京産大、大経大、関学大、立命大、皇学館大など候補
正月の風物詩、箱根駅伝が100回目を迎える節目で「全国化」への一歩を踏み出す。2024年の100回大会に向けた前年秋に開催される予選会に、関東以外の大学が出場できることになった。もちろん、関東以外の大学にとっては朗報だが、出場へのハードルは高いのも事実。地方の大学が箱根を走ることはできるのだろうか。
箱根駅伝は関東学生陸上競技連盟の主催。過去に招待やオープン参加で関西の大学が出場した歴史はあるものの、基本的には同連盟に所属する大学のみが出場できる「関東大会」だ。
ところが今回、全国に門戸を広げた。101回大会以降の開催方式は未定だが、喜ぶ声は多い。2008年北京五輪代表で、現在は大経大で指導する竹澤健介氏はツイッターで「どうか継続的に」とつぶやいた。そう思う陸上ファンは多いだろう。
特に関西には、全日本大学駅伝で優勝経験がある京産大のほか、今年の全日本への出場を決めた大経大、関学大、立命大といった実力校がいる。関東以外で箱根出場を狙えるとすれば、関西の実力校と、東海地区から全日本大学駅伝の常連となった皇学館大といったところになるだろう。今回の出場地域拡大をチャンスととらえていると思う。
全日本では10年で4回「関東に勝利」
だが、箱根の予選会を突破できるのは10校。関東以外の大学が箱根に出場するのは一筋縄ではいかない。
関東とそれ以外の地域の大学が争うレースとすれば、全日本大学駅伝がある。過去10年の全日本大学駅伝の関東で最も順位が悪かった大学と、関東以外で最も良かった大学を並べてみた。後者が上回ったのは「4回」である。
この「4回」という数字をどうとらえるか。
「4回も関東の牙城を崩している。だから箱根の予選会を勝ち抜く力があるのではないか」という考え方もあると思う。10分の4ということを考えれば、地方の大学も関東勢に対抗できるのではないかと考えて当然かもしれない。筆者も、4回も関東を上回るケースがあったのかと思ったほどである。
だが、である。関東の大学は正月の箱根を最大の目標にして、チームを作り上げる。一方、関東以外の大学は11月の全日本を目指してくる。全日本大学駅伝における、ピーキング、モチベーションの違いがある。
立ちはだかる関東の高い壁
そして、何より距離と選手層の壁が立ちはだかる。
全日本は8区間106.8キロ。1区間平均約13.4キロ。最長区間は8区の19.7キロとなり、ハーフマラソンよりも短い。
一方で、箱根の予選会は、1大学10~12人がハーフマラソンを走り、上位10人の合計タイムで競う。このため、関東の大学はハーフマラソンに対応できる選手を数多く育成していく。だが、関東以外ではもっと短い距離、トラック種目を中心に強化していくため、ハーフマラソンで力を持つ選手が少ない。
そして、そもそも高校で力のある選手のほとんどが関東の大学に進んでいる中、選手の質も量も、地方の大学は関東に及ばないという現実がある。
そんな中、地方の大学は箱根予選会のメンバーをそろえるのも一苦労だろう。2021年の全日本では関東最下位の日体大と関東以外の大学で最上位だった関学大の差は3分3秒もあった。箱根の予選会を走れば、この差がさらに広がるだろう。
101回以降の門戸開放がさらなる箱根人気へ
地方の大学が箱根の予選会を突破することの難しさばかり書いてきたが、陸上競技の盛り上がりを考えれば、「全国化」の流れはうれしい話である。
「全国化」がもし、101回大会以降も続くのなら、力を持つ高校生の進路の選択肢が関東以外にも広がるかもしれない。高校段階では、広島の世羅高、兵庫の西脇工、京都の洛南高など、むしろ、関東以外の学校に力があり、地元に残る流れができる可能性もある。
もちろん、すでに全国大会として「選手権大会」となっている全日本大学駅伝との棲み分けの問題も出てくるだろう。ただ、それでも、今後も箱根が関東以外に門戸を開き続ければ、高校野球のような地方を巻き込んだ一大イベントへとさらなる飛躍を遂げるに違いない。
【関連記事】
・2022年も学生駅伝は青山学院大中心?追いかけるのはどこだ
・箱根駅伝の出身高校ランキング、消えた兵庫の名門2校、トップは学法石川
・学生最強ランナー田澤廉、世界陸上と学生駅伝3冠の二兎を追う「いばらの道」