セリエAで全試合フル出場中 欧州評価うなぎのぼり
冨安健洋への称賛が止まらない。
DFとして活躍するサッカー日本代表の冨安は、アビスパ福岡1部(2016〜2017年)、ベルギー1部のシント=トロイデン(2017〜2019年)、セリエA・ボローニャ(2019〜2021年)と2年ごとにステップアップを遂げてきた。
22歳で迎えた今シーズンは、セリエA第1節のACミラン戦(2020年9月22日)から第21節のパルマ戦(2021年2月8日)まで全試合にフル出場中。シニシャ・ミハイロヴィッチ監督から絶大な信頼を寄せられている。
右サイドバックでフル出場した直近のパルマ戦では、50本中40本のパスを成功(パス成功率80%)。タッチ数はチーム内トップの67回を記録しており、チームメイトからも信頼されている様子がうかがえる。
ミランやユヴェントスなど強豪相手に敗北した直近の試合でも、冨安のプレイが批判を浴びる機会は少なく、かえって評価はうなぎのぼりだ。ミランはやや諦めムードだが、インテルやユヴェントス、プレミアリーグの数クラブが富安の獲得を狙っている。
ミハイロヴィッチ監督の“最高傑作”になる?
冨安はボローニャ1年目に、主に右サイドバックでプレイ。2年目の今シーズンはセンターバックの一角で出場する機会が増えている。対人能力やスプリント力、左足のロングフィード(利き足は右)、ビルドアップの正確性には目を見張るものがある。
ミハイロヴィッチ監督はもともと、若い冨安にはサイドバックを1年経験させ、その後センターバックに落ち着かせる構想だったのだろう。自身(主に左サイドバック、センターバックとしてプレイ)やセルヒオ・ラモス(レアル・マドリード)、ジョー・ゴメス(リバプール)らと同じような足跡をたどらせようという考えもちらついているのかもしれない。
しかし嬉しい誤算と言うべきか、冨安はサイドバックでのプレイが想像以上に良い。今シーズンも、センターバックでの出場が増えたとはいえ、システムや他選手の状況に応じてサイドバックでプレイしている。
冨安はサイドバックが本職ではない分、荒削りに見える場面もある。だが前述の能力に加え、サイドから飛び出してくる選手への対応が良い。攻撃のスイッチを入れる縦パス、自身の飛び出しのタイミングも優れている。小学生時代にバルサアカデミー福岡校に3年間在籍した影響か、足元が器用でボールを前進させるドリブルもできる。冨安のこのサイドバックへの適正は無視できない。
試合中、3バックや4バックなど急なシステム変更で融通が効くユーティリティー性も魅力の一つ。どんなシステムでもはまる使い勝手の良さが、リーグ内トップの数字である約1890分というプレイ時間にも表れている。
このまま順調に場数を踏んでレベルアップすれば、遅かれ早かれ、CL常連のビッグクラブへ移籍するだろう。いつの日か、ミハイロヴィッチ監督の“最高傑作”と呼ばれる日も来るかもしれない。
ゴールはFW顔負けの豪快さ “センターフォワード・冨安”にも期待?
“サイドバック・冨安”の評価が上がる所以の一つが、補って余りあるゴールセンスだ。
得点数こそ少ないが、豪快なミドルシュートや滑り込んできたキーバーの頭上をフワッと越える浮き玉のシュート、躍動感あふれるヘディングシュートを決めている。まるで本職ストライカーのように華のあるゴールばかり決めるため、“サイドバック・冨安”のインパクトは強烈だ。守備のタスクもしっかりこなすので、現地の評価も高い。
かつて元日本代表DFの田中マルクス闘莉王は、J1・J2で通算104得点を記録。その攻撃力を買われ、京都サンガなどでFWにコンバートされた時期もあった。
どのクラブでも日本代表でも、冨安は第一に守備での貢献が期待されるだろう。それでもいつか、冨安がセンターフォワードでプレイする姿もちょっと見てみたい。
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