2つの日本代表が沖縄で紅白戦
7月30、31日の2日間、沖縄市の沖縄アリーナでバレーボール男子の紅白戦が行われ、2つの日本代表がぶつかり合った。
1つは、今年最も重視する大会である世界選手権(8月26日開幕)を目指す日本代表。もう1つは、8月7日にタイで開幕するAVCカップに出場する日本代表である。
紅白戦では、世界選手権に向けた代表をAチーム、AVCカップ代表をBチームとし、両チームともセットごとに少しずつメンバーを代えながら各日4セットを戦い、初日はセットカウント2-2、2日目は3-1でAチームが勝利した。
Aチームは、主将の石川祐希(パワーバレー・ミラノ)が怪我のため、山内晶大(パナソニックパンサーズ)はコンディション不良のため欠場となったが、7月まで開催されたネーションズリーグで初の5位という成果を残した選手たちが拍手に包まれながらコートに立った。
長丁場の大会を終えて帰国したばかりという事情の中、ネーションズリーグでは出場機会の少なかったオポジットの宮浦健人やミドルブロッカーの村山豪(ともにジェイテクトSTINGS)、ネーションズリーグ後に合流した東海大学4年のミドルブロッカー・佐藤駿一郎、練習生として参加したアウトサイドのデ・アルマス アライン(サントリーサンバーズ)といった若手が勢いのあるプレーでアピールした。
35歳・深津旭弘が若いチームを牽引
Bチームは、AVCカップの開幕が近いこともあり、チームとして戦おうという意識がより見られた。中心となっていたのは、主将でセッターの深津旭弘(堺ブレイザーズ)だ。チーム最年長の35歳が、誰よりも表情豊かに周囲に声をかけ、チームを盛り上げた。
「若いチームなので、いい意味で勢いが出ればいいなと思っているし、よくない方向に進んだ時には、しっかり修正してチームを進めていければと思います。自分だけが頑張るんじゃなく、監督、コーチや他の選手たちとしっかり協力し合ってやっていけたらいいかなと思っています」と深津は語った。
AVCカップ代表は、若手Vリーガーを中心に構成され、その若手を深津や藤中謙也(サントリー)、大竹壱青(パナソニック)といった実績豊富な選手が支える。
AVCカップは、以前はアジアカップという名称で2年に一度行われてきたアジアのカテゴリーの大会で、これまで日本は、若手に経験を積ませるため大学生中心のチームで臨んでいた。
しかし今年は大会の位置付けが変わった。AVCカップの成績が“大陸ランキングポイント”として、世界ランキングに反映されることになったのだ。つまり2024年パリ五輪の出場権争いにも関わってくるということ。日本としては本気で勝ちに行かねばならない大会となった。
だが世界選手権と開催日程が近いため、、同じチームで臨むのは難しい。そこで、Vリーガーを集めてもう一つの代表が編成された。
今年度の代表登録メンバーは4月に発表されていたが、7月に藤中謙也、小野遥輝(サントリー)、小澤宙輝、難波尭弘(東レアローズ)、山田大悟(東京グレートベアーズ)の5人が追加登録され、AVCカップ代表に加わった。
この代表も、パリ五輪出場権を獲得するプロセスの一端を担うことになる。選手たちはもちろんその意識と責任感を共有しているが、それだけではない、と深津は言う。
「いろいろ経験してきた中で、自分が持っているものをしっかり出せるように、毎日頑張っていくことだけを意識しています。『勝たないといけない』というのはあるんですけど、そういうことにとらわれ過ぎても勝ちはついてこないので。自分が今思っている理想みたいなものをコートの中で表現できていけばいいかなと。
(理想とは)見ている人を楽しませられるようなバレーボール、見にきてよかったなと思ってもらえるようなチームや選手。そこを目指していきたいなと思います。真保(綱一郎)監督のもと自分たちの形ができてきているので、大会までの期間、さらに全員で工夫しながらやっていけば、いい結果が出るんじゃないかと思っています」
藤中謙也&颯志兄弟は初めて一緒にプレー
サントリーのVリーグ2連覇を支えたアウトサイドの藤中謙也は、シニアの代表として大会に出場するのは初めてだ。
「BチームBチームと言われていますけど、なんとか頑張りたいなと思っています。まあ、実質そうなのかもしれないですけど……」と少々複雑な思いものぞかせながら、こう語る。
「オリンピックに直結するというのは正直そこまで意識していないんですが、でも代表として戦う大会である以上は勝ちたい。ポイントは結果的についてくるので、優勝しないといけないところではありますけど、まずは1戦1戦勝つことにこだわりたい。この代表として結果を残すことが大事。目の前のことにフォーカスを当ててやっていきたいと思っています」
その藤中は三人兄弟で、弟の優斗(ジェイテクト)と颯志もVリーガー。今回のAVCカップ代表にはリベロの颯志も入っており、紅白戦では兄弟が揃ってコートに入り、並んでサーブレシーブを受けるシーンもあった。それも見所の一つだったが、本人たちはいたって冷静だ。謙也はこう話す。
「(兄弟揃って代表でプレーすることについて)数え切れないほど聞かれますけど(苦笑)、周りが思っているほど、兄弟というところに熱はないですし、あまり特別な意識はないんです。一選手として接してるという感じです」
6歳離れている颯志と一緒にバレーをするのは実は初めて。その意味では、新たな発見は多いという。
「スピードというか、ボールへの反応がシンプルにすごいなと感じたし、足も速い。そういう能力はリベロにとって大事だと思うし、リベロになって1、2年で、こういうところでプレーできているのは、彼にとっていい経験だと思いますね」と、ちらっと兄の顔をのぞかせた。
世界ランキングのポイントという面でパリ五輪につながっているだけでなく、選手にとっては、AVCカップで目覚ましい活躍を見せれば、来年以降の代表選考へのアピールにもなる。もう一つの日本代表の熱い戦いにも期待したい。
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