ネーションズリーグで日本男子初の5位
6~7月に開催されたバレーボールの国際大会・ネーションズリーグで、男子日本代表は予選ラウンド9勝3敗、16チーム中5位となり、初のファイナルラウンド進出を果たした。ファイナルラウンド準々決勝では、東京五輪金メダルで今大会も優勝したフランスにセットカウント0-3で敗れたが、最終順位5位となり、大きな進化と可能性を示した大会だった。
収穫の一つはミドルブロッカーだ。これまで、アウトサイドの石川祐希(パワーバレー・ミラノ)やオポジットの西田有志(ジェイテクトSTINGS)など、サイドには世界レベルの選手が揃ってきていたが、強豪国との対戦ではどうしてもミドルブロッカーの力の差が浮き彫りになっていた。
しかし今回のネーションズリーグでは、ミドルブロッカー陣が存在感を発揮した。ブロックでは、特に海外勢に負けない体格とポテンシャルを持つ髙橋健太郎(東レアローズ)が大きな役割を果たした。
そして攻撃面では、身長204cmの山内晶大(パナソニックパンサーズ)が殻を破った感がある。昨年までは、世界トップレベルのミドルブロッカーと対峙すると、クイックを打ってもタッチを取られて拾われるというケースが多かったが、今大会はクイックの決定率が高かった。
幅広いコースへ巧みに打ち分け
セッターの関田誠大(ジェイテクト)は、Bパスと呼ばれる、アタックライン付近の返球からでも積極的にBクイックを使い、山内はブロックを見ながら巧みに打ち分けて得点につなげた。
特に予選ラウンド第2週のイタリア戦、アルゼンチン戦では高いスパイク決定率で西田、石川に次ぐ得点を挙げて勝利に貢献した。
今年代表が集合してから、集中的に取り組んできたのが、クイックの幅広いコースへの打ち分けだ。関田はこう語っていた。
「真ん中の6番(相手コートを6分割した場合の後衛センターの位置)にばかり打つんじゃなく、スパイクのディレクションを増やしてちゃんと打ち分けるということを、しっかり会話しながらやってきたので、それが効いているのかなと思います。今大会は相手ブロックのタッチが少なくなっています」
日本代表の伊藤健士コーチもこう話していた。
「以前は限られたところにしか打てなかったのが、今はBパスなどの難しい状況からも幅広いコースに打てているし、ブロックが見えている。4月の合宿からやってきた取り組みの成果が出ていると思います。セッターが前後に動いたり、ネットから離れたり、その時の状況によって、どの種類のクイックをどこに打ったら、相手のブロックが触りにくいとか、有効だというイメージを、ミドルとセッターでコミュニケーションを取りながらしっかり詰めてきましたので」
山内の言葉からも、やるべきことが明確になっていることがわかる。
「こっちがBパスになった時は、相手のミドルブロッカーは真ん中で待つことが多く、両サイドのブロッカーはクイックがないと思って少しサイドにリリースしかける。その分、ミドルとサイドのブロックの間があくので、基本的にその間を狙っていくようにしています」
オポジットの西田のライト攻撃が速いため、相手のサイドブロックが引き寄せられ、よりミドルが打ちやすくなっているとも語っていた。
「ミドルをよく使ってくれるのは僕としては嬉しいですね。点数を取れたらやっぱり自分を乗せやすい。打数が多いほど、そのチャンスが多くあるということなので。特に、Bパスであったり、難しい状況の時のほうが僕は好きです。遊んでる感じゃないですけど、裏をかいてやった、みたいな感じがするので」
自信と余裕が漂い始めた。
密かに狙うバックアタック
もう一つ、山内が密かに狙っていることがある。パイプ攻撃(コート中央エリアからのバックアタック)である。
山内は、唯一後衛でコートに入る、サーブを打つローテーションで、ラリーになると、パイプの助走に入ることがある。通常はアウトサイドの選手がパイプを打ちにいくが、今大会はディフェンスの際、アウトサイドの選手が後衛のレフト、ミドルの選手が後衛のセンターに入る機会も多く、アウトサイドの選手が守備で体勢を崩してパイプに入れない時などに山内がすかさず助走に入っていた。だが、まだトスが上がってきたことはない。
「『入ってたよ。なんで上げてくんないの?』って関田に言うんですけど、まだ1回も上げてもらってないですね」と苦笑する。
関田に尋ねると、「使いません。そこに対する信頼はないので」と一蹴したが、「でも、そういうのもいいですよね。余裕があれば」と含みをもたせた。
ブラジル代表のミドルブロッカーなどが取り入れているが、山内も、Vリーグのパナソニックで昨シーズン、1本パイプを決めている。
ミドルブロッカーのバックアタック。そんなオプションが加わったら……日本代表のバレーがますます魅力的なものになる。
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