在籍している。吉井コーチは現役時代に近鉄をはじめとして国内4球団、メジャーではメッツなど3球団のチームを渡り歩いた。2007年限りで現役を引退し、その後は日本ハムやソフトバンクのコーチを歴任。卓越した指導力で多くの投手を育ててきた。また、2014年には筑波大学大学院へ入学し、野球のコーチングに関する理論などを研究し、コーチとしての見識を深めている。

その指導方法は自身の経験を押しつけるのではなく、まずは投手の主張を受け入れるスタンスを徹底。「自分で考えられる投手」だとわかれば、まずは各自やりたいようにやらせる。その後じっくりと投手の主張を大事にしながら話し合い、最良だと思う方向へ導いていく。

投手のコンディション管理も徹底しており、リリーフ投手のやり繰りも個々のコンディションを踏まえた上で、その場面でより良いパフォーマンスが発揮できるであろう投手を優先して起用。特定の投手が登板過多にならないように配慮もしている。

ちなみに、大船渡高校の國保陽平監督も筑波大学の体育専門学群を卒業している。今夏の岩手大会決勝で佐々木のコンディションを踏まえた上で、登板を回避する決断を下したことで話題を呼んだ。プロとアマの違いはあるが、指導者として吉井コーチと相通じる部分があるのかもしれない。

高卒投手の育成に注力

ここ数年、ロッテは高卒投手の育成に注力しており、その成果が如実に表れ始めている。昨季までプロ未勝利だった3年目(21歳)の種市篤暉は、今季8勝(2敗)、防御率3.24の好成績を残し、5年目の岩下大輝(23歳)も5勝(3敗)を挙げた。また、6年目の二木康太(24歳)も7勝(10敗)を挙げ、そのうちの4勝をソフトバンクから挙げるソフトバンクキラーぶりを発揮。高卒投手が1軍の主戦投手に成長しつつある。

ほとんどの高卒選手は身体がまだ成長期にあり、出来上がっていないため、まずは身体づくりから始めることになる。佐々木も例に漏れず、そこからのスタートが予想されるが、チーム内で高卒投手の育成に成功している事例が近年増えていることは、佐々木にとって良い見本にもなり心強いだろう。また、年齢の近い投手がいることは、お互い刺激になるはずだ。

野手ではあるが、安田尚憲や藤原恭大らは1軍のレベルを体感させた後に2軍でじっくりと育てる方針をとっており、育成ビジョンが明確。今岡真訪2軍監督は安田について、「あれだけの逸材。日本を代表するような打者に育てることは当然の使命」と過去に語っており、その方針にブレはないだろう。

2軍にいても注目度は桁違いだと想定されるが、巨人や阪神といった球団で体感するような異様なほどのプレッシャーはないはず。しっかりと身体をつくり、来たるべき日に向け牙を研ぐには好環境となるだろう。決して焦ることなく、中長期の視点で練られた育成プログラムに期待したい。

ZOZOマリンのマウンドに立つ日を夢見て

11月に開催されるプレミア12では、残念ながらロッテから日本代表に選ばれる選手はいなかった。それでも、平沢大河、安田、藤原、種市ら高卒のスター候補生が着実に経験を積んでおり、数年後のロマンを抱かせてくれる状況となっている。来年はそこに佐々木が加わる。

成長を温かい目で見守り、グラウンドに立てば熱いエールを送るファンもついている。球団、監督、コーチ、選手、ファンらの一体感は12球団の中でも屈指。佐々木にとってのもうひとつの家族が千葉にできるはずだ。

無限の可能性を秘めた未完の大器をどのように育て、どう育っていくのか。「令和の怪物」と呼ばれる男がZOZOマリンのマウンドに立つ日を、多くのファンが夢見ている。