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リヴァプール・南野拓実は「一流」から「超一流」へ脱皮できるか

2020 12/27 11:00桜井恒ニ
リヴァプール・南野拓実Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2年目のスタートにプレミア初得点

リヴァプールの南野拓実が12月19日、プレミアリーグ第14節のクリスタル・パレス戦に先発し、プレミア初得点を記録した。移籍からちょうど1年経ったメモリアルデーを祝うゴールとなったが、クラブ内での序列を上げるにはさらなる飛躍が求められる。

南野は左ウイングで先発し、前半3分にサディオ・マネのパスを受けてフェイントを交えてシュート。これがゴール隅に決まり、大量7得点の口火を切った。クリスタル・パレスも序盤は入りが良く、緊張感がある中で価値あるゴールだった。

その後も南野は、他選手と連動して攻守に奔走。59分にはナビ・ケイタのスルーパスから抜け出して2点目を狙うシーンも見せた。

結果、7ゴールの大量得点でクリスタル・パレスに勝利。試合後、ユルゲン・クロップ監督は南野が練習時から好調だったと明かし、「すばらしいゴールだった」「もっとタキを使いたい」と手放しで称賛した。

南野にとって記念すべき1日だったことは間違いない。

中盤経験でポジショニング改善 チーム戦術の理解深まる

初得点までの道のりは険しかった。

夏の開幕前、南野が本領を発揮すると各所で予想されたが、いざ開幕してもなかなか結果が出せなかった。

代わりに、クラブが9月に長期契約を結んだポルトガル代表のディオゴ・ジョッタがチームにすぐフィット。怪我で戦線離脱するまでに公式戦17試合に出場して9得点を叩き出した。

序列争いを繰り広げていた南野はジョッタに差を広げられ、チャンピオンズリーグ(CL)1次リーグ第2節のミッティラント戦(10月27日)では、先発するもボールが足につかず、多数のメディアから酷評を受ける。ジョッタの台頭で出場機会が減少し、ベンチ外になることもあり、一部ではレンタル移籍論も浮上していた。

そうした中、11月28日のプレミアリーグ第10節ブライトン戦で突如、右インサイドハーフで先発起用された。ジョッタとの競争に負け、怪我人が多かった中盤をカバーすべく便利屋扱いされた格好だ。決定的な仕事に絡めず、敵がボールを奪うための標的になった。

しかし、左インサイドハーフとして先発したCLグループリーグ第6節のミッティラン戦(12月9日)では、37回という今季クラブ最多のプレッシング数(1試合あたり)を記録(スポーツ統計サイト「FBref」調べ)。あわやゴールというプレイも見せた。

今まで南野は、敵DFのライン間でパスを受けたがる傾向があり、味方に狭いパスコースを強いてしまってパスを受け取れないシーン、そして味方とポジションが重なるシーンが目立っていた。

しかし中盤経験後、今まで以上に味方と攻守で連動し始めている。クリスタル・パレス戦も、前線で自由にポジションチェンジしてもしっかり周囲の選手と守備連携をとり、前線から19回のプレッシングを行っている(「FBref」調べ)。これは、今季前線で出場して最多の数字だ。

結果論だが、中盤と前線の仕事を学んだことでチーム戦術の理解が深まった。クロップの信頼も増したことで今後、出場機会と好プレイの増加も考えられる。

指揮官称賛も……変わらぬ強力3トップ&ジョッタのぶ厚い壁

これで試合日程が過密なプレミアリーグにあって、南野はリヴァプールのローテーションの一角として機能しつつあることを証明できた。指揮官が南野のゴールを絶賛したのは、自信植え付けの意味合いもあるだろう。南野の現在地は、重要な試合での使われ方を見たほうがいい。

たしかに南野は、攻守のクオリティが総合的に高い“上手い”選手だ。しかしCL優勝も視野に入れるリヴァプールには、シュートやパス、トラップの精度が優れた“すごく上手い”選手が少なくない。

特に世界有数の3トップであるサラー、マネ、フィルミーノのクオリティは高い。南野が得点したクリスタル・パレス戦では、マネが鋭い反転シュートを決め、2得点1アシストのロベルト・フィルミーノはクロスのボールを走りながらピタリと足元に止めてゴールを決めた。サラーは途中出場ながら、フィルミーノと並ぶ2得点1アシスト。中盤のジョーダン・ヘンダーソンも鮮やかなミドルシュートを決めた。

怪我で戦線離脱しているジョッタは、2月頃には復帰すると見込まれている。サラーに移籍の噂はあるが、リヴァプールは現プレミア王者のビッグクラブだ。代わりに大物FWが加入する可能性は十分ある。先発定着は並大抵ではない。

南野は、好不調の波を少なくし、キャリアハイの得点数・アシスト数をマークする勢いで活躍しなければ、再び“5番目以下のFW”か“中盤のサポート要員”に逆戻りしかねない。初得点の感慨に浸る暇はないだろう。

南野にとって2020-2021シーズンの年末年始は、自身の存在をアピールすべく気の抜けない日々になりそうだ。

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