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ヤクルトの希望・奥川恭伸には成長過程を知れる喜びがある

2020 5/12 17:22勝田聡
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ⒸSPAIA

すでに変化球も交えブルペンで投球

ヤクルトファンの希望、奥川恭伸が実戦登板へ向け着々と準備を進めている。ゴールデンウィーク明けの5月8日には、戸田球場で変化球を交えて70球の投球練習を行ったという。

このブルペンは豪華だった。捕手は骨折からの復帰を目指す嶋基宏が務め、高津臣吾監督に小川淳司GMも視察したのである。この報道で奥川の仕上がりの良さ、首脳陣からの期待の高さ、そして嶋の復帰が近いことが同時に伝わってきた。ヤクルトファンにとっては明るい話題に満ち溢れていたのである。

現時点で最速6月19日という報道はあるものの、NPBの開幕は定まっていない。もちろんファームも同様である。そのため今後の奥川のスケジュールや登板プランもわからないのが実情だ。

そんな奥川に対して、「早く一軍で投げる姿を見たい」と思うファンがいる一方で、「1年目は無理をさせずファームで鍛えてほしい」という声があるのも事実。変則的な日程になることが必至の今年、高津監督や斎藤隆投手コーチら首脳陣が、どのように考えているかは今後も大きな注目を集めるだろう。

近年の高卒ドラ1の先輩たちは甲子園での実績はなし

奥川は昨年のドラフト会議において3球団競合の末、高津監督があたりくじを引いた。ヤクルトが1回目の入札であたりくじを引いたのは、2007年の高校生ドラフトにおける仙台育英高の佐藤由規(現:楽天/登録名:由規)以来となる。甲子園を沸かせたスーパースター候補生の入団とあって、その日からヤクルトファンは色めき立った。

これまでにも山田哲人や村上宗隆のように高卒のドラフト1位として入団し、プロ入り後も結果を残してきた選手はいる。しかし、高校時代から実力があった山田や村上でも、甲子園で結果を残すことはできなかった。また、ドラフト時の目玉的存在でもなかった。

彼らのドラフト当時を思い起こしてみると、山田が指名された2010年のドラフト会議では、斎藤佑樹(日本ハム)や大石達也(元西武)といった早稲田大出身者が注目を集めていた。高校生の目玉的存在は不在だったに等しい。

ちなみに2010年は甲子園で興南高が春夏連覇を成し遂げた年。エースの島袋洋奨(元ソフトバンク)がプロ志望届を出していれば、スター候補生として取り上げられていたかもしれない。

村上が指名されたのは、今から3年前となる2017年のこと。この年は清宮幸太郎(早稲田実業→日本ハム)一色。ライバルとしても安田尚憲(履正社→ロッテ)が大きく取り上げられており、彼らに比べると村上の露出は少なく、目玉としての扱いではなかった。

つまり、ヤクルトファンにとっては待望だった甲子園のスターが、12年ぶりに入団してきたことになるのだ。

高校時代から知る奥川の成長過程を追いかける喜び

高校時代に甲子園へ出場し確固たる結果を残し、プロ入り前から注目を集めドラフト1位で入団。その後も球界を代表する選手へと成長していく存在は限りなく少ない。現役選手では松坂大輔(西武)、ダルビッシュ有(カブス)、田中将大(ヤンキース)といった名前が挙がってくる。まさに大スターだ。

チームにも荒木大輔(現日本ハム二軍監督)や由規といった甲子園のスターからドラフト1位で入団した先輩たちは存在した。荒木の入団後は「大ちゃんフィーバー」があり、由規のときは中田翔(日本ハム)や唐川侑己(ロッテ)と並んで「高校生ビッグ3」として取り上げられ大きな話題を呼んだ。しかし両選手ともプロ入り後は故障もあり、大きな実績を残すには至っていない。

奥川は同期の佐々木朗希(ロッテ)と比べられつつ、メディアに大きく取り上げられており、ファンもその一挙手一投足を追いかけている。ここには(一部のファンをのぞいて)山田や村上のときにはなかった、高校時代をよく知る選手の成長過程を追いかける楽しみがある。

奥川は高校時代から報道が多く、注目されていたことでファンの知識量は他の選手と比べると豊富だ。また、映像的な資料も多い。まさに昔からよく知る近所の少年がプロ野球選手になったかのようだ。ファンの思い入れが強くなるのは想像に難くない。

奇しくも奥川は先輩たちと同じ背番号「11」を背負っている。きっと先輩たちの悔しさを晴らし、球界を代表する選手へと育っていく姿をファンに見せてくれることだろう。高校時代からよく知る選手の成長過程を追いかける喜びが、10年、20年と続いていくと思うと楽しみでしかたない。

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